- Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048739214
作品紹介・あらすじ
福岡藩の支藩、秋月藩で、馬廻役・間小四郎は、若者らしい正義感から、長く藩政を牛耳ってきた家老・宮崎織部の糾弾に加わり、仲間と共にその排除に成功する。しかしその裏には福岡藩の策謀が・・・。書き下ろし!
感想・レビュー・書評
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再読。
筑前の小藩・秋月藩での政争を題材にした歴史小説であるが、重層構造ゆえ、多様な読み方ができる。
①ビジネス小説として
本藩の福岡藩と支藩秋月藩との関係から、現代の親会社に対する子会社が独立を保とうとする抗争劇として。
②政治小説として
誰が味方で誰が敵か。裏切りと騙し合いが錯綜し、それぞれの心の内が読めない展開に。
「目の前の敵がいなくなれば、味方の中に敵ができる」「金が必要であれば、誰かが手を汚さなければならぬ」と、政治の要諦を示す語りが。
③成長小説として
幼い日の体験を反省し、「自らの大事なものは自ら守らねばならぬ」「逃げない男になりたい」と誓い、生き抜いた成長物語として。
④友情小説として
幼馴染7人の交流が清爽に描かれる。彼らが成人後、主人公の危機に助力することになる。しかし、その後立場を異にするが。
主人公が晩年語る言葉が心に残る。
「山は山であることに迷わぬ。雲は雲であることを疑わぬ。ひとだけが、おのれであることを迷い、疑う。それゆえ、風景を見ると心が落ち着くのだ」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
福岡藩から分かれた小藩・秋月藩。
内部の対立や福岡との駆け引き。
汚名をきて追放される家老の真実とは…?
正統派でがっちり描かれています。
筑前秋月藩士・間余楽斉(はざま・よらくさい)が59歳で幽閉されるが、恬淡とした様子。
臆病者だったので、肩の荷が下りたと…
幼い頃は小四郎、兄と違い、気が小さく、かって犬にほえられて立ちすくみ、妹を助けに戻れなかった悔いがあった。
やがては豪腕をふるう家老を追い落とす一派の立役者となっていくのだが、さらに後には自分が同じような悪役をおわされる…皮肉というのか?
藩の苦しい経営や勢力争いはサラリーマン向きの内容?
要所要所にはチャンバラも。ばらばらになっていた旧友が駆けつける所など、盛り上がります。 -
九州の小藩、秋月藩で専横極める家老を糾弾すべく間小四郎は仲間と立ち上がり家老の排除に成功。しかしその裏には本藩福岡藩の策謀があった。
専横排除のために戦った仲間も現実を知り自らの力の限界を知らされ、また圧力に屈し保身に走っていく。
正義を貫こうとする心意気は、歳をとるとともにあるいは立場によってともすれば萎えて事なかれという気持ちになりがちで、それでも頑張ろうとする者は周囲から浮いてしまうことがある。
私達の平凡な人生でも、悪さも一緒だった竹馬の友、馬鹿騒ぎをしたり、反体制デモ、シュプレヒコールをともに叫んだ学友も妻を娶り子をなし、仕事もそれなりの地位を得れば良くも悪くも皆落ち着いてくるもの。
そんな中にあっても幼少期に妹を死なせた後悔ゆえに「逃げない男」になると決めた小四郎は本藩に取り込まれぬように奮迅する。
人はなんのために生きるのか、様々な選択肢はある。
小四郎のそれは正しく生きている人間が幸福に生きていかれる世の中になるべく命がけで働く事だったのだろうか。
そして彼は妻に「この世の一番の悪は怠けだ」と語る。
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今回も葉室節を堪能。 人に知られずとも、やるべきはやる。 でも、もともと強かったわけではない。 後悔からはじまったもの。 詩のように生きれたら。
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ちょっと、いま一つでした。
ドラマがなく、淡々として、あるがままの記録という感じですね。
とても読みやすい文章なので、残念です。 -
武士の生き様。
若き日の志と歳を重ねて知ること。
静かな中に、一人の人物の佇まいがうまく描かれている。 -
大義とは
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図書館より
秋月藩の武士間小四郎の半生を描いた歴史小説。
武士としての藩を思うまっすぐな生き様、藩をめぐる様々な陰謀や敵、武士同士の友情と運命の交叉、芯が強く優しい女性陣、チャンバラシーンと武士を扱う小説のほしい要素がすべて詰め込まれていたと思います!
史実をもとにした小説なので、歴史の流れを追うハイライト的な話の筋になるのではないか、とも読んでいるときは思ったのですが、全然そんなことはなかったです。どのエピソードも主人公を中心にしっかりとスポットを当てられていて、史実に物語がしっかりと肉付けされているように思いました。
文章の安定感もぴか一!いつまでも読んでいられる、とまで言ったら言い過ぎかもしれませんが、素人の自分でもこの文体は良いなあ、と思ってしまいました。
この本は全ての役目を終えた小四郎の回想から始まります。プロローグでは小四郎はそのことに関し「安堵の想い」と語っているのですが、全て読み終えた後だと、この言葉が本当に実感を持って心に迫ってきました。運命の皮肉に踊らされても決して腐ることなく、藩のための行動をとり続けた小四郎の生き様に本当に素晴らしかったです!