読まず嫌い。

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048850278

感想・レビュー・書評

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  • 「はじめに」でつらつらと述べられる、「ミステリが嫌いだった。」「SF小説が嫌いだった。」「時代小説が嫌いだった。」「歴史小説が嫌いだった。」「伝奇小説は(略)食傷した。」という嫌い嫌いのオンパレードに、ちょっと愉快な気持ちになる。
    同意できない部分もあるけれど、「純文学も得意ではなかった。(略)名作文学とは人生観を開陳してくる小説なのか。だったらめんどくさい。そういう人生観を若者に読ませようとした編者の教育的配慮を退屈に感じた。」「青春っぽい文学が苦手だった。理由は気恥ずかしいから。」の辺りは力強く頷かざるを得ない。「青春」に関しては、小学生から高校生の辺りまでは正にそういう気持ちだった。もう(作者の言葉を借りれば)和解していますが。
    最後の方で著者は、カフカの『変身』に対する「現代人の不安と孤独をあらわにした作品」という紹介を目にした時のガッカリ感をわかりやすく言葉にしてくれていて、「そういうことだったのか!私!」という気持ちになった。というわけで、読まず嫌いだった『変身』もいずれ読んでみたいと思う。
    ところで、表紙のデザインやペンネームから、著者はてっきり女性だと思いきや、男性だった。ギムナジウムの件であれっやっぱり女性!?と思ったが男性だった。『文藝ガーリッシュ』も読んでみたい。

  • 読むべき本としての「名作」。そんな義務や強制を強いる、重しのついた「名作」。そこには誤解や無理解も潜んでいよう。ともかく、そんな「名作」とどう付き合っていったら良いのか?をめぐる、体験的読書論。
    文学全集なるものに挑戦してみたくなった。

  •  国語が嫌いで、そこで扱われるような古典などを読まず嫌いし、読書が好きだからこそ自分が好みそうな本以外の本を読まず嫌いしている傾向が私にはあるので、本作はとても心に響いた。名作だって、無理にそこから何かを学ぼうとかせずに気楽に楽しめばいい、という著者の読み方に勇気づけられる。読まず嫌い本を読んだ結果、それを好きだと思うかどうかは分からないけど、その時得た感想はその本でしか得られないものである、という著者の考えに読書欲をくすぐられると同時に、読書って刺激的だなぁと思った。

  • ひょんなことでお名前を知った著者。歯に衣着せない物言いで、本を登場させては凄まじい勢いでバッサバサと捌いていく本文から、ずいぶんスピード感と逞しさのある女性だと思いきやまさか男性だったとは。大変失礼しました。
    著名な作品を語っていたかと思えば派生して別の作品が登場し、内容から考察まで深入りするのかなと思えばヒラリと次へいく、という掴みどころのない印象。終始さばけた口語調なので肩を張らずに読める。情報量がすさまじく、マシンガントークを聞いているが如く集中力を要した。多くの本が登場するものの、ブックリストとしての使い方は私には出来そうになく、こうゆう読み方をしなさいと指南してくれているわけでもない。

    この本は「読まず嫌い」という題名にピンと来た人が著者と一緒に共感する、そしてそういった本との付き合い方について再確認する作品だと思った。本に関しては雑食でありたいとは思いつつも「読まず嫌い」となっている本(作家?)は多数。
    すぐとは言わず、いつか手に取れる日がくるよう広い受け皿を用意し、手に取った時は型にはめず自分の感じた印象を受け止め、他者の印象も知る姿勢を持っていたいと思う。

  • 読まず嫌い、あるあると思い、手に取りました。特に『名作』と呼ばれる本ほど私も読んでいないです。著者は<さまざまな名作小説との和解の記録>と書いていますが、確かに「和解」が必要な本が私にはまだまだ沢山あります。今が読み時なのかもしれません。きっと若い時にはわからなかったことが今なら分かるかも^^

  • 千野帽子は「ユリイカ」の猫特集を読んで以来気になっていたので読んでみた。
    私もミステリなど読まず嫌いなところあるので、隠れた名作を紹介してくれるブックガイドかな、と期待して。
    読み始めてすぐ「これはロッジの『交換教授』だな」、と思ったらそのまま出てきて嬉しくなった。
    でも紹介されている本が古典なのはいいけど、完全にネタバレなのはがっかり。
    文章はかなり面白く、読んでると「おおっ、これは読まねば」という気持ちになるのだけど、微に入り細に入り紹介してあって「ちょっとちょっと」と思ってたら、最後まで行っちゃうのね。まあ、『テルレス』や『飛ぶ教室』など読んでた本はいいんだけど、『モルグ街』みたいにもうどこでもネタバレしちゃってるのもいいと思うんだけど、これから読もうと思っていた本はすっかり読む気をなくしてしまった。紹介されなければ知らなかった本は仕方ないけどね。
    昔頑張って『静かなるドン』や『いいなづけ』を読んだことを思い出した。
    さすがに『静かなるドン』はもう読まないと思うけど、また古典の大作を読んでみたいな、という気持ちになった。
    この著者、ただの文学好きが高じて書評やってるわけではなく、きちんとアカデミックな経験も積んだ人だというのが伝わってきたので、また読んでみようと思う。但し、これから読もうと思ってる本の紹介は飛ばすことにする。

  • <b> 名作を読むということは、「ものすごくおもしろいものを、一生知らずに過ごしてしまうかもしれない」とつねに思い起こすこと。自分の現在の好き嫌いに閉じこめられそうになったとき、そこから逃げ出せるようにしておくこと。間違う危険のある場所に出て、間違う権利を回復すること。<br>
     だから名作を読む。明るい独房を出て、外の真っ暗闇を歩く。</b><br>
    (P.227)

  • いくつか読んでみよう。

著者プロフィール

日曜文筆家。女性誌・文芸誌・新聞などにエッセイ、書評を寄稿。著書に『人はなぜ物語を求めるのか』『物語は人生を救うのか』(いずれもちくまプリマー新書)、『俳句いきなり入門』(NHK出版新書)、『読まず嫌い。』(角川書店)、『文藝ガーリッシュ』シリーズ(2冊、河出書房新社)、『文學少女の友』(青土社)、編著『 オリンピック』『富士山』『夏休み』(いずれも角川文庫)、『ロボッチイヌ 獅子文六短篇集モダンボーイ篇』(ちくま文庫)。
自選一句「墓石にジッパーがある開けて洗う」

「2021年 『東京マッハ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

千野帽子の作品

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