- Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048740432
作品紹介・あらすじ
紙魚となって時空を超え書物を渡り歩く諜報員・フィッシュ、彼を追う刑事・ロイド、凍った言葉を解く4人の"解凍士"、秘密を握っていると思しき水晶の眼の女・レン-凍った言葉をめぐるマジカル・ファンタジー。
感想・レビュー・書評
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なかなか読みやすかった。吉田篤弘の魅力といえば一番は文章の美しさでしょう。それから発想。
奇抜といえば奇抜なんだけれども、奇をてらってるわけじゃなくて日常の素朴な気づきからのストーリー。
この人の普段の頭の中のぞいてみたい。
しかしパロール・ジュレ、ひとつだけ宝物みたいに持っていたいなぁ。儚い薄氷と言の葉を重ねる感性が好き。 -
2014 3/5
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別離により分断された国の中にある、小さな北の街キノフ。
そこでは言葉が凍り付き、パロール・ジュレと呼ばれる物質になるという。
そんな不思議な現象を探る為にキノフに派遣された諜報員、十一番目のフィッシュ。
彼は紙魚であり、本の中を自在に泳ぎ回る事ができ、また本の中の人物に変貌することができた。
そんな彼をはじめとし、パロール・ジュレに魅せられた人間達の物語です。
フィッシュを追う刑事ロイドの思惑や孤独。
水晶の目を持つ謎の女レンが漂わせる秘密や怪しさ。
パロール・ジュレを解凍し、凍り付いた言葉を拾い上げる解凍師たちの誠実さや孤独感。
キノフに住まう人々の雑多な感情。
それらがいかにも思わせ振りで謎めいています。
ドキドキするような謎ではなく、じんわりと不思議だなあと首を傾げたくなるような。
魔法めいた事柄のなかに謎がありゆっくりと紐解かれていきます。
ファンタジーのような世界観ですが妙に現実的です。
フィッシュの淡々とした語り口は、そのままキノフの淡々とした、少し冷たく、雑多で、優しい雰囲気に上手く溶け込んでいくように思えます。
街の中に流れる時間は美しく優しく寂しいです。永遠にそうなのではないかと、勘違いしたくなるほどに。
人々が凍結した言葉を解凍したときに、世界はかわるのでしょうか。
最後の最後、やっと辿り着いた結末にじんわりしました。
凄く好きな本です。
雑多で汚らしいものと美しいものが混在している世界なのに、穏やかで冷たい美しい雰囲気がたまりません。 -
クラフトエヴィング商會の作品をそのまま長編にした、的な1冊
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本のなかを旅するような夢をみているようなはなし。
C0093 -
「自分」というのは何なのか。人が知っている自分と、自分自身が「自分だ」と思っている自分と。
誰かに伝えたとしても、伝わっていないとしても、一人で呟いたものだったとしても、言葉がぽっかり浮かんで残るイメージがある時が確かにあって、「コトバが凍る」というのはなんというかとてもしっくりくる。最近は、こうやってインターネットにどれだけでも言葉を吐き出すことができるけれど、だからこそあらゆる人のコトバが氾濫していてそれをしっかり「解凍」することってあまり出来ていないなあと感じた。
少し間をあけて、もう一度読みたい。