少女七竈と七人の可愛そうな大人

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著者 : 桜庭一樹
  • 角川書店 (2006年7月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048737005

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少女七竈と七人の可愛そうな大人の感想・レビュー・書評

  • 詩的で切れ味鋭い
    センチメンタルな文体。

    思春期の女子特有の
    匂いたつような濃密で閉鎖的な世界観と
    男たちへの強烈な嫌悪感。

    北国の和情緒あふれる情景描写や
    古風な台詞、情念の世界。

    そして切実で甘酸っぱい
    未知なる恋の予感。



    さすが桜庭さん。
    この人の切ない感性は
    ほんまツボ。

    少女の痛みを書かせたら
    彼女の右に出る者はいないですよね。


    七竈が花の名前で
    七回燃やしてやっと灰になることが
    その由来であることなど、
    恥ずかしながら
    この小説で初めて知りました。




    自分を変えるために、
    こころのかたちを変えるために、
    ふしだらな人間にならなければと決意し、
    辻斬りのように
    7人の男たちと体の関係を持った母・川村優奈。


    そしてそんな母から
    遺憾ながら
    美しく生まれてしまった17歳の少女
    川村七竈(ななかまど)。


    黒い鉄の塊である鉄道模型を愛す七竈の
    美しいがゆえの苦悩と
    切なすぎる初恋を描いた
    章ごとに語り手が変わる連作長編です。
    (犬の視点もあるのですよ)


    清々しいまでに自分の美貌には関心がなく、
    鉄道オタで
    『世界の車窓から』が好きで(笑)
    男たちを毛嫌いする
    七竈のキャラが抜群にいいですね。


    田舎町において美しいということは
    なんの価値もなく好奇の目にさらされ
    妬まれるだけ。


    七竈が唯一心を許す
    幼なじみで
    おそろしく美少年の
    桂 雪風(かつらゆきかぜ)。


    ゆっくりと惹かれ合う異形の二人。

    しかし二人のかんばせは
    時が経つに連れ
    そっくりな風貌と化していき…



    いわば漫画的設定だし、
    極力感情描写を排除し
    ドライに描いていながらも
    登場人物たちの痛みが行間から滲み出て
    一人一人に感情移入してしまうのは
    やはり桜庭さんの実力なんでしょうね。
    (二人が名前を呼び合うだけのシーンなのに切なさが零れ落ちるのです)


    雪風に恋をする
    おかっぱ頭の少女
    緒方みすずや
    七竈をむくむくと呼ぶ
    元警察犬のビショップなど
    脇キャラが魅力的なのも◎。



    人は永遠の、
    限りないものに憧れる。

    でも、限りあるものほど、
    愛おしく思えるもの。


    美しさもまた然りなのかな。


    日々がただ美しいうちに
    時間よ止まれと願い続けた
    悲しき少年と少女の軌跡。


    いつまでもいつまでも余韻の残るラストも秀逸な
    記憶に残る一冊です。

  • 言葉が、どこまでも綺麗だった。
    雪のようで冷たくて、湿っぽい。けれど物語は七竃を、雪風をおいて淡々と進む。待ってはくれない。青春も、老いも、命も。
    さようなら、雪風。
    さようなら、七竃。
    二人は、可愛そうな七人の大人たちは、幸せになれるのかしら。

  • 世界で一番美しい別れのお話。
    綺麗で静かな文章だと思いました。少年や少女はただただ美しくて、大人は醜い。
    少女は大人になり、自分の道を生きることを知る…

  • 桜庭さんの本に出てくる女の子は「超美少女」が多いように思う。

    性と生死、愛と憎がテーマなものも多いように思います。

    これもインシストに入るのだろうか??

    切ないけど、読んでよかったと思う話でした。

    ほんとに大人たちが可哀想だった。

  • 自らの美貌を呪いながら生きていく七竈は
    遠く旅に出た母を求め、
    親友・雪風と寄り添いながら日々を過ごす。

    「ずぅっと一緒にいよう。雪風」
    そのささやかな願いも
    無常に過ぎてゆく時と
    残酷な現実の嵐の中に
    のみ込まれてしまう―


    雪の街・旭川を舞台に進んでゆく
    切なくも美しい少女の物語




    大好きな桜庭作品の中でも
    特に好きな作品です

    こんなに切なくて
    胸をぎゅっと掴まれるような作品は
    なかなかないかも

  • 「大変遺憾ながら、美しく生まれてしまった」という一文に興味を惹かれつい手に取りました。
    辻斬りのように男遊び、という表現はユーモラスで、本来なら「尻軽で娘の子育てすら放棄している最悪の母親」と思われても仕方ない設定なのにあまり憎めないキャラクターになっているのはすごいなと思いました。中盤以降でようやく姿を現し、彼女の女としての悲しみを吐露するように描写をされるとつい感情移入してしまいました。七竈も設定上絶世の美少女ですが独特の語り口や後輩に散々「変人」だと評される中身が面白くてかわいらしい。母娘の確執、たった一人しか親友のいない孤独な美少女、いくらでも重苦しい雰囲気にできそうな物語をちょっとコミカルな文章でさらっと風のように書きあげる筆致であっという間に読めました。

  • "辻斬りのように男遊びをしたいな、と思った。"

    書き出しから一気に引き込まれ、むさぼるように読みました。

    いんらんの母・優奈と、たいへん美しい少女として生まれた子・七竈。そして、七竈の親友で同じく美しいかんばせを持った少年・雪風(ゆきかぜ)。

    「七竈」
    「雪風」
    「七竈」
    「雪風」
    「七竈」
    「雪風」
    「七竈」
    そんなたあいのない会話がつくりだす七竈と雪風の静寂な世界観がたまらなく好きです。

  • いんらんの母親を持ってしまった娘の物語かと思いきや、「母と娘」という永遠のテーマで締められて、最後は思わずじんわりきてしまった。

    純愛。それぞれに、「一番側にいて欲しい」と心から願う人が、側に居てくれない切なさ。母にかけられた呪い。叶わぬ想い。永遠につきまとう呪縛。かんばせ。

    桜庭一樹さんは、作品によってガラリと作風が変わるので楽しい。少女七竃と少年雪風の、丁寧で独特の喋り口調がとても味わい深くて良かった。また、飼い犬ビショップ目線で描かれた章もとても良かった。

    「女の人生ってのはね、母をゆるす、ゆるさないの長い旅なのさ。ある瞬間は、ゆるせる気がする。ある瞬間は、まだまだゆるせない気がする。大人の女たちは、だいたい、そうさ」

  • 『私の男』がなかなか良かったので同じ作家を読んでみることに。同じ旭川を舞台に、あちらが重く湿った肉をそなえた人々の世界であるのに対して、こちらは、神話めいた美貌の少年少女を中心とする、おとぎ話のような物語だ。
    時間がとまったような小さく静かな町の中で眠ったように生きていた少女たちは、ある日突然、次のページがめくられたように、あるいは何かが身体の中を通り抜けたように、変化する。どうしても手に入れたいひとりの男を自分の力で見つけだした女は、その日から女の辻斬りとなり、さまよいつづける旅人となる。その娘は、自身の分身と築き上げた美しく精巧な世界を永遠に捨てて、外の世界へと歩きだしていく。静かで小さい安定した町は家族たちの世界であり、その中では「いんらん」の印を刻まれた2人のおんなたちは異形のものとなってしまうのだが、しかし彼女たちに欲望を自覚させ、小さな世界を壊して生き始めさせるものが、それぞれの母親からの解放であったという事実は、これが永遠にすれちがっていく男女の物語であると同時に、母娘に伝わる呪い、そそして解放という贈り物の物語でもあるということを教えている。「七竈」「雪風」という不思議な名前と、古風にジェンダー化された話し言葉が、この物語世界に神話めいた風貌をあたえることに成功している。老犬までが「女というのは可愛いものだ」などと考えていたりするのが愉快で、全体に流れる淋しさ切なさと絶妙なバランスだ。

  • 七竈と雪風の、複雑だけども純粋な関係がとても好き。

  • 古文っぽい文章というか、そうゆう文は苦手だったのですが、これは良かった。どんどん読めた。それどころか、この少し古い言葉が味を出しているような気がした。桜庭さんの文で良かった。スラスラ読めた。
    親を憎みながら、愛してほしいと願う七竈。人の感情はそんなに簡単ではない。大人は身勝手に、子供を振り回す。子供は運命を選べない。
    時は流れる。いつまでも同じではいられない。

  • 淡々としていて静謐で、それでいて奥行きのある文章。旭川の真っ白な雪景色の中に浮かび上がる七竈の黒髪と雪風の七竈色の真っ赤なマフラー。色彩のコントラストが自然と浮かび上がってくる言葉選び。どこか俗世間を超越した大人びた美しい少女七竈が魅力的。最後のシーンは切なくも美しい。桜庭一樹の繊細な文章になんだかはまりそう。2011/191

  • 淡々と進んでいく物語。小さな町でこんなにドラマがあるんだなぁと妙に感心してしまいました。しかも繋がりの濃さといったら想像以上です。
    主人公の口調が深刻にならない要因なのかな。皆薄々と気付きつつも、核心に触れることなく、今までの生活を続けていくのでしょうね。それが大人なのだなぁと思ったりしました^^

  • 類い稀なる美貌をもってうまれた七竈と、彼女を取り巻く大人達の恋愛ものがたり。
    美しい少年・雪風との恋、思春期に感じる孤独感、大学のための上京…
    誰しもが経験したであろう、風にのって儚くきえてしまうような気持ちをさらりと表現している。

    いつまでも色褪せない、宝物のような作品。

  • 読んだのは文庫版ですが、装丁が好きなのでハードカバーの方で。(文庫版の装丁も好きです)

    遺憾にも美しく生まれてしまった少女・七竈の物語。
    幼馴染の少年・雪風との、やり取りが美しい。
    「雪風」
    「七竈」
    「雪風」
    「七竈」

    がたたん
    ごととん
    がたたん
    ごととん

    という、短くて2人だけが共有できる世界。
    変わっていく人間たちの、さまざまな視点と、その変わり方。

    会話の美しさがいい。
    登場人物の行動は跳びぬけていて、それがまた魅力。

    たんたんと語るような地の文と、キャラクターの激しさが心地よいギャップ。

    耽美だけど、少女漫画過ぎない。そんなところが好き。
    七竈も雪風もすごくいいキャラクターです。

  • もっと抽象的で絶望的な話かと思ってたけど、わりと普通にストーリーがあった。
    たぶん成長と親子の物語なんだよね。意外に。
    主人公の七竈と雪風の言葉の使い方が文語調で独特。「かんばせ」なんて。
    閉じられた世界にいる七竈が、だんだん外の世界に目を向け始めたとき、雪風がどんどん色あせてくるように見える。
    頑なな七竈が、後輩の女の子と心を通わしていくのがなんかほのぼの。最後はさびしいけど清潔なあかるさがあるように思いました。

  • 旭川という地方都市の、少女七竈とその周辺の人々の物語。
    私は、好きだった。

    母親と娘の関係って難しいと、私も常々感じている。結婚して家を出た時、その解放感は凄かった。育ててくれたことに感謝しているが、一つ一つ監視されているような息苦しさに、もう限界が来ていたのだ。

    私には娘がいなくてよかったかもしれない。知らず知らずのうち、女とはこうあるべきというような、私の固定観念で雁字搦めにしていた可能性が高い。
    出てくる女たちは強い。男は流されたり、翻弄されたり・・・。
    続編があったら是非読みたい。

  • 初、桜庭一樹さん。

    桜庭さんという作家のことを、何にも知らずに読んで、この世界観にびっくりしたんですけど、ライトノベル作家なんですね。それを知ったら納得。

    「辻斬りのように」だっけ?
    この始まりの話、すきでした。
    辻斬りのように。
    いいですね。
    すきです。

    全体的に、かなり切なかったです。

    ぐっと響いてくるところもあったけど、
    こういう作風はあんまり好きじゃないなあ。

  • 図書館から借りました

     青春小説。
     北海道の小さな街が舞台。

     まがまがしいまでに、呪いのように美しい少女七竈(ななかまど)の物語。

     ある日、七竈の母は思い立つ。
     辻斬りのように男遊びがしたい、と。
     そして、一ヶ月の間に七人の男と関係を持つ。
     学生時代の知り合い、嘘つき、美しくて自分を惨めにさせる男、無口な男、きらきらして夢を語る男等々。

     そして出来たのが七竈。
     七竈は高校生になる。
    「いんらんな母」と母親を呼びながら、彼女は恋う。娘を置いてけぼりにして男をアサリに旅に出てしまう母を。
    「私を見てください」
     でも、願いはすれ違う。
     母が家に居着くようになったとき、七竈は母を待つ魑魅魍魎の一つであるのをやめて、東京の大学に進学するのだ。
     母の言い分もわかる気がする。
    「娘が待っていてくれるのを知っていたから、出歩けた。私を愛してくれる者がいたから」
     でも、それって、待つ方はたまらない。

     ここまでは、七竈と母親の話を重点に説明したが、この物語の本筋は同じ年の、やはり美しく生まれた七竈の親友、雪風(少年)と七竈の物語なのだ。
     雪風は言う。
    「君がそんなに美しく生まれてしまったのは、母親がいんらんだったせいだ。母親がいんらんなときに子供をみごもると、娘は美しくなってしまうんだ」と。
     七竈は言う。
    「ええ、ええ、雪風」
     最初、なんだこいつらは、と思ったのだが。
     話が進むにつれ、この説を二人は信じずにはいられなかったというか、その説で周囲を納得させたかったのだな、とわかった。
     二人は似てしまう。
     雪風の父は、七竈の母の寝た「美しい男」であったから。
     雪風とあまりに似すぎてしまって、もう一緒にいられなくなり、彼女は東京へ。
    「七竈」
    「雪風」
    「七竈」
    「雪風」
    「七竈」
    「雪風」
     こうして何度も、二人はただ名前だけを呼び合うシーンがたびたび出てくる。
     終わってみると、「君がそんなにら美しく生まれてしまったのは~」のくだりセリフが、なにやら静かに必死に練りだした理屈だったのとわかって、なんだかすごく、綺麗で悲しい。
     すごく、綺麗な話なのだよね。

  • 桜庭一樹の中ではこれが一番好き。

  • 少女七竈と少年雪風
    美しい二人が好き。

    変わってしまう、続かない現実が寂しい

  • 久しぶりに自分好みの本でした。

    品行方正な教師であった優奈は
    突然「辻斬りのように男遊びをしたいな」と思い、
    7人の男と立て続けに寝る。
    そうして生まれた娘が七竈である。
    七竈は親友:雪風と共に
    鉄道模型を愛しながら、
    やがて異形とも言えるほど
    美しいかんばせを持つ大人に成長し始める。
    そのとき彼女は何を諦め、何を選び取るのか。

    大人のための童話のよう。
    淡々と語られる生真面目なナレーション。
    洗練された丁寧な文体。
    名言小説だと思います。
    素敵。表紙も含めて。

    雪風も七竈もとても控えめで
    気付いていながらも言えない言葉が多い。
    それが特に読者の心を揺さぶります。
    きっとお互いに大好きで、
    でも大好きだからこそ
    お互いの気持ちが分かってしまうのでしょう。
    言葉より多くを、視線や振る舞いで感じ取ってしまうのでしょう。
    隠せない仲の隠し事は
    もはや共犯者としかいえないですね。
    離れても精神的に繋がっている、
    双子のような2人でいて欲しいと願ってしまいます。


    「わたしは美しいふたりが好きだったのよ。ばら売りしないで。
     美しいふたりの先輩。
     桂雪風と川村七竈、けして入っていけない、美しい舞台」
    「きっと、尊敬してほしいのね。
     異なる生き方をするわたしを。誰よりも、血を分けた娘に」
    「永遠に失った、少年のことをです」
    「母を許さないことだけが、わたしの純情です。雪風」

  • すべての女は みずからの娘に生きざまを裁かれる。
    すんなりと受け容れてから、そのこわさにぞっとした。

    七竈と雪風の美しい世界はもう、融けてしまうね。
    すべてを隠して凍らせてくれていた冬は、終わってしまったから。

  • 旭川はもっと大きい町だと思うけど、冬の空気感がいい。

    淡々と書かれてるけど、けっこう好き。

  • 母親の「辻斬りのような」淫蕩の末に生まれた美少女・七竈。
    母は彼女を産んだあとも「辻斬り」を繰り返すために出奔し、七竈はその美しさと出自ゆえに周囲から浮きまくり、ひたすら鉄道模型に邁進するか、ただひとりの友人である雪風との合わせ鏡のように静謐で広く閉じた世界ですごすか、という日々を送っていた。
    しかし周囲の大人たちは、日に日に美しい顔立ちに育ってゆく七竈をほうっておかない。
    そして徐々に周りが騒がしくなってくる…

    かなり好きな雰囲気。
    七竈と雪風の健気さも胸を打つし、母を始めとする周りの大人たちの、自分の感情にどうしようもなく振り回されるしかないところも哀しく沁みる。
    そして、少女期の終わりの不安定な堅さや、なんの過不足もなかった、でも本当は退屈な世界に突如窓が開いた瞬間の眩しさや、開いたドアを後ろ手に閉じる刹那のほろ苦い味。
    そういう懐かしい諸々が収められている小さな宝箱みたいだ。
    個人的には、「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」よりもずっと好きな1冊。

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