波打ち際の蛍

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
3.51
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048738736

感想・レビュー・書評

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  • 人を好きになり心を寄せる。
    素敵だなと心が温まる。

    元恋人からのDVで深い傷を負った女性が、新たに男性と時間や経験を共有したいと感じられるようになる流れが、自然で巧み。心の繊細な行きつ戻りつを堪能。

    全ては自分がダメだからだという思考の穴にはまり、世間から見放されている感覚をため込む。
    もっと大変な人はいるのに、自分の痛みや辛さは重症じゃないのにと。

    自分が自分である為に、丸ごと受け入れてくれる人の存在は大事なんだな。
    誰かと一緒に生きることは簡単ではないが(実感)、やっぱり素敵。

  • 元カレのDVにより、男性に触れられる事に恐怖を感じるようになった麻由。
    相談室というクリニックに通ううちに出会った蛍に心惹かれていく。
    恋の始まりはキュンキュンする。するんだけど、麻由の事情もありなんとももどかしい。

  • すきなのに、身体と心に触れることができない。そんな主人公の話。この話でも男性の暴力からの心の傷によって、主人公の中はどこか湿っていて、暗い。
    固くなった主人公をそれを少しずつ溶かしていこうとする蛍。この2人はゆっくりゆっくり進んでいく。そんな感じ。
    個人的には蛍よりさとる君のキャラが濃いような気がした。でも、嫌いじゃない。『生まれる森』がすきならばこの話も気にいるんじゃないかと思う。

    (203P)

  • 読んでいて何度も切なくなった。麻由が抱いている感情は、大なり小なり誰もが持っているもので、それを完全に、全部拾い上げるなんてことはこの世の誰にも出来ないんだと思う。
    以前読んだナラタージュは、ひとつの恋のある終着までを描いていると思ったのに対して、麻由と蛍の恋はきっとこれからなんだと思った。

  • 評価が分かれる作品。自分としては共感しなかった。読むタイミングでは、心に響くかも。

  • 波打ち際という境界線に
    ただよう ほのかな光を放つ 蛍

    遠い砂浜から波打ち際を見る 真由は
    砂という個体と 海という液体が
    せめぎ合う場所で
    蛍に近づき たわむれることができるのかしら

    きっと 足を海にひたしながら
    見る蛍はきれいで気持ちよく、心が満たされる
    と 想像しながら この小説の先を 祈った

    また泣かせるかもしれないけど
    会いに行きます

  • 宮下奈都さんのエッセイ集を読んで、手に取った。島本理生さんの作品は初読。繊細な恋物語。揺らすと壊れてしまいそうな危うさのある主人公・麻由と、その恋の相手である蛍、ふたりの恋。でも、大丈夫かな、この先もっとつよくなっていけるかな、という希望が見えるラストだったのではないかと私には思えた。たとえそれがふたりの恋が続くことを意味しないとしても。いつかまた変化したお互いとして会える、たぶん。ふたりとも孤独ではないから。さとるくんや紗衣子さんをはじめとした色々な人とつながっているから、絶望的に危うくはない。

  • とても 読みやすかった。
    でも この作家の小説に登場する主人公(女性)が
    私は あまり好きじゃない
    うじうじしていて、なんか、イライラしてしまう。
    魅力もないし。
    ストーリーは よくても 主人公にイライラしながら読んでいる。
    イライラしながらでも 読んでよかったと思ったけど。

  • 読む前の想像してた感じと違っていた。おばさん向きじゃない。間違えました。明らかに若い子対象。全然視点が違うからすごい辛口かもしれないが…
    少女漫画の場面を繋いだ恋愛小説に、重たい内容を乗せた感じ。
    私には重たい部分が浅く感じた。恋愛の方を気にするとあまりにも重くすると瑞々しい感じがなくなるからかな?こういうのは親子関係からもっと深く書かれてるのかと思ってたが違い、少ししか触れられてない。主人公は読者にまで何かを隠している感じ。
    蛍は少女漫画の男の人を切り取ってきたみたいな感じ。私はこんな男性見たことない。リアルさがなく世界が違う。
    書きたいカットされた場面がいくつもあり、それを繋げて物語にしているような感じを受けた。

    とにかく、若い人で男性に優しく包まれたいと願っている女性向きなのかな。その点を踏まえたらバランスよく読みやすいのだろう。

  •  人は、程度の差こそあれ、傷つきながら
     生きていくものなんだよなあ。

     そして、時には損なわれている自分に
     少し安心していることすらある。
     酔っている、の方がしっくりくるかな。

     なんでだろうね。悲しみや苦しみは
     たとえ解決しなくとも、誰かと共有する
     ことで、その重みはずっと減る。
     でも、そうしない人はきっとたくさん
     いるんだろう。なぜかね。

     主人公の場合は、たとえ暴力でも、
     「彼から与えられている」というのが
     なんというか、しばらくそこに留まって
     しまった理由なのかなと思う。

     もしかしたら無視されるよりいいのかもしれない。
     何かをもらうっていう意味においてなら。
     もちろん正しくなんてないけれど。

     しかし、その与えられるっていう受け身な
     姿勢がアウトー!な気がする。
     愛情を求めて待っていたのだろうか。
     でも受け身って、対等じゃない気がするの。
     与える、与えられるっていう力関係は、
     支配と服従を意味する気がする。
     相互にならいいのだろうけれど
     考えすぎか。

     それにしても蛍みたいな人いるかな?!
     男の人にしちゃめずらしいタイプだと
     思うのだけれど。
     静かで淡めで安らげるかもしれないけれど、
     いとこの方が好きかも、その強引さに
     救われる気がする。
     ただ、こういうヒーロータイプは独り占め
     できないんだろうなあ…
     
     ああ、妄想が広がってしまった。

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。03年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。15年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。18年『ファーストラヴ』で第159回直木賞を受賞。その他の著書に『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』『よだかの片想い』『2020年の恋人たち』『星のように離れて雨のように散った』など多数。

「2022年 『夜はおしまい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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