ばんば憑き

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048741750

作品紹介・あらすじ

湯治旅の帰途、若夫婦が雨で足止めになった老女との相部屋を引き受けた。不機嫌な若妻をよそに、世話を焼く婿養子の夫に老女が語り出したのは、五十年前の忌まわしい出来事だった…。表題作「ばんば憑き」のほか、『日暮らし』の政五郎親分とおでこが謎を解き明かす「お文の影」、『あんじゅう』の青野利一郎と悪童三人組が奮闘する「討債鬼」など、宮部みゆきの江戸物を縦断する傑作全六編。

感想・レビュー・書評

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  • 坊主の壺
    お文の影
    博打眼
    討債鬼
    ばんば憑き
    野槌の墓の 六編からなる。
    ここではお文の影を〜

    いつの時代も人間の煩悩の怖さ
    幽霊より生きてる人間の恨み辛み嫉妬、怨念の方が怖い。時代が変わろうが人間そのものに進歩はない
    貪瞋痴慢疑が本質として持っている、
    そして犠牲者はいつも弱いもの、小さな子供。

    昔は子ができない時、
    もらい子をして、その結果子が授かるという言い伝えで子をもらう、哀れなのは
    それでも子ができず
    外腹にできた時の悲惨さ。そういう話で、食べるには困らない形で元の嫁、子が出される
    何が起こるかというと
    その恨み辛みが子供にあたる、折檻、火箸で焼く
    そして〜
    可哀想で読むに耐えない、
    現代のように子供がなくていいという選択肢はないところに不幸がある。

    ここで懐かしい政五郎親分
    あっおでこ「三太郎」も登場。

    左次郎と、吉三は
    お文の影に〜
    一緒に笹舟に乗せる
    本文より
    「心配せんでいい。すぐお文に会えるよ、」

    「これをあげよう」
    小さな紙人形のお姫様だった
    「ひとつはお文の、ひとつはお前のだ。これでまた
    仲良くお遊び」
    このくだりは泣けて、泣けて涙が止まらなかった。
    宮部みゆきの時代物は特に心がある、情けがある。




  • 久しぶりに読みました。人の心に巣喰う「悪」を描くのが本当に上手ですね。読んでいて、人の世が怖くなったりもします。私も、人生の苦難に知恵と勇気で立ち向かわなければ…‼︎ と思いますが、今のところ、頭を低くしてやり過ごすやり方で生きてます。

  • 短編が6話で成り立つお話です。

    1、坊主の壺
    2、お文の影
    3、博打眼
    4、討債鬼
    5、ばんば憑き
    6、野槌の墓

    おのおの短いストーリーですが、何度も何度も読み返したくなる深い意味が込められています。

    坊主の壺なんかは、いまのコロナの状態を追い払って欲しいと思う気持ちの私たちにはもってこいのストーリーです。

    宮部みゆきさんのストーリーは、私たち一般の人達の生活の中へ、すんなりとハマるような気がして、スルスルとストーリーの中に引き込まれていきます。

  • 宮部さんの江戸ものには、時代は違えど、そこここに人々の営みや心のごく当たり前の在り様が丁寧に描かれます。

    こうありたい、あれが手に欲しいと。
    でも理不尽が身近について回るのが世の常。

    頑張れば必ず報われる。そう信じたいもので、精一杯生きることで、結果も手に入れられれば一番嬉しいのですが、哀しいかな。果実が手に入らないことの方が多いのかもしれません。

    人々の心のにある温かみや賢明さと同時に、狡さや傲慢さや弱さもあるのが人間。恨みもつらみも、決して他人事ではないと、登場人物たちが交錯して織りなす短編集に世の常を感じます。

    6編のなかには、以前読んだ『日暮らし』に登場する政五郎親分とおでこが再登場したり、『あんじゅう』の青野先生と三人組が奮闘して、親しさを感じたり、宮部ファンならではの愉しさも味わえました。

    ぞくぞくするものもあって、良かったのですが、やはり時代物は長編の方が好みです。
    そろそろ三島屋シリーズの続きも読みたいな。

  • 江戸の下町を舞台に、怪談めいた不思議な人情話6篇。

    一つ多い影の正体を探す「お文の影」には、ぼんくらシリーズでおなじみの政五郎とおでこちゃんが出てきて、政五郎の大親分でおでこに大量の昔の捕物話を語ったのが回向院の茂七親分なんだねー。
    「討債鬼」で、討債鬼が憑いていると殺されそうになる信太郎を助けるために奔走する手習所の青野先生や行然坊も、「あんじゅう」以前のお話で、宮部江戸ワールドが広がりました。

    その他の、掛け軸の壺の絵に坊主が見えたことで、疫病を避けられる聖の力を受け継ぐ「坊主の壺」
    飢えた心からできた化け物博打眼を狛犬と犬張り子さんたちと退治する「博打眼」
    化け猫お玉と、人を殺めた記憶のために化け物となった木槌を成仏させる「野槌の墓」

    どれも人の心の弱く醜く恐ろしい部分に付け入るような物の怪が出てきてぞっとするけど、最終的には慰められるお話になっています。
    怖いだけじゃなくて味わい深いいいお話しばかり。

    でも、表題作の「ばんば憑き」はなぁ。
    殺められた者の魂を呼び出して、殺めた者の体に宿らせることを、とある土地の言葉で「ばんば憑き」というそうで。
    入り婿で道具のように扱われる立場の佐一郎が、旅中の宿で出会った老女の昔語りを聞くのですが、最後の佐一郎の思いが怖い。
    切ないが怖いよー。

  • 宮部みゆきさんの時代物短編集。
    怖くて切なくて不思議で楽しいストーリー。
    なぜこの人は時代物だとこんなに面白いのだろうか。

  • 最新刊の「きたきた捕物帖」が少し物足りなく感じたので、宮部先生の時代ものを再読。登場人物のキャラクターが一人一人手に取るように身近に感じられる大好きな作品。

  • 時代物の中・短編集。基本的に切ない話が多かった気がしますが、最後には救いがありますし、切ない中にも微笑ましい部分もあり、一気に読みました。特に登場する子供達が皆魅力的で印象に残りました。

  • 時代物だけど、面白い。引き込まれてしまう。
    日本人の霊を恐れる気持ち、自然を敬い、恐れる気持ち、素朴な生活や慣習など思い出したり、感じたり、歴史と市井の庶民の生き方を感じることができた。宮部みゆきさん、素晴らしい作家。

  • 6編の怪奇譚。
    表題作の「ばんば憑き」は大店に婿入りして肩身の狭い暮らしをする男が似たような境遇かと思われる旅先で出会った老女の不思議な身の上話を聞くこととなる。
    死者の魂を殺害者の身体に埋め込み、死から蘇る「ばんば憑き」という風習があると。
    男は話を聞いたあとに自分の窮屈な人生を感じ、これからは自分の思ったような歩き方をしてみるかという思いになる。定められた変えようのないと思い込んでいた人生も見方を変えて腹をくくれば景色が変わる。
    「野槌の墓」
    古い道具の類が化けると付喪神(つくもがみ)となる。
    けれどある悲しい過去を持つ木槌が成仏できずに人を襲っている。そのような化け物にしてしまったのは人間の非道であり被害者とも言える道具の悲しさが哀れ。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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