さよなら、君のいない海

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 38
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048921572

感想・レビュー・書評

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  • あとがきから読んだので、この本が一冬の物語らしいということは分かった。主人公の名前が出てこない事も。名前がないせいなのか、まるで掴めないキャラクターだなと思った。共感が一切できないし、物語も意味がよく分からない。

    主人公の背景が見えない。まず、主人公のお家が金持ちで家に強盗が入り両親が殺された事件が起こる。茫然自失とするなかで、決まっていた大学進学をあっさりとやめてしまう。

    有名大学に進学したと書いてあるだけで、学部も何もない。試験で1位を取ったという情報から試験(暗記)に強いというのは分かる。けれど、何を目指して大学に行くかという情報が一切ないし、得意科目もない。
    さらにいえば、両親との思い出話も出てこないあるのは『真っ暗な闇が心の中にある』という事だけ。もちろん、最初はそれでいいし『何も考えられない』というのも分かる。けど、これ最初から最後まで両親との思い出は一切出てこずただ『両親の死のシーン』だけが何度か繰り返される。両親が死んでショックなのはそれまでの様々な思い出が断ち切られるからだと思うけど、そういう『思い出』が一切ない主人公が怖い。

    確かに『両親が殺された』という事件は大きいけど、主人公が透明すぎて何でもありな状態になっている。
    おかげで、鎌倉に行って初めてするサーファーの腕を上げていき、料理の腕を上げていきという『万能キャラ』になっている。苦手なものは特に書かれてないし、好きなものもない。ただ、器用にいろんな事をこなす。

    最近、こういうキャラを見かけたような……と思ったら、フリーレンがこんな感じで『物語が進んでいきなり情報が追加される』。大まかなキャラ設定(フリーレンの場合はめんどくさがり)はしてあるけど、細かい設定はそのシーンに来るまで謎。

    この作品だと主人公のキャラ設定は『器用に何でもこなす』のと『パソコンが得意。プログラムが組める』という事ぐらい。でもこの主人公は『パソコンが好き』なわけではないと思う。『器用にこなせる事』の中にパソコンが入っている感じ。

    『器用にこなせる事』の中には『銃の扱い』までマスターするという、現実離れした能力まである。万能型もそこまでくると、気持ち悪い。

    前半がミキとイヌとの交流だったのに対して、後半は麻薬販売という『ヤバい世界』の話の説明が入って来る。これが詳しくてドン引きしてしまうが、主人公は『金のため』と平気で進んでいく。両親はこの主人公に倫理観というものを一切教えなかったのかと突っ込みたくなる。

    最初から未成年だけどアルコールを飲む時点で、倫理観狂ってるなと思ってたけど後半に行くほどぶっ飛んでいく。
    最終的には人を殺して、その人物が『両親を殺した組織の一旦』だと知るけど、こじつけすごいなと思いながら読んでしまった。



    ついでに言うなら、『日本に帰ってきたら安全』というのも……ん?と思ってしまう。日本にいたら銃の入手は難しいけど、他の殺し方は出来るし、個人情報を追うなら日本ほどガバガバの国もないだろう。
    ハワイはあんなに『危険』と言っておきながら、このグローバル社会で『日本にいたら安全』ってそれはそれで、平和ボケのような気がするのだけど。
    『日本まで追う意味はない』程度の稼ぎと殺しだったという事だろうか?

    最初から『親の敵(かたき)を討つ』というストーリーならまだ分かるけど、主人公にその気はないのに『知らんうちに敵を取っていた』って間抜けな感じにも思える。

    しかも、金が必要だからと『犯罪に手を染める』
    で、日本に戻ってきたら、子供が出来てるって……人を殺した手でわが子を抱くの?
    敵の組織からしたら、その子供と女を真っ先に主人公の目の前で殺すよね……と思ってしまった。なんか、最後まで『死んだと思っていた相棒が生きていた』とかファンタジーすぎて、気持ち悪いなぁと思ってしまった。



    彼女さんが別れ(犯罪に手を染めるので、主人公が一旦離れる)の時に「抱いて」というのも……男の夢。キモイ。としか、思えなかった。この時の子供が戻ってきたら出来てるっていう話。……うへぇぇ。吐きそう。

    ハードボイルドなモノが書きたかったんだなというのは分かる。麻薬の世界観もわかる。でも、主人公が空っぽで万能すぎる。

    という事で、もういいかなと思った。

  • sg

著者プロフィール

秀島 迅(ひでしま じん)青山学院大学経済学部卒。2015年、応募総数日本一の電撃小説大賞(KADOKAWA)から選出され、『さよなら、君のいない海』で単行本デビュー。小説家として文芸誌に執筆活動をしながら、芸能人や著名人のインタビュー、著述書、自伝などの執筆も行なっている。近著代表作は長編小説『その一秒先を信じて シロの篇/アカの篇』二作同時発売(講談社)。また、コピーライターや映像作家としての顔も持ち、企業CM制作のシナリオライティングなど、現在も月10本以上手掛けている。

「2022年 『クリエイターのための物語創作ノート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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