恋する寄生虫 (メディアワークス文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 3870
感想 : 212
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048924115

作品紹介・あらすじ

何から何までまともではなくて、
しかし、紛れもなくそれは恋だった。

「ねえ、高坂さんは、こんな風に考えたことはない? 自分はこのまま、誰と愛し合うこともなく死んでいくんじゃないか。自分が死んだとき、涙を流してくれる人間は一人もいないんじゃないか」

失業中の青年・高坂賢吾と不登校の少女・佐薙ひじり。一見何もかもが噛み合わない二人は、社会復帰に向けてリハビリを共に行う中で惹かれ合い、やがて恋に落ちる。
しかし、幸福な日々はそう長くは続かなかった。彼らは知らずにいた。二人の恋が、<虫>によってもたらされた「操り人形の恋」に過ぎないことを――。

感想・レビュー・書評

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  •  久しぶりのメディアワークス文庫のラノベで、三秋縋さん初読でした。薄っぺらな純愛ものを予想(ごめんなさい)していましたが、いい意味で裏切られる、動揺を招くような斬新な恋物語でした。若さを失くした私へ〝恋心〟のXmasプレゼント?

     潔癖症で失業中の青年・高坂賢吾(27歳)と視線恐怖症で不登校の少女・佐薙ひじり(17歳)。この二人が第三者を介して出逢い、少しずつ距離縮めながら時間・悩み・世界を共有していきます。

     「動揺を招く」「斬新な」と上述した要因は、<寄生虫>という創作上の主題にあるのは間違いありません。この主題が最後まで貫かれます。
     恋の感情は、互いの頭に住み着いた新種の<寄生虫>により作り出されたもので、操り人形の如く、この<寄生虫>が宿主の意思決定に影響を与えたり、行動傾向を変化させたりする、というのです。

     突飛な印象ですが、二人が抱える生きづらさと共に、<寄生虫>の習性や耐性、感染等が熱量たっぷり詳細に記述され、実にリアルで怖いくらいインパクトがあるんです。
     ネタバレはできませんが、この二人の<寄生虫>を駆虫するか否かの選択、そしてその結果もたらされるものは何か‥。読み手の引き付け十分です。

     大きく考え込んだ一つ目は、人間の感情と自由意思についてです。私たちは日々様々な感情を生み、そこから考え、判断し、行動するのは自分の意思のはずです。でも、周囲の様々な影響を受けていることは否定できず‥。と読み進めながら、自分の抱く気持ちが何度も揺らぐ感覚がありました。
     二つ目は、物語の二人の結末(特にひじり)を幸せと捉えるか、不幸と捉えるか‥。言い換えるなら、納得するか否かでもありますが、もしかしたら、不幸だけれども納得、という考えもあるかもしれません。賛否を含めて、議論対象であるかと思います。因みに私は肯定派ですが‥。

     若い読者のみならず、年配諸氏の価値観をも揺さぶるような、予想以上に中身の濃い、不思議な純愛物語でした。

    • マメムさん
      初コメです。
      『三日間の幸福』もオススメですよ♪また違った印象を受けるかと^_^
      初コメです。
      『三日間の幸福』もオススメですよ♪また違った印象を受けるかと^_^
      2023/12/25
    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      ご丁寧にありがとうございます。
      機会があれば前向きに検討したいと思います。
      ご丁寧にありがとうございます。
      機会があれば前向きに検討したいと思います。
      2023/12/25
  • すごく素敵な話だった。もし、自分が恋をしたとするでも、その恋は「虫」によってもたらされた恋だったら。操り人形の恋の話です。途中で小難しい話が混じったけど読みやすい文章構成や心理描写、初めての読書にもいいと思う。

    • マメムさん
      初コメです。
      博物館があるのには驚きました。同じくらい読みやすい作品で、こがらし輪音さんの『死神の助手はじめました。』をオススメしてみます^...
      初コメです。
      博物館があるのには驚きました。同じくらい読みやすい作品で、こがらし輪音さんの『死神の助手はじめました。』をオススメしてみます^_^
      2024/03/16
    • うたえながさん
      マメムさん、コメントありがとうございます。是非、読んでみます!
      マメムさん、コメントありがとうございます。是非、読んでみます!
      2024/03/16
  • 久々に三秋さんの小説を読んでみた。ある寄生虫に感染すると、他人が嫌いになるが、感染者同士は惹かれ合う。寄生虫によって、出会い、恋に落ちる27歳の高坂賢吾と女子高生の佐薙ひじり。そのままでは寄生虫によって心中する恐れがあり、駆虫治療を受ける二人。ところが駆虫することが自殺を招くことがわかった。駆虫した後も、二人の仲が続くことを願うが、、、三秋さんらしいエンディング。

  • 『恋する寄生虫』というタイトル通りの切ない恋愛物語。

    なかなか感想が書きづらいと思うのは、この感情をどんな言葉で表現するのが適切なのか難しいと感じているからだが、こんな恋愛の形もあったりするのかな?と少しリアリティある内容で、私の身にも起き得る事かもという淡い期待を持ったからだろうか?

    本作は、とある女子高生と一周りほど離れた男性が中心に描かれる恋愛小説だが、タイトルに捻りなく『寄生虫』が鍵となっている。

    読み進めていくうちに、ミステリ好きな私は最後に何らかの捻りやどんでん返しを期待してしまったが、淡く切ない終わり方に、少し物足りなさを感じ、ちょっとした消化不良を起こしている。(アニサキスか?)

    ともあれ、扉絵の少女との共同生活は夢のようでもあり、夢でもありと、この様な恋愛の形を夢見るオッサンであった。

  • 潔癖症の青年と視線恐怖症の少女の切ない恋物語。トキソプラズマ(脳を操る寄生生物)が猫や鼠だけではなく人間にも寄生するとチェコの生物学者が発表している。こんな虫が現実に存在するのが怖い。

  • 寄生虫がもたらすラブストーリーです。

    おぉ〜これがフタゴムシか!
    と思わず検索してしまいました。

    寄生虫の説明になるとわたしには難しくて読み辛かったですが、他はとても引き込まれました。

    この作家さんは初めて読みましたが、また他の作品も読んでみたいと思います。

  • タイトルから気になっていましたがこれは良い作品でしたね!こういうの好きです笑

  • '23年4月1日、Amazon audibleで、聴き終えました。三秋縋さん、初…今迄全く知らない作家さんでした。

    フラッと聴き始めて…一気に、聴き終えてしまいました。良かったです!

    寄生虫というのは、なんとも気持ち悪いけど…とても美しいお話でした。ラストが、とても美しい…。

    メディアワークス文庫なので…十代の若者を対象としてるのかな?だとしても、僕には素晴らしい小説でした。

  • 思ったより硬派な文体で読みやすい。アレルギーの原因について清潔すぎて発症するとかも聞いたことある。「寄生虫」とか「ウィルス」とか「バグ」とか虫に絡ませて物語を作ってるのは上手いなぁ。「そんな…」な終わりを思わせる終わり方…2021年映画公開作品とのこと。

  • ラノベって基本読まないのだけど、なんだか気になって予約待ちしてた一冊。
    不器用で人間嫌いな、少女と青年が恋に落ちるまでのストーリー。
    小説の核として寄生虫がモチーフにされているのがとても良かった。
    二人の恋は寄生虫によってもたらされた、操られた、錯覚の恋。
    そんな恋を運命だと信じてしまうことは、なんて滑稽で哀しいことなんだろう。
    でも現実にもそんなのよくあることかな。たいていどんな恋だって都合のいい思い込みなんだ。
    だからこそと言うか、佐薙ひじりの精一杯の反論と切実さはかなり私の胸に響いた。
    操り糸の存在を知った上であえて身を任せることはたしかに自分の意志だ。
    運命ってのはなんなんだろうとぐるぐる考えさせられました。
    そして、結局抗えないラスト。切なくなるけど、でも二人はこれで良かったのだとも思える。

    あとがき素敵でした。
    引き算の幸せね。作者が美しいバグだと述べる、価値観の倒錯。
    本人たちにはきっとかけがえのない何かだと私も知ってる。

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著者プロフィール

WEBで小説を発表していた作家

「2015年 『僕が電話をかけていた場所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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