完全演技者

著者 :
  • 角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048736343

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  •  80年代を舞台にした、ロック青春小説。 自分にぴったりくる音楽を探し求めていた主人公は、偶然聞いたテクノとオペラが融合したクラウス・ネモ率いる「ネモ・バンド」に魅了され渡米することに。 素顔も私生活も全て隠し、生身の人間としての全てを投げ捨てて芸術に捧げ、パフォーマンスするのが「完全演技者(トータル・パフォーマー)」であり、ネモ率いる「ネモ・バンド」。ふとしたことから主人公は「ネモ・バンド」に参加することになるのだが、バンドには秘密があって…。 ど、ど、ど、ど、どうみても、よく考えなくたって、このクラウス・ネモってクラウス・ノミじゃん!彼がモデルの小説なのね!もっとも私は、直接彼の音楽を聞いたことはなく、あの(←強調)すんごく個性的で強烈なアルバムジャケットと、最初に×××で××だアーティストだということしか知らないんだけど。  でも、こう異形の歌姫、トリックスターとして魅惑的に描かれていると、たまらなく彼の音楽が聞きたくなってくる〜!(高野史緒『カント・アンジェリコ』も。) 猥褻でグロテスク、でもなぜか目が離せない「ネモ・バンド」の存在感が大きすぎて、主人公もその恋人も、単なる狂言回しにしかすぎず存在感希薄なのが、ちょっぴり残念。あくまでも主役は「ネモ・バンド」であり、クラウス・ネモなんでしょうね。 最後の最後まで引っ張って引っ張った「なぜネモは、生身の人間としての生を捨て、異形と化してまで完全演技者となったのか」その理由も、たったこれだけでお終い?ずいぶんおざなりなのね、とは思うものの、ネモの強烈な個性の前にはどーでもいいですよね、そんなこと。理由を知って題名の意味を思い「ほぉおおおおお」と思いました。 「芸術のために、人はどれだけのモノを犠牲にできるのか」でこの作品、扱っている音楽に違いはあるものの、『オルガニスト』に通づるところがあるかと。何百倍もこの『完全演技者』の方が、猥雑で暴力的で非道徳的な極みみたいですが。  モデルの存在を知らなくとも楽しめるけど、知ってて読んだ方が、何千倍も楽しい! それにしてもなんで山之口洋さんは、彼をモデルにした作品を書こうと思ったのかしら?執筆理由が知りたーい!激しく!

著者プロフィール

1960年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、家電メーカー研究者となる。98年『オルガニスト』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。01年『われはフランソワ』で直木賞候補。現在は専業作家として、良質な作品を上梓し続ける。

「2014年 『暴走ボーソー大学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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