ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (2) (電撃文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048869881

作品紹介・あらすじ

実戦経験を積むため、北域へと遠征することになる帝国騎士イクタたち。目指すは、カトヴァーナ帝国九百年の歴史において、一度も外敵の侵入を許したことのない大アラファトラ山脈に守られた軍事拠点、北域鎮台。野盗の相手と山岳民族「シナーク族」の監視以外は総じて暇だと噂される、帝国最北の基地だった。しかし、どこか訓練気分の彼らを待ち受けていたものは、想像以上に過酷で壮絶な-そう、本物の戦場だった…。

感想・レビュー・書評

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  • (Ⅰ)実地訓練のため北域鎮台で山岳民族のシナークと対するが、善悪で言えば一方的にカトヴァーナが悪。また、シナークらしくない言動にイクタは違和感を感じる。
    (Ⅱ)シナークの指導者ナナク・ダルの大義。一介の兵士カンナ・テマリのささやかな望み。
    (Ⅲ)イクタなら存在するだけで害悪にしかならないような存在は(殺すのではなく)排除することも可能やと思うけど彼はそうしない。そのことの危険を知っているからかもしれない。でもアレを早めに排除してたら話し合いでなんとかできたかもしれないのになあ、とも思う。まあ、ストーリーにならなくなるけど。

    ■簡単なメモ

    /一行目:そこは地上より少しだけ天に近く、あるいは死に近い。
    /イクタたちが実地訓練のため北域鎮台に赴く。
    /山岳民族のシナーク族と対するが、善悪で言えば一方的にカトヴァーナが悪。イクタやヤトリはどうする?
    /戦争を聖なるものとすることがないシナーク族が聖戦という言葉を使ったことからイクタは外から来てシナーク族にそれを吹き込んだ第三者の影を見る。当然、キオカか?
    /数の利は圧倒的にカトヴァーナだが、地の利は圧倒的にシナークにあり、しかもカトヴァーナの司令官はシナークをいたぶって遊ぶ玩具くらいに思い込んで閑職の憂さ晴らしのため嫌がらせを続けていたとてつもなく無能な男。イクタたちだけは勝ち続けているが各方面で危険な状況。

    ■カトヴァーナ帝国についての単語集

    【アゴラ】マッチョのアゴラと記述される士官候補生。
    【アナライ・カーン】史上初の「科学者」。人造精霊を作った。教団からは瀆神者扱いされている。《自然物には全て「ままならなさ」があるとおもわんか》第一巻p.334。さまざまを総称した「超古代文明論」として追究する。
    【アナライの匣】アナライの弟子たちがいったん研究成果を秘匿するためのなにか。
    【アルシャンクルト・キトラ・カトヴァンマニニク】皇帝。四十代の壮年のはずだが枯れ木を思わせる。
    【アルデラ教】カトヴァーナ帝国の国教。技術立国を標榜するキオカですら国教ではないものの八割以上がアルデラ教徒。また、「ラ・サイア・アルデラミン」はアルデラ教総本山と同義の宗教国家でもある。国家間の争いにはノータッチの中立的存在のはずだが?
    【イクタ・ソローク】主人公。後に「常怠常勝の智将」と呼ばれる。パートナーは光精霊のクス。本当の名前はイクタ・サンクレイ。普段は怠け者で女好きのナンパ野郎で食いしん坊で呑兵衛でおちゃらけて飄々としているが必要があれば現実的で残酷にもなる。アナライの弟子の一人。アナライいわく《わしの唱えた「科学」という方法を踏襲するのみでなく、独特の哲学に昇華して実践しおった。》第一巻p.18。《僕は徒労が大嫌いで、その分、自分が怠けるための適切な努力を惜しまない》第一巻p.42。「バダ」という人物の息子? なりたくないもののトップ3は貴族、軍人、英雄だったが一度に全部を得てしまった。「子供っぽさ」「未熟さ」「若さゆえの過ち」には不思議と寛容。《イクタ・ソロークの部隊はいつだって楽に戦って楽に勝つ! 常怠常勝、怠惰上等! 僕に付いてきた奴には、ひとり残らず楽をさせてやるっ!》第一巻p.278。ヤン・ウェンリーの若い頃という感じやけど、もっと屈折してるしあれほど優しくはなく(ヤンも切り捨てるべきことは平気で切り捨てはするけど)、普段は飄々としているけど以外に不安定で脆そうだ。おそらくはたった一度の敗戦のために勝利を重ねていく。《危うい状況に追い込まれるほど、イクタは自分で判断して行動するための権利と責任を固守しようとする。》第二巻p.165
    【イソン・ホー】叩き上げの帝国大尉。
    【エアシューター/風銃】風精霊の空気圧縮能力により鉛玉を撃ち出す現代兵士の主力武装。トルウェイとマシューは難破した船から脱出するときにも抱えて持ち出した。
    【女たらし】イクタは女たらしだが《それは誤解だよ。むしろ僕の方こそが、この世の全ての年輩女性に魅了されているんだ》第二巻p.102
    【科学】イクタの「科学」は《合理的で無駄のない、結果として大いに怠けられる素敵な考え方。それが科学の本質。》第一巻p.278
    【カトヴァーナ帝国】教団がある。暑い国のようだ。砂漠地帯? 人口二千万人。
    【カラ・カルム/亡霊部隊】どこぞの国の部隊。戦死してはいけない。
    【カンナ・テマリ】女性兵士。ポニーテール。パートナーは風精霊タブ。本好きらしく兵士共有の本棚を作っていた。
    【キオカ共和国】技術立国を標榜する。カトヴァーナ帝国とは戦争状態。
    【宮殿】王宮。三つの建物がある。黄砂堂、新緑堂、白聖堂。
    【教官】士官学校の鬼教官たちは自由意志や個人の尊厳といった幻想を粉々に砕く。
    【教団】アルデラ教。「全ての論理の根底には神がいなければならない」という教義を持つ。それゆえにアナライを異端とした。
    【クス】イクタのパートナーである光精霊。
    【黄砂堂】王宮にある建物のひとつ。国外からの客と会う。
    【光虫/こうちゅう】炎も熱も伴わず光を出す虫。
    【高等士官試験】幹部候補生選出試験。
    【御三家】「忠義の御三家」と呼ばれる。かつての群雄割拠時代にイグセム、レミオン、ユルグスの三家が中央集権を成立させるために皇帝をまつりあげた。
    【魂石/こんせき】精霊の意志の源。これがあれば教会で復活できる。
    【サザルーフ】センパ・サザルーフ。中尉。北域鎮台第一連隊第九光照兵中隊隊長。パートナーは光精霊のキィ。歓迎会でイクタに話しかけてきた。一見イクタと同様のやる気のないタイプに見えるがかなりの世話焼き。
    【サリハ・レミオン】トルウェイの長兄。イクタにバカにされ根に持っている。
    【三人組】マッチョのアゴラ、出っ歯のコーサラ、ギョロ目のニーラ。高等士官学校でなにかとイクタに嫌がらせをしかけてくるが相手にしてもらえない。
    【シア】ヤトリのパートナーである火精霊。
    【シナーク族】カトヴァーナ北方の山岳民族。女系社会。アルデラ教は信じておらず、四大精霊に対する感謝と敬愛がある。もともとカトヴァーナの支配にに反発していたがパートナーの精霊を奪ったサザルーフを憎んでいる状態。
    【シャミーユ・キトラ・カトヴァンマニニク】カトヴァーナ帝国第三皇女。幼いが先を見通し国を救おうとしている。高等士官試験に向かう船が遭難しイクタに救われた。《余は生きて帰らねばならぬ……。大樹が腐り倒れる瞬間を一秒でも早めるために、なんとしても戻らねばならぬ……。》第一巻p.119。《敗戦で国を救う。》第一巻p.327。後に「カトヴァーナ帝国最後の皇女」と呼ばれる。
    【人材】何よりも重要な人材を政策の尻拭いで使い捨てているような帝国に未来はないと言える。わかっていても、軍人は従うしかない。イクタもやがて軍人になるのだろうがどう対処するのか?
    【新緑堂】王宮にある建物のひとつ。臣下の奏上を聞く。
    【スーラ・ミットカリフ】高等士官学校でイクタの部隊に配属された曹長。母親のアミシアは以前イクタの恋人だったようだ。
    【スシュラフ・レミオン】トルウェイの次兄。寡黙で根に持つタイプではない。
    【精霊】身近にいる。四大精霊としては風、水、火、光がいる。
    【戦争】イクタ《戦争ってのは往々にして失敗した外交の代償なんですからね》第二巻p.26
    【センパ・サザルーフ】→サザルーフ
    【タムツークツク・サフィーダ】北域鎮台司令長官。
    【帝国騎士】シャミーユを救った褒章としてイクタ、ヤトリ、トルウェイ、ハロ、マシューの誤人に与えられた称号。至上の栄誉であり、一代限りだが貴族の位置づけとなる。平民が貴族になる唯一の方法。ついでに高等士官試験合格も得た。
    【デインクーン・ハルグンスカ】→ハルグンスカ
    【テトジリチ家】マシューの実家。帝国西部エボドルク州駐留部隊を預かる家柄。
    【天空兵部隊】キオカ軍の新兵科。気球に乗った兵士によって編成される。地上軍しかないカトヴァーナにとっては脅威。
    【トァック】ユスクシラム・トァック。北域鎮台司令長官補佐。体調不良のようで顔色が悪い。実質的に鎮台の実務を全て切り盛りしている苦労人。
    【東域】キオカの辺境領土だったが帝国が戦勝で入手、開拓を試みるも大失敗した。水害が多い土地。
    【トルウェイ・レミオン】帝立エミル高等学校卒業生。パートナーは風精霊のサフィ。旧軍閥のレミオン家の三男。美形。どうやらヤトリに憧れているようだ。他者を愛称で呼びたがる。マシューは「マーくん」でイクタは「イッくん」。風銃使い、それも狙撃手系。兄はサリハスラグとスシュラフ。
    【ナナク・ダル】シナーク史上最年少の族長。パートナーは風精霊のヒシャ。
    【ナズナ】アナライの弟子。難しい話を噛み砕いて説明できる。
    【ネジフ・ハルルム】生丘軍第6シチ小隊指揮官。名将ではないが堅実。
    【白聖堂】王宮にある建物のひとつ。国家の功労者を称える。
    【バジン】アナライの弟子。
    【バダ・サンクレイ】キオカ戦役において「戦犯」とされた元大将。イクタの実の父。
    【発明】イクタによると《最低でも三つのものが必要不可欠だ。まず一つ目が、怠け心――何か辛い作業に行き当たった時、これをサボりたいなぁと思う自然な感情。続く二つ目が、問題意識――この作業の何がそんなに辛いんだろうと考える心。そして最後の三つ目が、前の二つを踏まえた上での想像力》第二巻p.106
    【ハルグンスカ】デインクーン・ハルグンスカ。北域鎮台第一連隊第二十二胸甲騎兵小隊隊長。縦にも横にもデカく声もデカい二十六歳のおっさん。清々しいほどの脳筋。パートナーは水精霊のニキ。歓迎会でヤトリに決闘を挑んだ。
    【ハローマ・ベッケル】通称「ハロ」。淡い水色の髪。パートナーは水精霊のミル。ミン・ミハエラ看護学校卒業。身長百七十六センチと長身。イルフ、ショーカ、エチリという弟たちがいる。日記をつけているようだ。
    【バンハタール】カトヴァーナ帝国首都。
    【北域鎮台】シナーク族居住地がある山岳地帯に睨みを効かすカトヴァーナ最北端の軍事拠点。天然の防壁、大アラファトラ山脈に護られけっこうヒマしており、主要な役目はシナーク族を見張ること。
    【氷菓】カトヴァーナにとってはとても希少で魅力的なスイーツ。
    【不敗の近い】中央集権が成立し秩序維持のため一配下になるため自らの剣を返上しようとしたイグセムに対し皇帝が思いとどませようとし、二刀が敗れるまではとの条件付きでそれを受けた故事。
    【マシュー・テトジリチ】イクタやヤトリと同じシガル高等学校卒業生。パートナーは風精霊のツゥ。旧軍閥のテトジリチ家出身でその家柄に誇りを抱いているが格としてはイグセム家やレミオン家よりは低い。ヤトリやトルウェイをライバル視し、イクタにからかわれ続けている。ぽっちゃりした体系だがそれなりに動ける。風銃使い。《次はおれが勝つ。もし次がダメでも、次の次はおれが勝ってやる。……絶対にいつか、マシュー・テトジリチの本当の実力を見せてやる!》第一巻p.317
    【水精霊】カラカラのカトヴァーナにとっては重要な精霊。
    【ミルバキエ】アナライの弟子。極論好き。
    【ヤトリシノ・イグセム】通称「ヤトリ」。帝立シガル高等学校首席卒業の優秀な軍人。旧軍閥の名家イグセム家の一員。パートナーは火精霊のシア。
    【ユーカ・サンクレイ】イクタの母。今上がキオカから召し取った美女をバダに賜った。
    【ユスクシラム・トァック】→トァック
    【ヨルガ】アナライの弟子。算術に滅法強い。
    【ラ・サイア・アルデラミン】アルデラ教総本山と同義の宗教国家。
    【リカン】ハザーフ・リカン中将。東域鎮台(守備専用部隊と思われる)の司令長官。船の遭難で敵領土まで流された主人公たち一行を迎い入れた。人格者。東域での戦闘は負け戦だとわかっているが立場上撤退できず戦死するしかなかった。
    【良心】《思えばそれは、戦場で守るのがいちばん難しいもののひとつだった。》第二巻p.215

  • 1巻に続いて2巻もとても面白くて読みやすい。話にも入り込めてどんどん読み進めたくなります。

    戦争、戦略あり。主人公たちの活躍あり。いい感じの新キャラも出る。
    ただし展開は暗め、スカッとはしない。
    カンナ一等兵にデインクーン准尉、、、、

    頑張れ孤高の戦士マシュー。応援してる。

  • 8/10.
    第一巻より話は重い。戦争の惨めさがよく伝わる。

  • 図書館で借りたもの。ちょっと血なまぐさいかな。。。

  • 北側の戦闘の前編。
    今回はあんまり生田君が目立ってなかったな。
    名付きキャラの死亡率がたかすぎやわ。

  • 図書館で。二巻目。
    辺境の少数民族との抗争と鎮圧。
    地の利のある方がゲリラ戦においては圧倒的有利、という不利を兵力で補おうとしたけれども…という展開。
    上に立つ者がアホだと下っ端は大変。それでも将は守らないとイカンのだものなぁ… さらに大変。

    お姫様は結局イクタに親友と戦友を裏切ってでも自分に尽くせ、と言っている訳だけれども彼女にそれだけの度量があるのだろうかというのが非常に問題な所。今のところカリスマ性も見えないし、お荷物でしかない自分を弁えてる感はない訳じゃないけど。まあ12歳だし仕方ないのか?でも人一人の人生をもらおうというにはちと彼女の上に立つ器が見えてこなくてこりゃイクタじゃ無くても二つ返事でハイと返事は出来ないよなぁと思う感じ。

    アニメだとこの抗争が終わった辺りまでだったかしらん?続巻も楽しみ。

  • 北域鎮台譚。

     東部戦線での敗戦後に起きる、北方の少数民族シナーク族の反乱。
     一方、周辺の宗教国家とその前提たる精霊の意味を背景事情に据える。

     その上での直接的な描写は、帝国の国家としての質の低下、その原因としての支配・制御層の質の低下(一巻ラストの事情を具体化する)。
     結果、無為でしかない形で喪われる命(敵は元より味方も)。

     敗北を目標に据えさせられた軍人イクタ。ステロタイプ的な軍人の存在意義を正面から否定する物語を紡ごうとする著者は、戦死戦傷戦病の模様も逃げはしない。

     かように、軍隊とは戦いの自己増殖の危険を孕む組織。換言すれば、自らの存在意義を示すために、つまり仕事をする(作る)ために何をするのか、しかねない組織なのかを理解すれば、故に適切な統御と従わせるべきルールが要るということが腑に堕ちよう。

     怠惰かつ女誑しの軍人像を構築したのは、ステロタイプな軍人像の忌避というだけでなく、真面目な軍人の危うさと愚昧さを皮肉る意図すら看取できそうというのは、読み過ぎか。

  • おもしろ~!
    ほんとに血みどろだった

    ファンタジー軍記ものというか
    戦争ものかな

  • 姫様暗殺未遂事件から暫く.
    今度は慣例行事的な北部に赴任.
    そこで原住民の反乱に遭遇.
    しかしどうやら裏で糸を引いている集団がいるらしく….

    折角の新キャラのポニテちゃんが….
    あとわかりやすい正義感の男とか(イメージはムキムキモヒカン)
    ちょいわる上官殿とか.

    次回,更に過酷な戦場へ?

  • 相変わらずこちらが圧倒されるほどのボリュームですばらしい。ストーリー展開も申し分ない。

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著者プロフィール

2010年に「神と奴隷の誕生構文」(電撃文庫)でデビュー。「スメラギガタリ」シリーズ(メディアワークス文庫)、「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン」シリーズ(電撃文庫)を刊行。

「2023年 『七つの魔剣が支配するXII』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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