- Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048741736
感想・レビュー・書評
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登場する7人は何となく生き辛そうだ。
人との繋がりは関係が深くなればなるほどに絡まりそのうち煩わしさを覚える。
でも面倒だとちょん切ってしまわずああでもないこうでもないとのた打っているうちにふっと解けるときがくる。
その時やっと大切なものだと気付くのかもしれない。
本書で描かれるその瞬間がとても気持ち良いのだ。
第7話「ひかりを」が一等好き。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
それぞれの人生を歩みながら、お互いに絡まり合い、それぞれが胸に抱く悩みや葛藤と向き合う連作短編集。
視点が切り替わるごとに、普段相手の見えている部分なんてその人のごく一面でしかないんだなあと実感するお話ばかりだった。
ミステリアスに見えていても実際は感情を表に出すのが苦手なだけだったり、自分が見えている側面だけで人を判断しちゃいけないな。 -
どこかしらで関わりがある登場人物たちをそれぞれの視点で読めるので面白いです。タイトル通り複雑な関係が絡みあって各々の考え方があっていい。
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千早茜さんの連作短編集。
一つ一つの話で生きることを考えさせられる。
特に最後の話は、最初の短編で実に飄々と自分を持っていそうに感じた女性が、本当は生きることに不器用で、そんな中、必死に生き抜いて人生の最後を迎える老人との触れ合いが描かれている。海の中のナマコやヒトデの生き様も含め、静かな元気をもらえるような作品だった。 -
短編短編が、登場人物によって繋がっていく
最後の医療の話が好きかな〜
死の価値観は本人と家族ですら違う
z -
からまりあう連作短編集。バランスのとり方って難しい。
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短編がそれぞれ絡まって一つの物語が出来上がっている。
視点を変えてそれぞれの過去、思いが上手いことつながっていて面白かった。 -
短編全部が複雑に絡み合っていることから、千早さんの発想に改めて驚いた。
私は田村に似ている部分があったので、すごく共感しながら、時に涙しながら読んだ。そして田村の周囲にいる人間も私の友達によくいるタイプが多く、彼らはそういうことを考えていたのだなあと知ることができた。特に華奈子の「誰にでも優しくできるのは、誰にも興味がないから」という言葉にもずしりと来るものがあった。
大原さんの存在も印象的だった。金魚を殺めたと言う蒼真や葛月への救い方がとても温かいものだった。私も葛月のように人の命とかそういう類いのことをあれこれと考え、自分の意見を持つタイプだ。だからこそ、葛月の元恋人の発言に葛月と共に傷ついた。
あれこれと書いてしまったがまとめると、登場人物全員に対し、「もっと知りたい。あなたのことをもっと教えて。」と思える作品だった。千早さんの文章も『男ともだち』からずっと好きなので、これからも読みたいと思う。新作の短編集も楽しみだ。 -
己を分かったようなつもりで日常を過ごしていても、私たちはどれだけ自分を覗き、正直に振舞っているのだろう。千早さんの凛とした、でも柔らい文章の中で足掻き、装い、振舞う人物たちの心の底の寂しさが、最後は素敵に見えて頁を閉じる。誰かと関わりが欲しい。肌ざわり、温もり、関心、存在、どれも本当は愛おしい。でも自分に自信が持てず、他者との対立や拒否が怖くて、大丈夫と強がる。無関心を装ったり、自己完結してしまう。からまってもいいから、誰かと一緒にいたい。深く呼吸をして、まずは自分と繋がりたい。見える風景が変わるかも。
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「君も学校や社会の中の無数の人間のひとりだ。もちろん、私も。この広い砂浜の砂のひとつぶみたいなものだよ。わかるはずがないんだよ、私たちには。自分がどうなるかも、自分が何であるかも。だから、私たちは祈るしかない。命が大切であって欲しいと願うしかない。でもね、君はこうして星の砂に出会えた。きれいだって思えただろう。小さな痛みも死も知ることができた。今はまだ何が正しいかわからなくても、君の胸は痛んだ。それが大切なのだと、私は思うよ」
(P.188)
花は咲く。人は踊る。たとえそこに歪んだ想いがあったとしても、偽の美しさだとしても、偶然、誰かの心を癒すこともあるかもしれない。
これからもわたしは鮮やかに笑って、踊り続けるのだろう。誰よりも優雅に。
わたしはそんなわたしが好きなのだから。
(P.231)