いつでも会える

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  • 学研プラス
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  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 9784052027642

感想・レビュー・書評

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  • 優しいイラストとシロのみきちゃんへの思いが、胸に迫りそしてじんわりと心を温めてくれます。

    大好きで大切な人を失ったことを悲しむということは、即ちその人を称えるということ。
    喪失の悲しみは、それを山に例えるならばそれを乗り越える、という類のものではなく、その山を自分の心の風景の一部にしてみる。
    まぶたの裏にいつもいる、とおくて、近いところにいるその人。
    私の心の風景にその山がある限り、私はあなたにいつでも会える。
    大好きな絵本です。

  • 菊田まりこ著『いつでも会える 大型判』(学習研究社)
    2007.2.7発行

    2021.8.9読了
     今から約20年前、附属池田小学校で連続児童殺傷事件が起こった。そのときに娘を失った母親が「前を向くきっかけになった」絵本の一つとして本書を紹介されていた。
     この絵本には、シロとみきちゃんしか登場してこない。二人だけで完結していた世界が、ある日突然みきちゃんの死によって壊されてしまう。犬のシロには死というものが理解できない。理解できないから、あちこち探し回るのだけれど、みきちゃんは見つからない。シロは悲しみに暮れ、その幼さに似合わない「不幸」だなんて言葉さえ口にするようになる。けれども、夢の中でみきちゃんと再会し、目をつむればいつでもみきちゃんの懐かしい声や姿形を思い出せることに気づく。シロは徐々に元気になっていき、やがて、以前と何も変わらない二人だけの世界を胸の中に取り戻していくのである。
     この絵本をより魅力的にしているものは、何といっても作画のタッチであろう。力強く、強弱のつけられた描線と、橙系統の暖かな色。たったこれだけで構成された作画が、言ってしまえば在り来たりなプロットを、効果的で豊かなものにしている。
     特に色彩を萱草(かんぞう)色の一色に統一している点にプロ意識を感じる。萱草は、身に着けると憂いを忘れるという中国の故事から「忘れ草」とも呼ばれ、平安時代には服喪の色として用いられてきた。おそらく作者は狙ってこの色を選択したのだと思われる。
     陽気な暖色系の色を忘れ草色と呼んだ古代人の感性を、現代人が完全に理解することは難しいかもしれない。「忘れ草」という言葉は奈良時代にはすでに用いられており、例えば、大伴旅人が万葉集で次のような歌を詠んでいる。

     忘れ草 吾が紐に付く 香具山の 故(ふ)りにし里を 忘れむが為
    (大宰府の長官として赴任していた大伴旅人が、香具山のある明日香が懐かしくてたまらないので、辛さを忘れられるという忘れ草を紐に付けてみたのです)

     服喪の色としての萱草色、喪失の痛みを癒す色としての忘れ草色ーー、絵本の作者がこの色に二重の意味合いを込めたのは間違いないのではないだろうか。
     みきちゃんはクリスチャンのようだが、仏教の世界では百か日法要という儀式が存在する。現代ではもう単式で執り行うことが少なくなった儀式だが、一説では、死者を悼むことを止め、日常に戻るという意味があるそうだ。シロが喪失期を抜けて日常を取り戻していくプロセスには、このような宗教的、民俗的習俗が下敷きになっている気がしてならない。
     ところで、仏教の世界では死者の魂は十万億土の彼岸に送り出されるが、幼児の魂については(ことに仏教以前は)むしろ再生復活させようという気持ちが強かったと聞く。「7つ以下は神のうち」ということわざがあるように、生臭物を供えることで、幼児の魂を仏教の統制の外に出して、十万億土に送り込まない、仏にさすまいとする作法が存在した。まだ完全には人の世界に入らず、霊の世界と離れきっていない幼児の死霊が再び我が家に戻って来れるように、大人と同じような葬法を避けたのである。
     なぜこのようなことに触れたのかというと、私の幼い息子は、シロ視点に立って、みきちゃんは何処かに引っ越したのだと捉えたらしいからだ。
     幼い子どもには死というものが理解できない。しかし、だからといって私たち大人が正しく死を理解しているわけでもない。あるいは、息子がいうように、本当にどこかに引っ越しただけなのかもしれない。
     そんな風に本当に思えたのだ。

    URL:https://id.ndl.go.jp/bib/000008436464

  • *

  • 2018年9月3日

    <See you anytime I want>
      
    デザイン/村崎和寿(c-saira)

  • これは泣けました! みきちゃんの犬、シロの物語。突然亡くなったみきちゃんを思うシロの気持ち。夢で会えてよかったね。菊田まりこ 作「いつでも会える」、2007.2発行。100万部を超えるベストセラーも頷けます。

  • こころが暖かくなる本で母親を亡くした私を救ってくれた。

  • この本は小さいころ、お母さんやお婆ちゃんが読んでくれた思い出の本です。
    大切なひとを失ってしまうと、どんなに悲しいか。人を思いやる気持ちが
    芽生える本です。

    16K083

  • 「千の風になって」のように、読むと(聴くと)空を見上げてしまう本だった。
    読めてよかったと思える本だった。

  • おはなしかい。

  • 子犬の視点から飼い主の女の子の死を描いた作品。みきちゃんを想う気持ちは人一倍、シンプルなイラストと短い文章ですが読者を引き込む力を持つ魅力的な絵本です。
    【13k001】

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著者プロフィール

絵本作家。絵本『いつでも会える』(学研)で1999年度ボローニャ国際児童図書展にてボローニャ児童賞・特別賞受賞。100万部をこえるミリオンセラーとなる。ドイツ、フランス、スペインなど世界数カ国で翻訳。
絵本の他に、子育てエッセイや翻訳、WEB連載なども手掛ける。
著書に『あの空を』(学研)『君へのてがみ』(角川文庫)『ゆきの日 On Christmas day』(白泉社)『月のしずく』(WAVE出版)など多数。

「2021年 『ぼくたちの場所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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