ムーの少年

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 126
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048740821

作品紹介・あらすじ

「先生、僕のお話ホントにホントに聞きたいですか?だからつまり、つまりそうなんです、この屋上にひっそり忍び込んだ僕が、いまこうして先生と遭遇しちゃったみたいに、あの日の弓子さんも気づけばすぐ後ろに佇んでたんです。ごごご、ゴルゴ13なら殴り倒してたところですよね、アハハハ…」でも僕は弓子さんを殴り倒さず恋をした。14歳の初恋だった。しかし彼女は夢見がちな人だった。魔法使いだったのだ。もはや、虚構の世界の妄想に精神を飲み込まれた彼女を救えるのは、雑誌『ムー』を愛読し、日々オカルトを実践している僕しかいない!ねぇ、フォボス…もしかしたら僕、ガールフレンドができたのかもしれないよ…。

感想・レビュー・書評

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  • 滝本 さんの本はネガティブ~から全部読んでいる。
    久しぶりに単行本を出したと知り、ネットで購入。仕事の合間に読んでみた。
    現実と非現実がまじりあう世界観は相変わらずであったが、他作品ほどのインパクトはなかったと思う。
    多分私がおっさんになったという理由が大きいと思うが、ダメ主人公に共感出来なかった。
    内容に関してだが、最後が若干気になる。お父さんが帰ってくるのかなぁ。フォボスはどうなるんだろ。何に気づいてしまったんだ??とか。
    すぐ読めるので、息抜きによい。

  • 凄くファンタジックな話だった。
    冒頭から急展開で話を飲み込むのが大変だった。
    あの後も話についてくのがちょっと大変だったかな。

    弓子さんが本物の魔法使いだった件には相当驚いた。
    まさか本物だったとは(笑)
    中学生特有の厨二病な女の子と男の子の話かと思ったら普通にファンタジーだった。
    種蒔き師が結局どういった存在だったのかもう少し明確に描いてほしかったかな。
    最後の種蒔き師の人に、中島くんがお父さんって言ってたがあれは一体…?

    最後の弓子さんとのお別れがちょっと切なかったな。
    さようなら。か…。
    あの2人はきっとまた仲良くなれるような気がする。

  • 「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」「NHKにようこそ!」で人気を博し、その後どこかに消え入り沈黙を続けた滝本竜彦が、「僕のエア」で復活を遂げて早半年。
    ついに新版かつ真版「ムーの少年」が発売された。

    2004年に「野生時代」で連載されていたものからは、大きく修正されているとか、いないとか。
    当時まだ小学6年生だった僕は、滝本竜彦という作家を存じ上げていなかった。
    中一になり、児童書と講談社ノベルスしか読まなかった捻くれ者の僕は、やっと角川文庫の「ネガティブ――」に出合った。
    だから残念なことに、「野生時代」で連載された「ムーの少年」を僕は知らない。
    (ファウストは手に入れたから「ECCO」は読んだ)
    是非ともいつかは比較して読みたい。ノベルアクトにあったPDF化計画(?)は、まだ始動していないのだろうか。期待しておくことにする。

    では作品内容について。
    滝本先生らしいボーイミーツガール。
    現実を見なくちゃいけない、そんなの分かってる、けれど見れない少年が、虚構にとりつかれた魔法使い、弓子さんに出会う。
    ところがどっこい、今までの滝本作品とは、あらゆる面でかけ離れている。
    今までなかった何かが、そこには描かれている。
    実際に読んで確かめてほしい。

    テーマは「悟り」である。
    「真実に目覚める」ことが追求されている。
    さもないと僕達は、いつまでも幻想に飛び込み続ける。
    だから主人公の中島くんだって、弓子さんだって、夢の中から逃げられない。
    でも目覚めるには、夢の中で確かなリアルを見つけないといけないから。手に入れないといけないから。
    幻に縋り、幻と共にあることで、僕達は幻の出口を知る。
    その手助けとなる虚構が、中島くんにとっては弓子さんであり、彼女にとっては彼であり、僕にとっては「ムーの少年」なのだ。

    次に各章について。

    「第一章 ムーの少年」
    単純に引き込まれた。文字通り引き込まれた。
    「巻き込まれた」と評する方が適切かもしれなかった。
    最初は「読みやすい」と思い、スラスラ紙を捲っていた。
    ところが少しずつ、頭の隅で何かが引っ掛かり始めた。
    気付けば既に手遅れだった。
    「僕はリアルとアンリアルの区別がつかなくなってしまった!」
    この章では目まぐるしく両者が入れ替わる。
    その境界線が、混沌として曖昧模糊であることを、僕は思い知らされたのである。
    でも最後の一文を読んだとき、僕の頭はすっきりとしていた。
    2人の弓子さん、「ジョウロの夢」、全てのフラグメントが整理され、絡み合っていた糸は一度リセットされた。
    中島くんが虚構の世界に飛び込み、弓子さんの助手となることを決めたように、僕も「ムーの少年」に最後まで付き合うことを、ここに固く誓ったのだ。

    「第二章 部屋と五寸釘と僕」
    打って変わってシンプルな構成である。
    ちょっとくすりとくる伏線がはられている。
    敵である「種蒔き師」により、とんでもない虚構が生まれ、中島くんと弓子さんはそれを何とかしようとする。
    でも元に戻してしまえば、そこには目を逸らしたい現実が横たわっている。
    そして中島くんは、最後に一度だけ幻想に屈してしまう。
    人のために。
    全三章の中で最も幸せな終息。

    「第三章 さよなら弓子さん」
    中島くんと弓子さんは、冒頭でただの人間に戻っている。
    もちろん僕は驚いたが、その種明かしはすぐになされる。
    問題なのは、幻想を捨てた中島くんの未来には、絶望しか待っていないこと。
    それでも彼は、夢の中に閉じこもってはいけない。弓子さんを追って、リアルを見つけないといけない。
    彼は夢の終わりを受け入れる決心をした。
    そして物語は、現実に回帰する。
    でもたった1つだけ、変わった点がある。
    中島くんは「悟った」のだ。
    「真実に目覚める」ことに成功したのだ。
    彼は夢に逃げた。そしてその中でリアルを手に入れ、返り咲いた。
    そこにもう絶望はない。

    でも滝本先生、それでも弓子さんと「さよなら」しちゃうのは寂しすぎますよ。泣いちゃいましたよ。

    だけどきっと、弓子さんを失ったその痛みがなければ、中島くんはいつまでも夢の中だったのだろう。
    出産に痛みはつきものだ。
    彼が転生するためには、夢の中で導いてくれた弓子さんを、失うしかなかったのだ。

    そして僕は「ムーの少年」を読み終えた。
    でもまだ読んでいる。
    きっと何度も読んでいる。

    僕はまだ中島くんみたいに、現実を直視できない。
    だからきっと、これからもフィクションの世界に飛び込み続ける。

    いつの日か胸を張って、「ムーの少年」を読み終えたと言えるならば、そのときの僕はきっと、「ムーの少年」だけじゃない、全ての物語を超越しているだろう。

    そんな日が来るまで、僕は滝本竜彦の次回作を待ちつつ、フラットランドで生きるという意味を、探し続けるのだ。

  • 古本屋で見つけた本。随所のムーネタにくすっとする。結末はよくわかんなかったけど、なぜか最後まで読み切ってしまった不思議な小説。

  • ん、暇つぶしにはなる。

  • 魔法などで簡単にすべて手に入ってしまう幸福はマヤカシである。この本のテーマは著者が言うとおり「悟り」である。私たちは日々ちょっとした幸せやムカツクような経験やちょっと進展したもの等 全部ひっくるめて可能性の中に身を投じている なんて素晴らしいのだろうかと言った話だと感じました 確かにそうだと思います。久し振りに素晴らしい小説を読みました。

  • とりあえず読んだが、内容が受け付けない。中学生が書いたような独りよがりな空想の世界の話。

  • 面白かった。笑わせるシーンがいくつかある。ラストは切ない。

  • 滝本竜彦の作品は初めて。
    ファーストインプレッションは後ろ向きに全力疾走な印象。

    現実逃避をこじらせ完全に自分の世界に入り浸ってる主人公が更に痛い言動の少女・弓子さんと出会う。彼女はなんと魔法使いだった。

    敵の産み出す幻惑や幻想は本当に敵が生み出しているのか、自分たちが生み出しているのではないのか・・・
    色々と考えさせられる物語だった。

    最後の弓子さんと「さよなら」をするのは、切なかったし・・・もう、すごいんです。色々と。

  • 魔法使いだって吸血鬼だって普通の人間と同じく「社会」「世間」に殺される。最強の種族なんていない。生き残るためには自分の世界にひきこもる必要がある。自分の鉄壁な結界に。

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著者プロフィール

2001年、第5回角川学園小説大賞特別賞を受賞した『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』でデビュー。その後『NHKにようこそ!』でブレイク。他著作に『超人計画』『ムーの少年』『ライト・ノベル』など。「後ろ向きに青春を駆け抜けろ」をキャッチフレーズに、「ひきこもり世代のトップランナー」として一世を風靡する。

「2021年 『異世界ナンパ 無職ひきこもりのオレがスキルを駆使して猫人間や深宇宙ドラゴンに声をかけてみました』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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