夜明けの縁をさ迷う人々

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著者 : 小川洋子
  • 角川書店 (2007年9月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048737920

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夜明けの縁をさ迷う人々の感想・レビュー・書評

  • 9話の短編集です。

    「曲芸と野球」
    野球にはげむ男の子とそばで椅子を使った曲芸を練習する女の人のお話。
    気に入りました。

    「教授宅の留守番」
    大学教授宅の留守をまかされた女性に招かれた主人公。
    教授が大きな賞を受賞して、家にお祝いの花やら何やらが届きまくる。
    「いいの。ついこの間、同じことをやったばかりだから。この同じのこぎりで」
    最後はゾッ。
    後味の悪さが好きです。

    「イービーのかなわぬ望み」
    中華レストランのエレベーターボーイ、イービーに恋をした主人公。
    悲しい。

    「お探しの物件」
    へんてこな物件ばかりを扱う不動産や。

    「涙売り」
    (一方的な)愛は怖い。

    「パラソルチョコレート」
    表と裏側、背中合わせで「生きてる」人。
    わたしの裏側で「生きてる」人もイケメンがいいです。

    「ラ・ヴェール嬢」
    作家Mの孫であるラ・ヴェール嬢。
    彼女を施術する指圧マッサージ師。
    Mの本の淫靡な内容(を実践したこと)を語るラ・ヴェール嬢。
    オチに笑いました。
    むかし某所で読んだ仏教関連の本に、目や頭や手や体が光るだけでは二流。足の裏が光ってこそ本物だ、みたいなことが書かれていたのを思い出しました。
    以下P147、8行目~引用
    「これは、けがらわしい芥、軽蔑すべき泥、軽薄な瓦礫、むごたらしい藻屑を、踏んだことのない足だ、(略)たとえそうしたものを踏まざるを得ない時でさえ、宝石の靴を履いているかのように歩ける人だ。自分には合わない靴を決して履かず、誰の指図も受けず、ただ思うがままの方向へ気高く歩き続けた足だ」
    サウイフ足ニワタシハナリタイ。

    「銀山の狩猟小屋」
    こわい。
    こんなこと本当にありそうでこわい。
    女性が主人公なのが意外でした(途中まで男性だと思っていた)

    「再試合」
    小川洋子らしいなあというお話でした。
    再び(一方的な)愛は怖い。

  • 短編集のせいか小川さんらしい静謐さはやや薄れ、生々しさや奇妙な味が強く出た作品。特に中ほどの短編『イービーのかなわぬ望み』『お探しの物件』『涙売り』などを読みながら、三崎亜紀さんや栗田有紀さんを思い出す。いや小川さんの方がずっと大家でしょうけど。
    いずれにせよ「浸れる物語」です。

  • タイトルが印象的な9つの短編集です。
    金色のタイトル文字がとてもきれい。
    エッチングのような装画/挿画は磯良一さん。

    9作とも”夜明けの縁をさ迷う人々”、現実では生きてないような不思議な人々のお話です。

    『曲芸と野球』
    右利きの野球少年は三塁側で曲芸の練習をしている女性に球が当たらないように流し打ちが得意になった、という告白から始まります。曲芸師と野球少年の交流が淡々と語られ、生涯唯一のヒットはしみじみとしています。

    『教授宅の留守番』
    海外赴任の教授宅に住むことになった大学食堂のおばさん。そのお家を訪問する私は、家やおばさんに奇妙な感じを受けます。少しミステリー要素が入っていて、怖くて、面白いです。

    『イービーのかなわぬ望み』
    イービーはエレベーターボーイ(E.B.)のことで、中華料理屋のエレベーターで生まれて、そのエレベーターで暮らす男の子です。育てのおばあさんが亡くなり、途中で成長が止まり、大人になってもエレベーター仕様の体です。ある日、中華料理屋が取り壊されることになり。。悲しい結末は胸が痛みます。生きる世界が決まっている、ここでしか生きられない、という幸せと不幸せに共感する人は多いと思います。

    『お探しの物件』
    人が求めている物件を紹介するのではなく、物件が求めている人を探す不動産屋さんの話です。たとえば、瓢簞アーティストが住んでいた瓢簞屋敷は、瓢簞の手入れを怠らないことが条件とか。瓢簞アーティストが受粉させる描写が艶かしく描写されています。江戸川乱歩の人間椅子のような好きな雰囲気です。

    『涙売り』
    自分の流した涙を塗ると楽器の音がよくなるという「涙売り」の女性のお話。女性は関節を使って音を出す関節カスタネットの男性に恋をして、彼の楽団の専属になります。彼の関節に涙を塗り込む描写がエロティックです。結末はグロテスクな方向に進みます。アンデルセンの履くと踊り続ける「赤い靴」みたいな怖さがありました。

    『パラソルチョコレート』
    パラソルチョコレートが好きな女の子のお話。弟とともにシッターの女性に預けられるのですが、チェスをひとりで打っている過去のあるシッターさんが魅力的です。女の子の裏側の世界に住むおじいさんが出てくるのもユーモラスです。

    『ラ・ヴェール嬢』
    あからさまにエロティシズムが漂う作品です。ラ・ヴェール嬢って貴族みたいですが、実はラ・ヴェールというアパートに住むばあさんの話です。そこに週1で通う足裏指圧師は、遺品としてラ・ヴェール嬢の所有していた作家M氏の全集を譲り受けます。肉欲を追求し続けたM氏の孫であるというラ・ヴェール嬢は、M氏の倒錯したファンにより彼女が体験したグロテスクな性体験を指圧師に語り聞かせます。結末に嘘か誠かという、狐につままれた雰囲気が漂います。

    『銀山の狩猟小屋』
    この中で一番気になった、好きなお話かも知れません。銀山の狩猟小屋を見に行った作家と秘書が、そこを管理しているという隣に住む奇形の男性(ロートレックのような人を想像)に出会います。男性はサンバカツギという謎の動物の話をします。サンバカツギの名前の由来は、死ぬときに赤ちゃんの泣き声を発するため、産婆をかつぐ(だます)から。小屋に閉じ込められた二人は赤ちゃんの泣き声を聞きながら、血のにおいがする部屋で密着します。最後、どう解釈したらよいのかよくわかりませんでした。。狩猟小屋が子宮の中ということなのか・・・。
    『注文の多い料理店』みたいな怖さもあります。

    『再試合』
    76年ぶりに甲子園に出場する高校に通う女生徒のお話です。いつもレフトの彼を切り株から見守っていた女生徒は、甲子園でも高校の応援席をはずれてレフトで応援します。彼女はレフトのすばらしさを克明に描写します。そし... 続きを読む

  • ゾーッとする短編集。
    『教授宅の留守番』が1番ゾゾーっとした。
    教授に凄い入れ込んでいると思ったらそういうこと。

  • 単なる名詞の羅列でさえ美しく感じるような、儚くて詩的な文章が◎部屋の隅っこで、誰にも邪魔されず、ひっそりと読みたい作品。

  • 男女のさまざまな「愛」にまつわる短編集。9編収録。
    純愛のようなさわやかな話はなく、全話にわたって歪んだ一途な狂気がある。
    それを小川さんの読みやすい文面で書かれているため、つい読んでしまった。
    「舌」「骨」「網膜」など人体の部位名や「苔」「茸」「蔦」など植物もよく出てくる。好きな人にはたまらないかも。

  • 夜明けの縁とは、ある面、狂気というか日常を逸脱したところに違いない。

  • こういう本を書くから、小川洋子さんは魅力的なんだと思う。奇麗で高潔な文章で、人間の人間らしい部分を暴いている。それは時に傲慢だったり醜悪だったり、滑稽だったり美徳だったりするけれど、この矛盾さを孕んでいるのが人間だなと思ってしまう。そしてそれを一切の容赦なく記せる、鬼才だと思いますね。

  • ちょっと不思議な話の短編集。毒のある感じ。

  •  この世界の片隅で紡がれる日常がいつの間にかさ迷いいでて、あるはずもない非日常へとたどり着く。奇妙でまさに「夜明けの縁」を覗き込んだような短編集だ。
     丁寧な描写と時折覗く淫靡さとグロテスクさは、混じりあって絡み付くような濃密さを生み、小川洋子ならではの味わいを醸し出していて、一気に読むのではなく一編づつよむのがこの本には似つかわしい。
     

  • 不思議なお話。ちょっと暗めのお話が多い印象

  • 小川洋子さんの本はこれで2冊目だけど、この雰囲気好きだなぁ。不思議な余韻を残す夢の中みたいな物語。目覚めたら細部は忘れてしまうような。「夜明けの縁をさ迷う人々」っていうタイトルは秀逸だと思いました。
    ラストの「再試合」がまさに悪い夢的でお気に入りです。他には「教授宅の留守番」「イービーのかなわぬ望み」「お探しの物件」も好き。

  • 9編の短編集。通勤の地下鉄で読むのにちょうどよくて手に取りました。小川洋子さんの作品は脱日常でちょっと怖いようなお話が多いですが、これも期待を裏切りませんでした。中では「パラソルチョコレート」というお話が秀逸。ある時あらわれた裏側にいる人間。とても神秘的です。私の裏側いいる人はどんな人なんだろうかと考えました。

  • 9編からなる短編集。
    『教授宅の留守番』が好きかな。

    表題の絵も楽しめたし、ささやかな狂気を感じる物語が多かった。

  • E.Bと涙売りの話しは良かった
    他の話しも独特の世界観を堪能できた

  • 短編集。
    雰囲気がポーっぽい。こんなに薄暗い話を書く人だとは思わなかった。

  • フィクションとリアルの間のファンタジーな短編集。
    著者の作品は「ことり」しか読んでなかったので、イメージの違いに少し戸惑った。しかし、日本語の美しさと、文字列にネットリと染み付いた悲しみと憂いの空気感はさすが。秀逸。

  • 死の匂いが濃厚な短編集。小川さんの小説の風変わりな登場人物たちはどんな世界でもちゃんと居場所がある。多少人と違ってもそれは意外とひっそりとした差異で受け止めてくれる人もちゃんと何処かに居るのかもしれない。

  • 小川洋子の作品は、日常の中に潜む非日常を感じさせてくれるので大好きです。短編集なので、ちょっと物足りない作品もいくつかありましたが、素敵な作品も多く、特に「涙売り」は良かったです。まず、タイトルも良いし、発想も小川洋子の良さが十分にあらわれたオリジナリティのあるストーリーです。この「涙売り」は、音楽がテーマなのですが、この小説の中で流れている音色が実際に聴けたらなあと思います。

  • だいぶきつかった。ページが終わっても話が続いてる感じがすごくて、え、続きは…?みたいな。自分の中で終わることができないからか、もやもやしてしまって。あと表現がすごくて、ぞわぞわしてた。合わないのかなぁ…。

  • 漠とした不安や茫洋とした残酷さ、という形容が既読の小川作品にはハマってるのじゃないかしら!と思ってる私には、珍しくちょっぴり物足りなかったかも(°_°)

    うーん、表現に正確を期すと、「小川作品には求めない露骨さ」が今作には過分にあったので、物足りないというより、寧ろ「消化不良」な感じでしょうか。

    小川作品は手の内を全て見せずに読者の想像に委ねるイメージがあるし、その書き込まないスマートさが魅力だとも思うのですが、今作のラスト数行で説明調に入ってしまった数編はちょーっと白けてしまいました。

    ……色々言っても、結局好きなんですがね……( ^ω^ )←


    ◉レフト側のグランドでいつも逆立ちをしている曲芸師(曲芸と野球)。
    ◉教授宅の留守を預かり、祝電を延々と受け取り続けるD子(教授宅の留守番)。
    ◉生涯を小さなエレベーターの中で過ごしたイービー(イービーのかなわぬ望み)。
    ◉物件が求める住人を探し出す不動産業者(お探しの物件)。
    ◉涙を楽器にすり込むことで音色を良くする能力を持つ少女(涙売り)。
    ◉私の裏側の世界を共有するおじいちゃん(パラソルチョコレート)。
    ◉肉欲を追求し続けた作家の孫を名乗る老婆の足を指圧し続ける私(ラ・ヴェール嬢)。
    ◉別荘を探し求めた女流作家と秘書が行き着いた、奇妙な小屋(銀山の狩猟小屋)。
    ◉76年ぶりに甲子園出場という快挙を遂げた高校の、終わらない決勝戦と、終わらない私の一途な声援(再試合)。

  • 短編集。
    どれも小川洋子らしく、
    不気味な短編でした。
    ちょっとやりすぎかな、と思わなくもない。

  • うーん、独特ですね。

    「美しい」とは表現しがたい生々しさがあるのに、
    どことなくファンタジックな物語たち。
    比喩表現がかなり特殊で、感情を言葉で言わせたり心情を吐露させる代わりにそこで表現しているのかな。
    ハマる人はハマるのかな。
    いまはちょっとこれを読みたい気分じゃなかった、ということで。

  • 夜眠る前にひとつずつ。
    「再試合」が、印象的。
    おそろしいような、果てしないような、切ないようで。

  • 小川洋子が描く不思議な9つの世界。
    割合として不気味・ちょっぴり怖い話が多いように感じられた。
    個人的なお気に入りは『イービーのかなわぬ望み』、発想に感服したのが『お探しの物件』
    のちに執筆された『猫を抱いて象と泳ぐ』を思わせる作品もちらほらと。

    <収録作品>
    曲芸と野球/教授宅の留守番/イービーのかなわぬ望み/お探しの物件/涙売り/パラソルチョコレート/ラ・ヴェール嬢/銀山の狩猟小屋/再試合

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夜明けの縁をさ迷う人々の作品紹介

もしあなたが世界からこぼれ落ちても、私が両手をのばして、受け止めよう-『博士の愛した数式』『ミーナの行進』の小川洋子が世界の片隅に灯りをともす、珠玉のナイン・ストーリーズ。

夜明けの縁をさ迷う人々の文庫

夜明けの縁をさ迷う人々のKindle版

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