風の音が聞こえませんか

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著者 : 小笠原慧
  • 角川書店 (2007年9月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048737906

風の音が聞こえませんかの感想・レビュー・書評

  • 専門用語のような無味乾燥な言葉で説明されるよりも心に響くものがある。
    相手の中に自分を見てそれを救いたくて手を差し伸べる、というのは私にとってもドキッとする言葉だった。そしてそれがお互いを不幸な結末へと導くというのもすごく共感できる。
    小説だけあって話が出来すぎていると感じる部分もあるけれど、結末には納得。ハッピーエンドなのも好感。

  •  新任ケースワーカーの川村美知は、今日も杉浦晃(すぎうらひかる)の元を訪れていた。保健福祉センターの精神保健相談にやってきた母親によると、高校の時から引きこもりがちで、一度就職したことはあるものの2ヵ月程度でやめてしまって再び引きこもり、統合失調症を発症。幻聴と独り言がひどいのだという。前任者は何もすることができなかったと聞いた美知は、少し強引かなと思いつつも積極的に家の中に入り込み、晃に話しかけ続ける。

     病状のアップダウンが激しく、普通となんら変わりないと思えるような時もあれば、突然病状が悪化することもある。治療を受け続けさせるためには、関わり合う人たちとの信頼関係が不可欠であって、それが男と女ならばそこで愛情が芽生えてしまうことは決して不思議なことではない。が、一筋縄ではいかないのがこの病気の怖ろしさなんだなぁ。基本的には応援したくなる2人だったのだけれども、思い込みや幻聴が激しくなっている人に競馬はどう考えても軽率だと思うし、最後の逃避行はさすがに身勝手すぎて、美知に”自分の行動に酔っている女”を感じてしまった。切ないけれど、やっぱりこの2人は離れた方がお互いの身のためかな。

  • 一応ハッピーエンド…なのでしょうか。
    心の結びつきを結婚という形で縛る必要はないけれど、やっぱり晃には、美知を永遠に待っていてほしかったなあと思ってしまいます。美知が心から祝福しているとはいえ。
    前半、二人が距離を縮めていく過程が素敵だっただけに、何だか悲しい気持ちが残ってしまったのでした。

    丁寧な文章。マザーシップで空に昇っていく場面が好きです。

  • うーーーーん。
    もともと恋愛ものはあまり読まないんだけど…物足りない。
    村上龍の『心はあなたのもとに』みたいに、主人公の男性にむかつきながらもぐいぐい物語に引き込まれていっちゃった…みたいな力がない感じ。

  • 恋愛小説苦手だけど、これは読めました。

    精神分裂症の患者とケースワーカーの恋で
    患者がすこしづつワーカーである女性に不安定ながらも
    心を開いていく過程が、素敵だった。

    だけどやっぱり、精神疾患を持つ男性とワーカーという立場
    そして彼女の過去の出来事が、彼女を苦しめ

    間近にある普通の幸せに転がり込む様は、
    残念だが、リアルだとも思った。

  • 統合失調症(本書の記述は精神分裂病)の若者と、新米のケースワーカーとの心の交流を選んだ物語。
    実際には、「こんな簡単に行くのかなぁ?」と思いつつも、つい物語の流れに引き込まれてしまった。
    「DZ」「サバイバーミッション」とは、また違う作風に違う作者名で発行している作品も読みたくなった。
    あまり有名な作品じゃないけど、かなりオススメ!!

  • まだ統合失調症が精神分裂病と言われていた頃の話。
    ケースワーカーと患者の切ない恋の物語。
    人はそれぞれいろんな事情を抱えて生きている。
    世間の常識だけでは計り知れない。
    どうにかならないものかと胸がつぶれそうな想いになった・・・。

  • 精神病患者についての理解が現在よりも薄かった1990年代、自分を別の惑星の王子と思い込んで宇宙と交信する妄想癖のある晃と、過去の傷を抱えながら新米ケースワーカーとして働く美知の心の交流を描く。
    途中までは二人の歩み寄りを、出来過ぎているとは思いつつも安定して読めたけれど、美知の信念が揺らぎはじめる後半のくだりからはぐだぐだと物語が中だるみしたように感じた。
    自己憐憫が鼻につく。
    善人であろうと言い訳しながら、弱さや純粋さを理由にする「善人の」身勝手さってどうも駄目。単純に自分の懐が浅いだけかもしれないけど、なんかイライラするんだよなぁ。
    純粋ならそれで全部許されるっていうものではないだろう、と思ってしまう。

  • 久しぶりに読んだ単行本の小説。
    統合失調症でひきこもりの杉浦晃と、そこに訪問指導に行く保健福祉センターの障害保健福祉課のケースワーカーである川村美知の話。時代は90年代半ばでまだ統合失調症が精神分裂病と呼ばれていた頃。
    精神病を患っている時にギャンブルをして当てる、というのは私の妄想体験と重なるものがある。私が相手を訴える為に活動する事は、妄想体験の中では金銭目的で競馬や宝くじをする事と同一視されていた。

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風の音が聞こえませんかの作品紹介

川村美知は、保健福祉センターの障害保健福祉課で働く新人ケースワーカー。統合失調症を抱え、通院も服薬も途絶えたまま一人暮らしのアパートにひきこもっている杉浦晃の母親から相談を受けた彼女は、晃の訪問指導を引き受ける。何度も厚い壁に跳ね返される美知だったが、しだいに彼女のひたむきさが晃の心を開いていく。美知は、晃との間に些細な共通点を見つけては喜び、二人でいると素直な気持ちになれるのだった。だが、晃の回復に取り組む中、美知は、晃の主治医・佐伯にも惹かれていく…。優しさに溢れる筆致、美しいラストシーンが胸を打つ、かつて書かれたことのない恋愛小説。

風の音が聞こえませんかはこんな本です

風の音が聞こえませんかのKindle版

風の音が聞こえませんかの文庫

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