ぼくは静かに揺れ動く (BOOK PLUS)

  • アーティストハウスパブリッシャーズ
3.44
  • (6)
  • (6)
  • (19)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 64
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048973038

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「生まれてからいちばん悲しい夜だ。というのもぼくは家を出て、もう二度と帰ってこないからだ。」

    出だしのたった二行で読者を引き込む書き出しが秀逸。
    原題の“Intimacy"を『ぼくは静かに揺れ動く』と訳したのも上手いなぁと思った。

  • 一人の男の頭の中を旅行してるみたいな小説。とにかく、主人公の彼の思想や記憶や妄想が書き連ねられている。彼の考えは邦題の通りに揺れ動いており、断絶したり飛躍することもしばしばなので、小説のリズムに慣れるまで時間がかかった。

    しかし、彼の正直さはとても魅力的だった。彼の全てに共感するわけではないが、時たま心をグッと掴まれるような一節がふいに登場したりして、ハッとすることがあった。

    ここまでシニカルに、というかリアリスティックに「ロマンチックな愛を求める男」を描くというのも面白かった。どこか醒めてるのに、愛を信じる主人公。感傷的な内容なんだけど、感傷的じゃない文章の感じもよい。

  •  体を別とする一個人同士が本当に心を一致して分かり合えることなんて、果たしてできるのだろうか。ひと時の心の交差はあったとしても、少し目を離すと、互いに違う風景に目をやってしまう。その交差の瞬間は間違いなく存在した事実だったとして、その次の曲がり角では全く違った人間・事物に心惹かれてしまっている、これもまた起こりうる事実だろう。

     人間同士、殊に恋人同士の関係というものは、その交差の瞬間から「誠実」という名のレールの上を真っ直ぐに走ることを前提とする列車のようだ。一瞬の交差、白熱でしかなかった、と自ら認めてしまえば、私あなたは不誠実の烙印を押されてしまう。まあ男女共に不誠実を良しとする者同士ならよいのかもしれないけれど。そんな烙印を押されるのを恐れて、私たちは辿り着きたくもない方向を見つめながら、列車に乗ったままでいることもある。それは歳をとるにつれて上手く身につけることのできる処世術なのかもしれない。少々の嘘、互いを見てみぬ振りすること、空元気、滑稽な鼓舞、、荷物も重くなっている、、いつかの借り、恩、見栄、情、、

     いつの間にか列車からは降りれない。

     本物の「誠実」とは何なのだろうか。他の列車の乗客と同じように、与えられた環境を受け入れ、面白くおかしく過ごそうと努めることであろうか。そして時折、同じ人生を偶然にも乗り合わせた客と笑顔の瞬間を共有することだろうか。それとも、一人、真っ直ぐ手を上に挙げて、名もなき駅でその旅から抜け出すことであろうか。例え、それが周囲の人々を興ざめとさせ、傷つける結果となったとしても。。

     時に、「社会・コミュニティに対する誠実さ」と「自身に対する誠実さ」は真っ向からぶつかり合い、矛盾を孕み、いがみ合っているようだ。私あなたの心にある気持ちは「真っ当に、誠実に生きたい」だけであるとしても。そう願えば願うだけ苦しい事だってある。そういった感情と上手く付き合っていければいいのだけれど。どちらも犠牲にはしたくないと思いながら生きる日々は、今日も何も決めることが出来ないまま、予定調和の中に埋もれてしまいそうだ。

  • 時々、ぐさりとくる言葉が幾つもあった。
    記録的セラーを出したことがなんとなく理解できるようなお話だった。
    男の人の恋目線が、また女と違って面白かった。

  • 物語を楽しむというより文章を楽しむ感じですが、瑣末な出来事のとらえ方は面白い。

  • 一人の男の身勝手な行動と言われてしまえばそれまでだが、それはモラルを考えるからであって自分ならこうするなどの考えなしで読めば面白い。

    女の人はあまり好きではないと思う。

  • 妻子を残して家出する男が家出までの一日、ひたすらにぼやき、逡巡。
    大人とは、男とは?などの規範が崩れて自由になった現代に生きる<br>
    ことの苦しさがあぶりだされるわけですが、読んでる途中でお腹一杯に。<br>
    訳が丁寧ではないです。

  • あれこそが愛だったに違いない。
    ラストが決まりすぎ。

  • 最高のぼやきを聞きたい気だるい夜に。

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

(Hanif Kureishi)
1954年、ロンドン郊外のブロムリーに生まれる。父はインドのボンベイ(現在のムンバイ)生まれの移民でパキスタン大使館で働き、イングランド人の母は製陶所で絵師として働いていた。ロンドンのキングズ・カレッジに入学。作家になる夢を抱いていたが、大学では哲学を専攻する。卒業を待たずにロイヤルコート劇場の案内係として働きはじめる。1976年に自作の『熱を吸い込む』が上演され、劇作家としてデビュー。1981年にロイヤルコート劇場のライター・イン・レジデンス(座付き作家)となる。1985年に脚本を書いた映画『マイ・ビューティフル・ランドレット』、1987年に『サミー&ロージィ/それぞれの不倫』が公開され、1990年には『郊外のブッダ』で小説家デビューを果たす。1991年には自ら監督をした『ロンドン・キルズ・ミー』が公開。以降は小説を中心に執筆活動を行っている。邦訳された作品に、『ミッドナイト・オールデイ』(中川五郎訳、アーティストハウス/角川書店)、『パパは家出中』(中川五郎訳、アーティストハウス/角川書店)、『ぼくは静かに揺れ動く』(中川五郎訳、アーティストハウス/角川書店)、『郊外のブッダ』(古賀林幸訳、中央公論社)などがある。

「2015年 『言葉と爆弾』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ハニフ・クレイシの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ボリス ヴィアン
宮部 みゆき
ハリー クレッシ...
宮部みゆき
ポール・オースタ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×