都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト (学研M文庫 し 9-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784059040019

感想・レビュー・書評

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  • 私が読んだのは46判よりやや大きめの単行本であって、翠と紫に近い青の色づかいの装丁が内容にすごくマッチしており、やはり美意識の高い作家の本は可能であれば単行本で読んだほうがいいように思う。
    さて。
    漠然と「若い作家だ」と思っていたが(著者近影のせいだろう)、三島や埴谷とも交流があったのだからけっこうなお年だったのである(1928年:昭和3年生まれ)。59歳逝去はやはり早い。
    その著者の最期のエッセイ集は、各テーマが短くて大変読みやすい。
    最近、人間の圧というか密度というか気骨というか、知識と感性に裏打ちされた美学というか、そういったものの薄い作家が多い気がする。

  • 後半に従い「思い出」や「追悼」の文字が増えていく、さっぱりしているようで荘重な趣の感じられる本作は、澁澤龍彦最後の未収録エッセー集になります。全集22巻の解題によれば、本書は澁澤さん自身の手によって取捨や配列のされていない「異質の印象」があるエッセー集となっていますが、貴重で資料的な価値も大きいとのこと。個人的な感想は前述したとおり「さっぱりしているようで荘重な趣」に尽きます。どこか禍々しく絢爛なペダントリー、鎌倉での生活や少年時代の回想、友人たちとの朗らかな酒飲み話のことまで、全てが澁澤龍彦らしさなのです。エッセーの極地ここにあり。そんなわけで、本書のひとつひとつのエッセーには、感慨深いものがありました。

  • 鎌倉・浄智寺に行ったら急に読みたくなった。著者最後のエッセイ集。非常に渋澤らしい。

  • 澁澤龍彦最後のエッセイ集。
    「若い頃は〇〇だったが・・・」とか「今更△△を書く気にはならないが・・・」という、晩年の達観した心情が垣間見えて面白い。
    もっとも本人はこの後も執筆を続けるつもりだったわけで、夫人によるあとがきが何とも悲しく感じられた。

  • 絶筆になった原稿を含む、未収録短文集。短いもので数行、長くても4~5頁の、新聞や雑誌に掲載されたちょっとした寄稿文みたいなものから、芝居や美術展のパンフ用解説・推薦文、他界された方々への追悼文まで、ものすごくランダムに、ありとあらゆるジャンルから寄せ集めた感じですが、これまた通読すると、すごい澁澤さんらしいというかね、なんか1本線が浮かび上がってくる感じ。それがオブジェであれ、絵画であれ、文章であれ、自らの記憶であれ、「収集」することが好きだったのであろうこのひとの、コレクションの一覧の簡易版といった趣きに結果的になっているような。面白かった。

  • 病没した著者最後のエッセイ集ということで、
    ずっと怖くて手を出せなかったので、
    やっと初めて読みました。
    でも、いかにも澁澤節全開で、
    辛辣かつユーモラスで面白かったです。
    しかし……夫人によるあとがきを読んだら
    泣いてしまった(ノдT)。

  • 古本屋で見つけた澁澤晩年の(と言っても若いが)著述集。いい意味で肩の力が抜けてて、澁澤の人柄が感じられる爽やかな本だ。

  • 澁澤龍彦最後のエッセイ。
    『高丘親王航海記』を病床で書いていた頃の状況がわかり、あの作品の独特の軽妙さ、それでいてずっしりとくる読後感の根底にあるものに触れることが出来たような気がする。
    巻末に収録された奥さまのあとがきに「プリニウスの死が理想の死に方」だった著者が頚動脈瘤破裂と言う自身の肉体による噴火で死んだのは理想通りの死と言えるかも知れない、と言った内容のことが書かれていたのがとても印象的だった。
    単行本未収録の2エッセイ、奥さまのあとがきを読むことが出来るだけでも買った価値があると自分では思う。

    ただ…絶筆となった本書に著者が書いた文学関係者への追悼文が多く載っていたのがちょっと空しくて、彼の死の大きさを改めて感じることになってしまった。

  • 絶筆含。

  • 高丘親王航海記を読んだことのある方なら、都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト を読んでいただければ、
    病室のベットで喉にチューヴを挿入されつつ書き上げた高丘親王航海記の凄さと行間に染み入る切なさが、あらためて伝わってきます。

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