罪火

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著者 : 大門剛明
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2009年12月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048740197

罪火の感想・レビュー・書評

  • 花火大会の日。
    神社で13歳の美しい少女が殺害された。
    まもなく犯人はつかまるも真犯人は別にいた。
    この物語では冒頭に彼が真犯人であり、どうしてそんな犯罪を犯したのかというのがその後語られている。
    だからこの物語は誰が犯人なのか?
    真相は?というのを追うというよりは罪を犯した人とその被害者となった人の心情を通して人間とは?と問いかけている。
    ・・・と思いきや、最後の最後にまた別の真相があった。
    個人的にはその最後の真相のくだりはいらなかった。
    それまではこの本のテーマとは何だろう?
    という事を通して色々考えさせられる話だったのに、そのくだりがあったために薄くなってしまったように思う。
    まるで犯人や犯罪が美化されてしまったようにも感じた。
    ただ、ミステリーファンや純粋にストーリーを追って楽しむ人にとってはその方が刺激的で面白いのかもしれない。

    私が途中の読書で思っていたのは、犯罪を犯した青年の心情の経緯を通してのこと。
    彼が最初は恵まれない環境にありやさぐれていたのに、ある事から一変、ちゃんとした仕事に就き、彼女もできて順風満帆になる。
    それまでの彼は自分が犯した犯罪をある意味「仕方ない」ととらえていたが、自分が落ち着いた状態になると罪悪感をもち、その後は犯罪が発覚する事を恐れてまた悪い心をもつようになる。
    その様子は本当に人間的だと思い、心情が理解できた。
    ああ、少しでも良心があったり、人間的な部分があればこういう心持になるものだろうな・・・と思った。
    そうして思ったのは、人間再生していくにはある程度の環境も必要という事か?という事。
    ある程度、ひと心地ついて人というのはそれまで自分がした事を振り返る事ができるのか。
    もちろん、そうじゃない人もたくさんいる。
    どんなに恵まれないつらい境遇であっても罪悪感をもち再生していこうとする人。
    そんな人は本当に強靭な精神の持ち主で決意をもっているのだろう。
    返せば、そんな人じゃない、この物語の犯人のような男は恵まれない状況のままだったらまだまだ犯罪をおかしていたのだろう。

    そんな事を思いながら読んでいたので、最後に最後の話には正直ガッカリした。
    こんな理由づけなんていらない。
    その方が考えさせられる話になったと思うのに、急に薄い話になったな・・・と感じた。

    この本で初めて修復的司法というものを知った。
    被害者の回復をめざす仕事で、被害者の母親は校長先生という肩書がありつつそういう仕事もしている。
    実際、自分も被害者という立場になった訳だけど、本当の意味で一人ひとりの被害者の立場になって心に寄り添うというのは本当に本当に難しい事だろうな・・・と思う。

    この作者の本は初めて読んだけど、またこの人の読みたいな・・・と思える文章力と内容だった。

  • デビュー作「雪冤」が横溝正史賞を受賞。
    受賞後第1作目。
    読ませる文章が凄く安定しており、
    最初からスンナリとストーリーに馴染めます。上手いです。

    今作もやはり社会派と呼べるシリアスで被害者と
    加害者の関係を両面から描きつつ、作者の思いを
    伝える事に成功していると思います。
    が、やや事件の見せ方が強引なような気もします。
    不自然...?と思わす部分が多くて途中までは
    ちょっとだけ座り心地の悪い感じ...かなぁと。

    ですが!!最後の最後にその真相が明らかになればこそ、
    その心地悪さは納得出来るつーのは...
    まんまと作者にしてヤられたの...かも。
    個人的には前作よりも数段いい作品かと!

  • 加害者の贖罪と更生、被害者の怒り苦しみ、そして赦免。
    加害者側の揺れる心理描写がとても良かったです。

  • 叙述トリックの社会派推理サスペンス。根底に修復的司法がある。被疑者と被害者家族が向き合う事で真摯に犯罪を受け止めようとするものだが、双方の思いが掛け違い負担が大きくなるデメリットの方が多い。新たな犯罪の引き金にもなりかねない!そうした危惧を小説として世に問いかけた作品と言えるだろう。
    若宮が少年時代に殺人事件を起こし、町村校長が修復司として係わる。ここから事件が連鎖していくが、何故若宮が少年犯罪に陥ってしまったのかが抜け落ちている。犯罪者心理と被害者家族の心理描写で構成されて最後のどんでん返しで未来志向の落ちに成っている。何となく甘さを禁じ得ない!

  • そういうどんでん返し、かぁ。
    主人公は「悪い人」だけど、やはりどこかで「悪」にはなりきれない。罪を償い、待つ人たちのもとで帰ってくることを願う。

  • 2作目。雪冤と同じく、死刑制度や被害者と加害者が会う制度のことが出てきた。でも雪冤よりずっと読みやすくなってた。さすが。いわゆる社会の底辺にいる人たちがやけになる気持ちも分からなくはない。派遣の人はこんなに虐げられるのか。でも原口お母さんは楽しんで仕事してる感じだけど。しかし、それがちょっとのきっかけで正社員、結婚とメジャーな人生に戻れることもあるのだ。若宮のように。でも、若宮はほんとの悪ではなかったから良かったんだよね。しかし、被害者と思ってた子が加害者で、それをかばおうとしたり、遺族がまた相手を刺したり。ほんと人が死ぬって大変だな。あと、雪冤は「まっかなジャムを塗って食べる」が出てきて、今回はラジオからイエモンが流れた、という形で登場。作者の人、イエモンファンなのかな。殺人とレイプはどちらが罪が重いのか。命にまさるものはないんだろうけど、被害者としては同じくらい踏みにじられているわけで。レイプされた後自殺しちゃったら、結局殺人と一緒じゃないかと思う。性犯罪はもっと重い量刑にした方がいいのではないか。でもそれも、安易な厳罰化になるのだろうか。今回も被虐待児として書かれていたし。被害者が加害者になる、というのは定番なのか。今の職場の子達が、こんな人生を送らずにすみますように。暖かな人たちの中で暮らせますように。

  • 久々に読書。
    この作者さんの作品は多分2度目。読みにくい印象だったけれど、こちらはあっさり読めました。

    特殊な団体活動をしている設定の割りには感情移入しやすかった。
    ただ、ラストの『どんでん返しです!』的なのは要らなかったかな…

    智人君は繰り返すのかしら?再火

  • 巧い。かおりが最後に若宮に「許さない」ではなく「赦さない」と言ったところに、一連の事件で罪を冒す人に向けた憎悪が、罪に、償いへと、少しポジティブな方向を示唆した感じが非常に良かった。

    最後のどんでん返しもミステリーとしてはベタだけど、ベッタベタ感を紙一重でスッキリとさせてるような、終わりの良さがあった。

    最後の一節というか、事実はこの手のミステリーでは王道?嫌いじゃない(笑)

  • 意表を突く結末。思わぬ展開だけど、その実現には世の女性達に奇跡が起こらないとね。

  • 事件ものはやはり面白い。
    極悪人と思ってた人が…。
    最後どんでん返しがあるけど
    ちょっとインパクトは弱い終わり方かなぁ。

  • 若宮という男の人格の変動がありすぎて、どれが本当の彼なのか。

    本当に隠したかった真実には驚いた。読み返してみると確かに上手くごまかし・・・描いてある。

  •  小学校で校長という職につきながら、「修復的司法」という加害者と被害者が話し合うことで問題の解決を図る試みの仲介役としても活動している町村理絵。実際、殺人を犯してしまった少年が罪をつぐなった後の担任も務めたことがあり、犯罪者も更生できると信じていた。それなのに・・・。娘の花歩が何者かに殺され、理絵も被害者遺族という立場になってしまったのだ。

     この話はいわゆる倒叙もので、読んでいる人間は犯人が誰だか最初からわかっている。そして犯人は、理絵が更生したと信じきっていた若宮であり、このことで犯罪者の更生、「修復的司法」というものの有効性を最初から読者に問いかける。私は今回この言葉や制度を初めて知った。正直、これが成立するのはかなり難しいと思うし、自分が当事者だったらなおさら無理ではないかという思いをまずもったのだが、町村もそんなジレンマに陥っていく。町村の心の動きと共に、犯人側の若宮の心情もつづられていくのだが、これが私はどうも最後までずっと違和感があった。行動や性格に一貫性を感じられず(衝動的に罪を犯す人間とはそういうものだと言われればそれまでだが)、最後まで若宮という人物がつかめなかった。プロローグ部分で”トリック”なんて言葉が使われていたので余計に、「え、もしかして叙述?2人いる?」なんて深読みしてしまった程。結末を読んでみれば「あぁなるほど」とは思うのだけど、なんかしっくりこなかったなぁ。

  • 安濃図書館。

    三重県出身、伊勢市在住の新進の作家さん。

    最近「ダメ弁」シリーズの文庫本を書店で見かけた・・・「何故、伊勢市が舞台?」とググッてみたら・・・

  • ストーリー展開もさることながら、双子の兄弟とその母親のことが最初からかなり気になっていた。公立学校の校長の定年は何歳かは定かではないが、定年の前年時点で子供が中学2年という設定でいくと、それなりの高齢出産だったはず。この点が話の展開に関係があるのではと、妙に勘ぐってしまった。

    犯罪の被害者とその加害者双方の、心理状態について考えさせられることが多かった。この被害者・加害者の想像を絶する関係に、突然放り込まれる人が、今日もまたニュースに取り上げられている。「全くの他人ごと」と日々を過ごす私が、次の当事者になるかもしれない。そんな日常の怖さを感じる作品だった。

  • 7月-13。3.0点。
    校長の娘13歳が殺される。担任の変態教師が逮捕されるが、
    真犯人は、校長の元教え子。
    娘殺害の、真相は解明されるのか。本当の動機の秘密。
    まあまあ。この作家は社会の問題点に切り込むが、
    そんなにメジャーじゃない問題点を切り込んでいるかな、

    それにしても、258ページで1,785円はどうだろう。
    ブックオフで買ったけど。

  • 最初に犯人が分かっていて、その人の逃げっぷり、追う側の追い詰めっぷりが書かれていて、どーなるんだとハラハラさせてくれる話。展開も早くてダレないところも良い。
    これを面白いといって良いのか分からないけど、作品としては面白い。
    ただ、出てくる犯罪者がどいつもこいつも、救いようの無い悪。
    そのへんはものすごく胸糞悪い。だけど面白い。
    最後にまさかのヒネリもあって、一応救われる話で、すっきりする。

  • 終盤に町村先生が「とんでもないこと」に気づく、その内容にこの本のおもしろさが懸かっていたわけだけど、予想を裏切る見事などんでん返しでした。ミステリーとしてはおもしろかったと思う。
    被害者の方のための修復的司法、そして応報的司法についても考えさせられます。
    先月読んだ「確信犯」が☆3つなら、今回は☆3.5!次は横溝正史ミステリ大賞を受賞したという、「雪冤」を読みたい。

  • 前作よりおもしろい。
    最後のどんでん返しびっくりしました。
    もう一度読み返してみたい本。

  • 犯罪者はしょせん犯罪者…と思ったら最後のページでドンデン返し

  • 最後の20ページぐらい、怒涛のようにいろんなことが押し寄せてくる。
    ほんとに、「こう来たか!」っていいたくなることばかり。
    加害者と被害者という立場を語った単純な話ではなかったところが良い。

  • 犯罪被害者と加害者の物語。殺人を犯した者は果たして更生できるのか、そして身内を殺された者はどうすれば救われるのか、というありがちなテーマを捉えたシンプルな倒叙ミステリ。
    ……と思いきや。こう来るか! そういえば伏線はあったよなあ。しかしこういう展開はまるで予想もしなくて。そしてなんともいえない切なさが読後に残りました。あの人もあの人も、苦しんでたんですね。
    そして犯罪は更なる犯罪を呼び、いたずらに被害者を増やしてしまう。いわば犯罪加害者だって、被害者なのかも。やるせないです。

  • 2010.3.1

    おもしろかったです。
    無差別殺人の犯人の気持ちがよくわかる、という主人公。
    修復的司法とか、犯罪被害者と加害者のことがたくさんたくさんでてきます。
    その中で、被害者が加害者になったり、加害者が被害者になったり、加害者の家族が被害者になったり、被害者の家族が加害者になったり・・・
    こういうことって多いんでしょうか?
    このお話の中での、その密度の濃さにびっくりでした。

    でも、原口おばさんの心理がわかりません。
    お葬式の時に娘が気に入ったからと言って、一回りも年上の、会社で問題を起こした人と、積極的にくっつけようとするものでしょうか?

    この主人公は、長身で顔もいいみたいだから、女性から好意を寄せられることも多いようだけど、そうでない、同じような境遇の人だったら、更正の機会はぐんと減ってしまう、ということなのでしょうか?

  • デビュー作「雪冤」に比べると、スッキリとまとまっていて読みやすい。

  • デビュー作「雪冤」よりも読みやすく、すっきりとまとまってました。その分、ラストのツイストの切れ味もいいです。

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