日露外交

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048837767

作品紹介・あらすじ

1991年、ソ連崩壊。国家的陰謀の内幕やKGBの変遷のルポ、関係者の証言で、世界を震撼させた帝国解体の真実に肉迫。その後劇的な変化を遂げた日露関係、日本外交が抱える根深い闇を追う。

感想・レビュー・書評

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  • 2002年刊。著者は産経新聞ロシア支局長兼論説委員。

     本書刊行はソ連崩壊から約10年。その時期までの約10年間の日露外交(北方領土回復交渉が中心)回顧検証する一方、10年を経て内実暴露が進むソ連崩壊過程と、ロシアを含む21世紀旧ソ連各国の現状を解説する書である。

     ソ連崩壊過程はまぁそれなり。正直読み飛ばしてもいいレベル。
     
     が、少し古いものの、21世紀を迎える旧ソ連各国の模様は流石現地支局長だけあって詳しい。ウクライナやロシアムスリム、グルジア(CIS最貧国、スターリンとシュワルナゼの故国)など現代の問題の萌芽も垣間見することが可能である。

     さて、日ロ間の懸案たる北方領土に関し、「4島一括返還」と「2島返還・2島主権確認」(鈴木・佐藤ライン)との対立がある。
     この点、著者がことさら強調する4島一括返還は道筋が見えない印象が強い。仮に交渉の落としどころを4島一括とするなら、千島全島の主権(樺太でもいいが)に関する理論武装(ただし、説得力を持たせることはほぼ不可能)に加え、経済力を含めた力関係の変化・好機を逃さぬ機敏さ(交渉の事前準備とシュミレート)、好機を設定するための人的パイプの強化等の長期的戦略といった全く違うアプローチが要るはず。
     しかし、そういう提言は皆無であり、実現可能性を等閑視した声高主張に見える。

     当然だが、4島主権をいくら精緻に理論武装しても多分意味がない。理論武装など屁とも思っていなからだ。
     他方、経済面で余力の乏しい日本がロシアを凌駕する軍事レベルを強化・保持する想定は、際限なき財政負担になることが容易に予想でき、現実的ではない。
     つまり本書でいうアプローチの見えない論法は、教条主義的で、対立のため対立構図の設定でしかないのだろう(これは、産〇があちこちで使っている批判論法をそのまま返し得るレベルだ)。


     なお、ロシア全体の人口減問題(日本と同レベル)、CISからのロシア民族の帰郷問題、移民政策(特に極東における中国人移民の急増)には意識をすべし。

  •  ソ連の崩壊とそれから10年間のロシアを記した本である。筆者はサンケイ新聞記者としてモスクワに駐在しており、現地ならではの視点にあふれている。
     第一章は、佐藤優の活躍した頃の日露外交を記したものである。北方領土返還論に関しては筆者は佐藤優とは異なる意見を持っており、佐藤優に厳しい態度を見せるものの、経緯としては佐藤優の記した本と変わりなく、むしろ佐藤本の方が内部に精通している分おもしろい。
     本書は、第二章が主であろう。ソ連崩壊後を記している。クーデタの主役達や、地方、軍部、科学者、宗教、経済、など新生ロシアをさまざまな面から描写している。発行はもう12年も前になるが、今なおロシアは同じ問題に苦しんでいるように見える。
     ロシアの今を知るには、本書から読み始めると全体が見渡せていいと思う。

  • 日露外交だけでなく、ロシア(ソ連)の歴史なども書いてあり面白かった。

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著者プロフィール

産経新聞論説委員。1949年、埼玉県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。産経新聞社に入社後、水戸支局、社会部、外信部を経てテヘラン特派員、モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長、正論調査室長などを歴任。常務取締役東京編集局長、取締役副社長大阪代表、論説顧問等を経て、2022年から現職。ソ連とロシアに特派員として通算約8年半在住し、一連のソ連・東欧報道でボーン・上田記念国際記者賞(89年)、「ソ連、共産党独裁を放棄へ」のスクープで日本新聞協会賞(90年)を受賞。著書に『スターリン秘録』(扶桑社文庫)、『日露外交』(角川書店)などがある。

「2022年 『「悪の枢軸」ロシア・中国の正体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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