お台場アイランドベイビー

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.21
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本棚登録 : 368
感想 : 70
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  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048741125

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭から引き込まれる展開でした!
    直下型大地震で荒廃した近未来の東京の様子はかなりのリアリティで迫って来ます。そんな状況下でのアクションミステリーがとても良いです。と言ってシリアスにならないような笑えるツボもおさえてあり、結構のめり込むストーリーになっており主人公の関西弁が効いてますね。惜しむらくは終盤 明らかにされる事実が私には肩透かしに感じられて尻すぼみの読後感でした。

  • 伊与原 新デビュー作

    「月まで三キロ」のイメージとは遠く、
    ハードボイルド長編小説

    お台場を舞台に甘粕事件等
    実在の事件も交えてテンポよく進む

    「全員善人という大きな瑕(キズ)のある作品」という書評もあるが、キャラクター設定はかなり細かく読み応え抜群

  • 伊与原新さん、これまで理数系のイメージが強くあったのですがまた違った感じです。デビュー作ってことですか?面白く読みました。
    北村薫さんの選評の、みどりの同性愛者としての立場についての言及にうなずくものがある。

  • 最後まで、飽きさせない。

  • ★「せやけど――子供を守るためには、ちょっとおせっかいぐらいでちょうどええと思うんですわ」p.351

    【感想】
    ・いかつい見た目の心優しきハードボイルド探偵の冒険譚って感じ(探偵じゃないけど)。
    ・巽丑寅の関西弁が自然。
    ・ただ、とってつけたようなみどりの同性愛者という設定や最後の丑寅の扱いなんかは気になった。いろいろ盛りだくさんなのだけど全体にそれぞれがあっさり記述だけですませてる感じはあった。「実話ダイナマイト」の社長さんなんかは丑寅の相棒役にしてもおもしろかったような気もする。ユリア婆さんなんかももすこし出番あってもよかったかも。

    【一行目】
     眩しい――。

    【内容】
    ・舞台は経済危機とお台場直下を震源とした大震災によって荒廃した東京。
    ・元刑事の巽が偶然助けた九歳の少年、丈太はヤクザ等に追われている。なぜ? 
    ・後輩刑事を殺されたみどりは「震災ストリートチルドレン」の謎を追う。
    ・なぜお台場はかくも厳重に封鎖されているのか?
    ・少しずつなにかに近づいている感覚。そのへんがおもしろさか。そしてある程度まで近づいてしまうと強大なチカラが襲いかかってくるだろう感覚。そのへんがスリルか。
    ・お台場、岩佐都知事、カルロス、丈太。
    ・横溝正史ミステリ大賞受賞。

    ▼簡単なメモ

    【岩佐紘一/いわさ・こういち】東京都知事。四期目の再選を果たした。
    【オオスギ】→カルロス・オオスギ
    【お台場】今はあらゆる橋も撤去され無人島となっている。なぜか非常に厳重な封鎖がなされている。学者による調査ですら認められない。なにかあるのだろう。
    【ガイ】閉鎖された地下鉄駅を根城にしている男。
    【笠間】東京桜林会病院の事務長。
    【兼岡衛/かねおか・まもる】若い刑事。鴻池みどりの部下。巽がチーチェンと思われる少年を見かけたコンビニで殺された。
    【カリモト】サイド・シックスのリーダー。幼く見えるが落ち着き払っている。
    【カルロス・オオスギ】重富といっしよに行動していた。なぜか子どもたちを集めていた可能性あり。緑色の目と音が高低に割れたようなふしぎな声。日系ブラジル人四世。重富に言わせると生まれついての催眠術師。ふつうに考えたらプロローグに出ていた「私」がカルロスだと思われるが?
    【消えた震災ストリートチルドレン】震災直後の都内でおおくみかけられるようになった子どもたちの集団。一般には不法滞在していた外国人の子どもではないかと思われ話しかけても逃げられるだけだった。ある日忽然とみんな姿を消したが最近ときおり見かけられるようになったらしい。個人を特定できた者だけで百一七人。平均年齢九歳前後、男女比六対四。七割はアジア系、次いで南米系。鴻池みどりは、彼らが何だったのか、なぜ消えたのか、どこに行っていたのかを調べようとする。
    【危険区域】無法地帯に近くなっている地域。
    【椚木瑛太/くぬぎ・えいた】岩佐都知事の秘書官のひとり。政治工作専門であまり表には出てこない。
    【健康保険制度】破綻しておりすでにない。
    【公安事案】本庁の公安が担当するということは事件の真相が伏せられるということに等しい。要するに伏せたいなにかがあるということ。
    【荒神会】弱体化が進むヤクザ業界の中で最近勢いがある。岩佐都知事と関係があるかもしれない。
    【鴻池みどり】巽が刑事だったときの上司。眼鏡のお堅い教師のような女性。品川署生活安定課警部。もうひとりの主人公。同性愛者。
    【河野準治/こうの・じゅんじ】品川署で頼りにされているベテラン刑事。鴻池みどりにも目をかけてくれていた。
    【ゴーストコロニー】南青山あたりにある老舗のコロニーで危険区域に指定されている。もともと幽霊ビルが多くは存在していた。若者が多い。、
    【国土復興協力隊】岩佐都知事の肝いりで発足した若者たちによる労働力確保のための手段。今は治安維持にも携わり拳銃の所持も認められている。中でも「教育隊」と呼ばれている連中はサブマシンガンを携行している。
    【コロニー】かつて避難所だったエリアで、住人の出入りによってしだいにそれぞれ特徴が現れてきた。趣味とか生活様式とかで。例として、趣味による「アキバ系コロニー」はネット活用による違法な売買が盛んで、「ギャング系」はドラッグの密売や組織的詐欺、「ハイエナ系」は義援物質や義援金のちょろまかしなどが行われている。もちろん、政府援助のもとの健全なコロニーも多い。
    【コンテナコロニー】「危険区域」のひとつ。元は大規模な避難所だった。アジア系外国人が住人の大半を占めていると言われている。久野によると数人のボスによる共和制という感じらしい。
    【サイド・シックス】アキバ系コロニー。裏の情報が手に入る。第六台場にある。中立コロニーかどうかはわからない。
    【重富孝也/しげとみ・たかや】潮流舎の創設メンバー。脱退している。震災当時潮流舎内の「黒旗」というチームに入っていたようだ。その名称はかつてのアナーキストたちの活動からきていると思われる。現在どうやら服役中。
    【実話ダイナマイト】ペラペラの雑誌。カニ出版刊。セイジいわくこれを読むのは男のたしなみなんだとか。
    【俊】巽の息子。
    【丈太/じょうた】巽がであったふしぎな少年。九歳。いきもの全般がすき。
    【丈太の母】メイという名前らしい。名字は不明。家森美帆(いえもり・みほ)という日本人の名を借りている。「帰りなさい――もう島に帰りなさい」p.188
    【菅谷杏子/すがたに・きょうこ】不就学児童支援ネットワークの代表。
    【セイジ】宇多組の若い衆。鴻池を自宅マンションまで車で送る係。話好き。
    【ソニア】サイド・シックスの住人。父がインド人の美人。
    【タキ】リリコと親しかったつかみどころのない男。
    【ダーウェイ】チーチェンの兄。五反田のコンビニで店長をしていた。
    【高見聡平/たかみ・そうへい】「実話ダイナマイト」に記事を売り込んでいた記者。行方不明になっている。
    【巽丑寅/たつみ・うしとら】主人公。刑事くずれでヤクザの用心棒。本庁のマル暴から品川署の少年課に飛ばされた後にグレて退職。おきらくでてきとーでひとをくった性格。関西弁のおっさん。
    【チーチェン】「消えた震災ストリートチルドレン」のひとり。中国系の少年。
    【潮流舎】正式には「アンガージュマン潮流舎」。ホームレスや外国人労働者の支援をしている団体。
    【鶴丸商会】証明書類の偽造を生業としているプロ集団。
    【帝土建設】日本有数の大手ゼネコン。つねに談合疑惑がある。
    【東京桜林会病院】金持ち向けの病院。完全紹介制。なぜか丈太の母が入院したらしい。その後どこかに転院したが行方不明。
    【東京湾北部大震災】死者・行方不明者あわせて二万二千六百一九名、折からの経済危機と相俟って復興は進まず人口流出が続き東京の人口は七百万人を割った。
    【ネムリ】ファン老人の部下。
    【能見千景/のみ・ちかげ】本庁公安部刑事。端正な女。キャリア。親しいというほどではないが鴻池とはそれなりに会話がある。
    【久野隆文/ひさの・たかふみ】巽が刑事時代に住んでいたマンションの隣のアパートにいた学生。そのアパートは久野以外全員中国人だった。大家の死によりアパートが取り壊され今はコンテナコロニーで暮らしている。
    【ヒデオ】素人を騙すニンベン師。技術はなくただの詐欺師レベル。まっとうな? ニンベン師からはバカにされている。
    【ファン】コンテナコロニーを仕切るボスのひとり。驚くべきことに、巽のことを知っていた。
    【マーク】お台場にいる野犬の一頭で群れのボス。大きくて狂暴だが丈太にだけはなついている。
    【俣野】どうやら帝土建設の裏工作専門社員のようだ。
    【向山/むこうやま】医療福祉監督官。
    【村崎/むらさき】警察を辞めた巽を拾ってくれた、宇多組の若頭。
    【谷津/やつ】特捜検事。能見の友人。
    【ユリア】病院に入院している婆さん。「シャー」p.189
    【リーチネスト】高さ二百メートルを超える危険なビル。だいたい六本木ヒルズあたり。まあ、言われてみれば最初から吸血蛭の巣窟ではあったので。ヒデオがいるらしい。
    【理代子】巽の妻。
    【和達徹郎/わだち・てつろう】帝都工科大学地震研究所の教授。背が低く腹が出ていて、最初に出会ったときは薄い色つきメガネにサーモンピンクのジャケットと、非常に怪しい。

  • 面白かったけれど、マサイ族の息子とかレズビアンとか元刑事がヤクザに身を寄せているとか話を広げられそうな要素をたくさん入れているのにあまり活きていなくて惜しい気がした。科学技術的な描写はこの作者の持ち味なのかも。

  • 横溝正史ミステリ大賞受賞作ですが、ミステリ要素よりもエンタメ性を感じた。
    初版は平成二十二年九月、何度も確認。震災前に書かれているが、どうしてもよぎりました。

  • 第30回横溝正史ミステリ大賞受賞作伊予原新氏の「お台場アイランドベイビー」を読了。横溝正史ミステリ大賞は角川がテレ東と組んで作った新人文学賞なのだが、残念ながら選考基準がユニークすぎるのか賞自体の知名度が低すぎるのか、過去の受賞者でのちのち大きく世に出た作家のいないちょっとマイナー賞である。逆に考えると埋もれている面白い作家を探すというところでは役にたつ賞でもあるが。

    お話はお台場付近を震源とする地震で東京は崩壊、都内のそこかしこに危険地帯が出来スラム化しているて、震源のお台場も液状化で崩壊し封鎖されててしまっている街がぐちゃぐちゃの街が舞台だ。そんな中、元刑事で今はヤクザの手伝いをしている巽丑寅(たつみうしとら)は動物の気持ちがわかるという少年・丈太と出会う。丈太に数年前病気で亡くした息子を重ねて見ている巽は、別の組のヤクザに追われている丈太を助けたことをきっかけに巨大な陰謀に立ち向かうことになるといったものだ。

    ネタバレにならぬようミステリーの肝の部分には触れないが、元刑事の巽が権謀術数を駆使する震災後の政治家と組んだ闇組織のたくらみを暴いていく筋書きの中で封鎖されたはずのお台場でみつかる少年少女がなぞを解くカギになっている。

    作品自体の質というと、不必要な人物設定とか震災後なはずなのにこのシーンはないよなといったちょっとひっかかるところは散見されるが(実は本作品は東北大地震前に書かれているのでそういう意味では仕方ないのかもしれないが)、なかなかの求心力をもって読み手を引っ張てくれる文章で構成された高作品だとおもった。

    で、この作者が化けているか?というとこの本が2010年発効なのですでに7年たっており数作出しているようなので、どうだろう。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻。博士課程修了後、大学勤務を経てからの作家デビューで各作品ではその理系地知識が生かされている感じなのでひょっとしたらひょっとするかも。。

    そんな不必要に力を持ちすぎ、自分の力を過信しすぎてしまった政治家が暗躍するも最後には粛清されるという近未来小説を読むBGMに選んだのがLee Ritenourの"Captain Fingers"。今聞いてもキレがいい。メンバーがメンバーだからね。
    https://www.youtube.com/watch?v=Fb2ZvknNzjQ

  • 3月-3。3.0点。
    東京都に大震災があり、お台場は封鎖。
    都内に、無国籍子供たちがどこからか頻発に現れる。
    元刑事と無国籍子供の一人が、偶然知り合い事件に巻き込まれていく。
    絶大な権力を持つ、都知事とお台場との関係。。。
    途中、読みにくい部分もあったが、新人にしては良い出来だと思う。
    元刑事は、非常に良い味を出していた。

  • 東京を壊滅寸前まで追いやった大震災から4年後、息子を喪った刑事くずれのヤクザ巽丑寅は、不思議な魅力を持った少年、丈太と出会う。彼の背後に浮かび上がるいくつもの謎―消えていく子供たち、埋蔵金伝説、姿なきアナーキスト、不気味に姿を変えつつあるこの街―すべての鍵は封鎖された「島」、お台場に―!?(「BOOK」データベースより)

    イベントがらみで読んだという経緯は抜きにして、退屈はせず面白く読みました。
    ただ私にとっては「横溝賞史上最も泣けるミステリ!!」ではありませんでした。
    タイアップのせいで、

著者プロフィール

1972年、大阪府生まれ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、『お台場アイランドベイビー』で第30回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。19年、『月まで三キロ』で第38回新田次郎文学賞を受賞。20年刊の『八月の銀の雪』が第164回直木三十五賞候補、第34回山本周五郎賞候補となり、2021年本屋大賞で6位に入賞する。近著に『オオルリ流星群』がある。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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