エピデミック

著者 :
  • 角川書店
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048738019

作品紹介・あらすじ

東京近郊、農業と漁業の町、崎浜。二月に花の咲きほこる常春の集落で、重症化するインフルエンザ患者が続出?現場に入った国立集団感染予防管理センター実地疫学隊隊員・島袋ケイトは、ただならぬ気配を感じていた。果たしてこれはインフルエンザなのか?ケイトは、総合病院の高柳医師、保健所所員の小堺らと、症例の多発地区に向かう。重症患者が爆発的に増え、死者が出はじめても、特定されない感染源。恐怖に陥った人々は、住民を感染地区に閉じこめ、封鎖をはじめた。ケイトは娘を母に預け、人類未到の災厄を封じこめるため、集団感染のただ中に飛びこんだ-。

感想・レビュー・書評

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  • 「例えば、いつだったか大阪でのO157集団感染の時、マスコミは発症者の正確な数字を求め、行政はそれに振り回された。しかし、そんなもの現場ですぐに集計できるはずがないのだよ。むしろ、メディアはアウトブレイク対応の特殊性を学び、求めるべき正確さの水準を時々に応じて調整すべきなのではないかな。メディアの役割とは、情報の発信者と受け手との間に入り、そう言った調整役を担うことなんだと思うよ」(p.207)

     I had a little bird. あたしは小鳥を飼ってたの
     And its name was Enza. 名前は、エンザといったの
     I opened the window, あたしが、窓を開けたなら
     And in-flew(flu)-enza. エンザが飛び込んできたの (p.238)

     T市の市街地は、ほんの一晩にして様相が激変した。人々の多くがマスクを着用している。花粉が多く飛ぶ時期だからマスク姿は珍しくないとはいえ、通行人のほとんどが口を白いもので覆っている光景は、混雑した通りに突如として不吉な白い花畑が出現したかのようだ。口をむき出しにしたまま咳やくしゃみをする者には冷たい視線が集中し、彼らはコンビニやキオスクでマスクを買い求める。花畑は満開になる。(p.242)

    「人は、意味の真空を怖れる……」ケイトは口の中でつぶやいた。
     早く「元栓」をしめなければならない。救急隊のような訓練を受けた専門家集団まで、もっともらしいけれど根拠のないストーリーに頼りたがっている。(p.365)

  • 疫学者が主人公。

    東京近郊の町で、重症化するインフルエンザ患者が続出という設定で、感染症の発生・拡大・終息の流れを描いている。

    作者の川端裕人(1964-)年は、日本テレビ記者出身の小説家・ノンフィクション作家。

  • この小説をコロナウイルスの対応状況と比較しながら読むと、新型ウイルスへの対応の是非について残念に感じてしまいます。10年以上前の小説です。

  • 目の前で現象が起こっているというのに、その原因がはっきりしないって気持ち悪い。
    避けて通りたいのに、何に気をつければいいのかもはっきりしないってね〜。最初の場面で、なにげに触れていたから「もしや?」と思ったらやっぱり。
    病気っていつの時代も恐怖だ。

  • 関東の小さな町で、突然の高熱と肺炎で数人の成人が倒れた。その頃、ちょうど子供にインフルエンザが流行していたために、インフルエンザが重篤になったのだろうと誰もが考えていた。
    しかし、死者がでます。同じ症状の患者がどんどん増えていきます。

    SARSか?
    鳥インフルエンザか?
    新型のインフルエンザか?
    それともバイオテロか?

    現地入りしたフィールド疫学者が、自らの足で病気の発生源を付き止めていきます。

    とても面白いのですが、解決したような、していないような、何やら中途半端な読後感。
    「ウイルスを見つける」ことよりも、「病気を封じ込める」ことをテーマにしているので、仕方がないのですが…。

  • 1

  • 978-404-873801-9 509p 2007・11・30 初版

  • 疫学探偵という素敵なジャンルを開拓。

  • 過去に読んだアウトブレクとかパンデミックを取り扱った小説の書名の確認などいろいろと検索していて、新たに知った小説。フィールド疫学者の女性が主人公。インフルエンザ?SARS?未知の感染症が首都圏近郊で発生、集団感染を制御できるのか?
    フィールド疫学者の仕事は、元栓をひねって感染源を断つこと。病原体の探求は、また別のひとたちの仕事。
    感染が広がる”蛇口”となるものを抑えつつも、大元の感染源である”元栓”を見つけて閉める。

    (感想のようなもの)
    これって、どんなトラブルシュートにもいえるかもしれない。蛇口ばかり気になるけれど、きちっとゴールを定めて、どう元栓を見つけてきゅっと閉めるか。それが重要。

  • 好きなジャンルの作品だったのだが、なんとも読みにくい個所が数々。
    次のページを開くと前頁とシチュエーションが変わっているとか・・・

    病の発生がどこかさまざまな可能性を示唆したかったのだろうが、ブルーという子供の必要性が分からない。
    ブルーを登場させるならもっと書き込むべきだったのではないか。

    この手の作品で一押しなのは、篠田節子の「夏の災厄」

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著者プロフィール

1964年兵庫県明石市生まれ、千葉県千葉市育ち。文筆家。東京大学教養学部卒業。日本テレビ勤務中、1995年『クジラを捕って、考えた』でノンフィクション作家としてデビュー。退社後、1998年『夏のロケット』で小説家デビュー。小説に『せちやん 星を聴く人』『銀河のワールドカップ』『算数宇宙の冒険』『ギャングエイジ』『雲の王』『12月の夏休み』など。ノンフィクションに『PTA再活用論』『動物園にできること』『ペンギン、日本人と出会う』『イルカと泳ぎ、イルカを食べる』など、著書多数。現在、ナショナル ジオグラフィック日本版および日経ビジネスオンラインのウェブサイトで「・研究室・に行ってみた。」を連載中。

「2020年 『「色のふしぎ」と不思議な社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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