岡本綺堂妖術伝奇集 (学研M文庫 M お 10-1 伝奇ノ匣 2)

著者 :
制作 : 東雅夫 
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  • Amazon.co.jp ・本 (822ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784059001201

感想・レビュー・書評

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  • 夏はもう終わったのですが、綺堂書く所の静謐でうつくしい怪談は秋の夜長にこそふさわしいでしょう。
    岡本綺堂というと「半七捕物帳」が有名ですが、こういう怪談とか幻想文学もほんとうに素晴らしいです。長編短編小説はもちろん、戯曲や随筆まで収録されてボリューム的にも大満足間違い無し!(好きなら)
    どの作品も素晴らしいのですが、個人的には長編なら「玉藻の前」、短編なら「木曽の旅人」がいい。あと綺堂が特別な思い入れを持っていたと思われる(私の勝手な思い込みですが)妖女と蟹が両方楽しめる戯曲「平家蟹」も素敵です。かに。.

  • 137年前、1872年(明治5年)11月15日に、東京は高輪に生まれた小説家というより、あまりにも有名な名作の誉れ高い『半七捕物帳』の原作者です。

    『半七・・』は、いうまでもなく日本最初の十手持ち、つまり岡っ引きが主人公の捕り物小説ですが、何を隠そう言わずと知れたシャーロック・ホームズからヒントを得て着想された、今の警察小説の元祖みたいなものです。

    自らも吉原の芸妓を落籍(身請け)して結婚したり、『修禅寺物語』(舞台は鎌倉時代ですが)など新歌舞伎の創作にも情熱を注いだりして、江戸情緒をふんだんに満喫する、懐古趣味いっぱいの捕物帳の作者にはうってつけではあります。

    例によって、私が岡本綺堂と出会ったのはやっぱり映画です。

    その名もずばり『半七捕物帖 三つの謎』(1960年)では、あのべらんめえ口調も滑らかな半七親分に片岡千恵蔵、色白の二枚目・桐畑の常吉に東千代之介などという名配役で、小2の私は訳もなくしびれたものです。今から考えると、よくよく変な女の子でしたね。

    それから、たしか『手討』(1963年)という悲恋ものでは、青山播磨に市川雷蔵、お菊に藤由紀子という、あの番町皿屋敷コンビと、それに青山播磨の同僚・新藤源次郎という役柄で、まだ城健三郎という名前だった頃の、後の若山富三郎が出て、ひときわ輝くというか、少しも主役に負けていないことを子供ながらに感じました。

    そこからです、岡本綺堂と名のつく本を探しまくり、江戸時代そのもの面白さに目覚めさせられ、たぶん落語への興味もその時つちかわれた気がしますし、やがて半七よりもっと奥が深いものがあることを発見、それがこの本の世界です。

    この本は、敬愛する東雅夫が伝奇ものをコンパクトな一冊にまとめた労作で、私が図書館や近所の好事家のおっちゃんや親戚の蔵などを発掘しても読むことができなかった、単行本未発表の作品も入った貴重なものです。

    半七をご存知の方は、もちろん異なる岡本綺堂の顔を知ることでイメージの一新が、初めての方は、ひょっとしてこちらの方が強烈なインパクトで決定的なイメージを持たれるかもしれませんが、いずれにせよ、その全体像を松本清張や山田風太郎などもお手本として、自分の創作の模範としたのに違いありませんので、それが文庫で読めるこのありがたさ。ぜひぜひご一読を。

  • 目次
    玉藻の前
    小坂部姫
    クラリモンド
    (ゴーチェ作/岡本綺堂訳)
    戯曲
     平家蟹
     蟹萬寺縁起
     人狼
     青蛙神
    短編小説
     青蛙神
     蟹
     五色蟹
     木曽の旅人
    随筆
     江戸の化物
     高坐の牡丹燈籠
     舞台の牡丹燈籠
     小坂部伝説
     怪談劇
     温泉雑記
    関連資料
     木曽の怪物
    (「日本妖怪実譚」より)
     蓮華温泉の怪話
    (『信濃怪奇伝説集』より)
    解説 東雅夫
    岡本綺堂年譜

  • 超クオリティが高い。岡本綺堂はすごい。
    戯曲の平家蟹が好き。檜扇で男と妹を丁々と打つんだよ!(興奮)どこぞの探偵雑誌をまとめた本が全巻束になっても敵わないくらい。文章が美しいし、世界が香るほど濃密。惚れました。

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著者プロフィール

(おかもと・きどう)1872~1939
東京生まれ。幼少時から父に漢詩を、叔父に英語を学ぶ。中学卒業後、新聞、雑誌の記者として働きながら戯曲の執筆を始め、1902年、岡鬼太郎と合作した『金鯱噂高浪(こがねのしゃちほこうわさのたかなみ)』が初の上演作品となる。1911年、二代目市川左團次のために書いた『修禅寺物語』が出世作となり、以降、『鳥辺山心中』、『番町皿屋敷』など左團次のために七十数篇の戯曲を執筆する。1917年、捕物帳の嚆矢となる「半七捕物帳」を発表、1937年まで68作を書き継ぐ人気シリーズとなる。怪談にも造詣が深く、連作集『三浦老人昔話』、『青蛙堂鬼談』などは、類型を脱した新時代の怪談として評価も高い。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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