アイの物語

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (465ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048736213

感想・レビュー・書評

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  • 素晴らしかった。ヒトが抱える「致命的なバグ」にどうしようもないやるせなさを感じる。自身を振り返って悲しくなる。それでも、切なる希望を込めて夢や理想を語ることはできる。フィクションが生み出す、真実より正しい何かを確かに感じる。物語への深い信頼に共感した。

  • 久しぶりにSFを読んだ。
    人工知能に対する可能性について論理的なストーリが展開され、一気に読むことができた。
    結論も十分に納得が行く内容だったが、そうなってしまうのであれば、人間は悲しい存在だと思った。

  • 目次
    ・第1話 宇宙をぼくの手の上に
    ・第2話 ときめきの仮想空間(ヴァーチャル・スペース)
    ・第3話 ミラーガール
    ・第4話 ブラックホール・ダイバー
    ・第5話 正義が正義である理由
    ・第6話 詩音が来た日
    ・第7話 アイの物語

    機械の知能が人間を超えた時、機械は感情をもつことができるのか。
    機械が感情を持った時、機械は人間を淘汰しようと考えるのではないか。
    機械より劣る存在として。

    人間が機械に制圧された、遠い未来。
    主人公はアンドロイドたちの目をかいくぐって、コロニー間を”語り部”として渡り歩いている。
    しかしある時、一人のアンドロイドに狙われ、けがをして動けなくなる。
    その時アンドロイドは、毎日ひとつの話を主人公に聞かせるのだ。
    それは、機械と人間が共存する、平和で温かい世界。
    しかし真実は…。

    これ最初に書かれた「ときめきの仮想空間」は、1997年の作品。
    アバターが仮想空間の中で生活したり冒険したり、おしゃれしたり部屋の模様替えをしたり。
    そう、これはまるでピグライフ?

    第1話はタイトルの「宇宙をぼくの手の上に」だけで、にやけてきちゃう。
    フレドリック・ブラウンの短編集のタイトルですな。
    内容はネットの中のコミュニティでSF小説をリレーで作る仲間が、現実世界で窮地に陥った少年を物語の力で救う話。

    ”現実逃避?笑いたければ笑うがいい。確かに〈セレストリアル〉という船は実在しないかもしれない。しかし、クルーの結束や信頼や友情は、まぎれもなく実在するのだ。”

    人間のために作られた機械だったはず。
    人間に危害を加えないように。
    人間を不幸にしないように。
    しかし、個々の人間の望む者はそれぞれで、何が不幸で、何が希望かは単純に数値化できない。

    ”ヒトは正しく思考することができません。自分が何をしているのか、何をすべきなのかを、すぐに見失います。事実に反することを事実と思いこみます。他人から間違いを指摘されると攻撃的になります。しばしば被害妄想にも陥ります。これらはすべて認知症の症状です。”
    介護用アンドロイド詩音が見つけた真理。

    それでも、いや、だからこそ、だろうか。
    AIたちは人間の幸福のために存在する。
    機械に心があろうとなかろうと、こんなに優しい存在ってある?

    最終話の「アイの物語」では、アンドロイドたちが長い年月をかけて人間たちにしてきたことの本当の意味を知ることになる。
    そしてこれからしようとすることも。
    これは、オーバーロードやオーバーマインドになることのできない人間のための「幼年期の終わり」なのではないか。

    ”たとえマシンには勝てなくても、ヒトには誇るべき点があるということを。
    それは夢見ること。理想を追うこと。物語ること。
    宇宙への旅、心を持つロボット、正義が正義である世界―「そんなのはただの夢物語だ」「理想論だ」「荒唐無稽だ」と嘲笑されながらも、多くのヒトが夢を語るのをやめなかった。自分たちのスペックの限界を超えた高みを目指した。その夢がついには月にヒトを送り、マシンたちを生み出した。”

    何一つAIに勝てない人間だけど、これは壮大な人間賛歌だ。
    読後感、めっちゃよし。

  • 桁違いに面白かった、ここ5年で一番面白かったし、価値観が変わった。勉強になりました。

  • 読んでる間は甘くていい気分だったけど、読み終えてしばらくするといくらか疑問がわき上がってきた。

    見たいものだけ見るというゲドフィールドという概念は人間の愚かさの象徴として描かれてるけど、これは一方で賞賛されている物語る力というものと表裏一体ではないか?これにより、物理的には1つしかない世界を仮想的に多数作り、相互に事実やアイデアをフィードバックしあうことでより高速にそれぞれの世界を進化させることができる。

    AI にゲドシールドがないとするなら、あらゆる命題は真偽判定されてすぐに全体に共有されるのだろうか。それは必然的に多様性のない均質的な社会を生む。そして、その社会を支える唯一の正しさとは、フレーム問題の回避のために妥協した推測でしかない。それは人間社会よりよい社会?価値観の摩擦がないのでより快適な社会?

    フィクションにせよAIにせよ、それが人の救いとなるのは、多様性に貢献するからではないのかな。

  • 【感想】
    ヴァーチャルとリアル、アンドロイドと人間。その関係で芽生える感情を、5つの短編と長編で表現した作品。
    途中までは?だったが、最後まで読むとなかなか考えることが見えてきた。

    アンドロイドが考える「人のため」の行為が「もてなし」の作法に通じているのが面白い。マトリクスで元人間のマスターが支配という形をとったのとは対照的。

    「愛」をi、即ち虚数として表現したのも面白い。究極の「愛」とは相手を気遣い、相手に気づかれないように相手の望みを叶えることなのかもと思えた。

  • SFはこれまで敬遠していたが、大森望オススメとあって手にとってみました。最高のSF体験ができる、素晴らしい本。
    全部で7編の未来の話で、それぞれ独立している。
    どの作品もレベルが高く、読み始めたら止まらない。
    特に第五話「正義が正義である世界」が最高!
    仮想空間やら、アニメの定番やら、特撮の矛盾やらをパロディ調にぎゅっと詰め込んだ作品で、かなり笑えます。
    この作品を読んで思ったのは、我々の今の生活って、既にSFの世界に入っているのかもしれないってこと。
    そういう意味で、自分の生活に身近な物語として読めるSFですので、面白い物語を探している方には非常にオススメしたいです。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB00160167

  • とあるアンドロイドと、語り部の物語。
    ヒトとアンドロイドの、もしくは虚構の世界にあった何かとの、ふれあい。

    絶対的な正義、とか、間違いの無い世界を描いてみても、最終的にヒトやアンドロイドがたどり着くのは、矛盾に満ち溢れた現実世界というのは興味深い。

  • 連作短編集。
    どの話も面白く、引き込まれた。
    「紫音がきた日」なんて、珍しい題材の話だが、とても良かった。
    他の本も探して読みたいな。
    SFが苦手な人にもお薦め。

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著者プロフィール

元神戸大学教授

「2023年 『民事訴訟法〔第4版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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