拝啓、十年後の君へ。 (メディアワークス文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
4.10
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本棚登録 : 432
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048922074

作品紹介・あらすじ

「タイムカプセル」によって繋がる迷える高校生6人の青春物語。

十年前に埋めたタイムカプセル。忘れていたのは、離ればなれになるなんて想像もしていなかった時に交わした将来の約束。そして一つの後悔。今更思い出しても取り戻しのつかない、幼い頃の恋心。
嫌いじゃないけどドキドキしない、そんな曖昧な恋愛関係に悩む千尋。部活から逃げ出した元サッカー少年の冬弥。定時制高校に通う不良少年の優。慣れないギャル生活で息苦しい美夏。家から出たくない引きこもりの時子。そして小学校の頃に喧嘩別れした少女を、今も想い続けている耀。
十年前に記した「今の自分」への手紙が、彼らの運命を少しずつ変えていく。

感想・レビュー・書評

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  • ああ、これはいい!
    最近お気に入りの青春物語作家の天沢さん。
    そんな天沢さんの本作は、青春物語として百点満点の出来だと思う。

    小1のクラスで書いた「十年後の自分への手紙」、いわゆるタイムカプセルが十年経って郵送で順繰りに送られていく展開。
    もうタイムカプセルなんて言う題材からして青春だなあと思う(笑)
    だって、その手紙にはある種の郷愁と想いが付いてくるもの。

    別々の6人を主人公にした短編連作なのだけど、ある話に別の話の主人公がちょこっと顔を出したりして少しずつ繋がっている遊び心のある構成。
    さらに最初の主人公と最後の主人公には特別の縁があり、ラストで二人が再会することで綺麗にお話の円環が閉じるのは、短編連作ならではのよくできた構成だと思う。

    物語はほとんどの場合、十年前に夢見た姿から現実は違っていて、夢を諦めようとしていたり、やりたいことを見つけられなかったり、勇気が出せず言いたいことも言えなかったり、引きこもってしまったりと、子供のころ想像していた姿とは全くかけ離れていて、胸が痛くなる現実だったりする。
    けれどそんな彼ら彼女らは様々なきっかけでその現実から少し前に歩き出そうとする。
    それは言ってみれば十年前の自分への今の自分の矜持だと思うのだ。
    あの頃の自分に胸を張って今の自分を見せられるか。
    たとえ、夢に届かなくても、素敵な大人になれていなくても、ちゃんと努力して後ろめたくない生き方をしていたいという、そんな想い。
    だから物語の終わりはどれもみんな清々しい。

    そんな中、一番目とラストの物語は少し趣が異なっている。
    なぜなら彼らの手紙には十年後の自分へのお願いが綴られているのだ。
    個人的にはこの二人の物語が一番好き。
    喧嘩別れしてしまって引っ越してしまった相手に互いに謝ってほしいと綴られた手紙。
    千尋が十年前のアキラ君の手紙に自分と同じ気持ちが書かれているのを知る場面には胸が熱くなった。
    同様にアキラが千尋がタイムカプセルを読んだ後に彼宛に書いた手紙で、同じ想いを綴り約束の大学の地で待っていると告げられた場面には心が震えた。
    いやもう、こんな手紙をもらったら自分ならとるものも取りあえず、その場所へ走り出してしまうだろう。
    そう強く思う。
    でも、アキラは逆に彼女に会うことを恐れてしまうのだ。
    なんてアホなのか。
    どうしてそんなにへたれなんだよ!
    でも友人や彼に好意を持っている女の子に背中を押されてようやく約束の場所に走り出した時、胸がドキドキした。
    夜の桜の木の下での二人の再会。
    はっきりと自分の気持ちに気づくアキラ。
    そして十年前の手紙のお願いは果たされるのだ。
    この幸福感がなんとも心地いい。
    いや、いいお話だった。

    心に刺さる言葉がいくつもある。
    「才能がなかったら、好きなこともやっちゃいけないんですか?」
    「君がやろうとしたことを、君自身が笑ってやるなよ」
    「ちひろちゃんはきっと、こやまがおかびじゅつだいにきます」
    「あの時よりもずっと上手になったはずなのに、あの時よりもいいものが描けている気がしません」
    「君に預けたコバルトブルーのクレヨンは。まだそこにありますか?」

    いやほんとに、これまで読んだ作者のお話の中ではこれが一番好き。
    ますますお気に入りになりそうだ。

  • すべての話が繋がっていて面白かった
    最初と最後の二人以外はその後どうなったのか気になる

  • 幼い頃を起点に皆がだんだん変わっていくのがすごかった

  • 6人の登場人物が、小学生の頃に埋めたタイムカプセルをキッカケに、大きく物語が動き出す。

    1年生の頃は夢も理想も大きく描いていたが、外見は大人でも中身が理想とかけ離れていると感じるのは、誰しもだなと。そこから登場人物達のように、一歩踏み出すことが大事なんだろうな。(それが一番勇気がいるし、難しい。)

    そう言えば私も小学生の時に、タイムカプセルを埋めたなぁなんて懐かしみながら読んだ。
    掘り起こしたのかは分からないけれど、その後どうなったか気になるな。

  • う~んいい話だった。  
    過去、現在、そして未来。  
    世界は広いけれど、狭い世間でみんな生きている。  
    三歩進んで二歩下がりながら、上を向いて歩こう。

  • 人と人との繋がりもそうだが、他にも様々な繋がりを感じられた1冊。

    幼い頃の無邪気な明るさや思春期の葛藤など学生の様々な感情が描かれていて読んでいてとても楽しく、面白かった。

  • 浅井千尋
    高校二年の夏に、小山ヶ丘第六小学校一年一組で作ったタイムカプセルが家に届く。青崎高校二年。美術部。松島と付き合っていたが別れる。

    松島
    青崎高校三年。千尋の先輩。美術部。

    桐原冬弥
    高校サッカー界強豪の姫坂高校に入る。サッカー部たが、周りのレベルが高く幽霊部員になっている。

    森脇祥吾
    冬弥と同期。サッカー部で十番でキャプテン。

    染谷優
    定時制の高校三年生。机で全日制の生徒と一日一文の文通をしたいる。

    千代田
    優のクラスメイト。

    二ノ瀬美夏
    慣れないギャル生活で息苦しい。

    原岡桃子
    美夏が憧れ、同じ高校に進学。

    ユウコ
    美夏の遊び仲間。

    リサ
    美夏の遊び仲間。言葉づかいが悪い。

    岸本タツロウ
    ユウコの彼氏。サッカー部。

    サワノ
    サッカー部の先輩。

    守屋時子
    不登校。誇り高き引きこもり。

    矢神耀
    小山ヶ丘第六小学校一年一組。一学期で引っ越す。諸事情で高校は通わず。バイトしながら高認を取り、コヤビに合格する。喧嘩別れした少女を、今も想い続けている。時子が出かけたチェーンソーアートの指導者。

    石川チヒロ
    耀と同じ科の女の子。


    耀と同じ科の男子。

  • コバルトブルーと桜色

  • 人と人とのつながり、離れていてもどこかで繋がっていることがよくわかった。

  • 【一話】
    タイムカプセルが郵送されてくるの斬新だった。
    みんなで掘り起こすものだけど、もしかして今は郵送方式も多いのかな?
    千尋の初恋が甘酸っぱくて良いなぁ。
    タイムカプセル見て喧嘩別れになってしまったアキラくんを今でも想ってて、先輩と付き合いつつも恋愛として好きになれなかったのがまた切なくて良い。
    松島先輩は、なんとなく気づいてたのかもね。
    埋められないあと少しの距離というか、薄い壁というか。

    【ニ話】
    桐原くん、サッカー続けるようで良かった。
    河川敷でずっと一緒にサッカー見てた女の子のおかげだね。
    まさかお互いチラ見してて、認識し合ってたとは(笑)
    あの女の子が声かけたタイミングは偶然だったのかな?
    深刻な雰囲気察して声かけたんじゃないのかなー、なんて。

    【三話】
    ここにきて1話と繋がったー!
    染谷くんと千尋。
    まさか染谷くんの机越しの文通相手が千尋だったとは。
    そして、小学校のときに自由帳見せ合うくらい仲良くしてた相手が千尋か。

    【四話】
    桐原くんが河川敷で会った女の子、美夏だったんか!
    あのときは、美夏にこんなことが起こってると思わなかったよ…。
    美夏のお話が一番あるあるで共感出来た。
    いじめ問題、誰でも一度は経験するよね。
    でも、美夏はすごい!
    悪縁断ち切って、親友の桃子と仲直りするなんて凄い勇気だよ。

    【五話】
    学生時代にヒッキーになったことは無いけど、社会人になって失業期間中、守屋ちゃんと似たような状況になったことあるから読んでて刺さりまくった。
    というか、守屋ちゃんと矢神くんがここで接点持つとは。
    3月にタイムカプセル送る感じだから、矢神くん、千尋との約束に間に合うかな?

    【六話】
    矢神くんと千尋が会えて良かった〜!
    矢神くんがなかなか会いに行かないから焦れたわ。
    でも、だいぶ千尋への想い拗らせてたから、まあ許す(笑)
    ほんとあそこまで拗らせてると愛だね。
    千尋との別れがトラウマになってたのといじめもあってのヒッキー時代だったのか。
    そこから這い上がったの凄い。
    石川ちゃんも一途で良い子だけど、それでも、揺らがず千尋を想い続けてる矢神くんが最高だった。

    めちゃくちゃ良い青春小説だった。
    6編すべて最高だった!

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著者プロフィール

「サマーランサー」にて第19回電撃小説大賞<選考委員奨励賞>を受賞し、デビュー。瑞々しい感性で描かれる青春小説に定評がある気鋭の作家。

「2020年 『17歳のラリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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