1973年のピンボール

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 916
感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061168626

作品紹介・あらすじ

僕たちの終章はピンボールで始まった。雨の匂い、古いスタン・ゲッツ、そしてピンボール……青春の彷徨は、序章もなく本章もなく、いま、終わりの時を迎える。新鋭の知的で爽やかな’80年代の文学。
この倉庫での彼女(ピンボール)との邂逅場面の清潔な甘美さと知的なセンチメンタリズムは上等でとても筆舌に尽くし難い。さらに重要なのは、〈僕〉がその体内にとりこんだピンボール・マシン=外国との、やさしく堂々とした結着のつけ方である。希望、絶望、おごり、へつらいなど、いかなる色眼鏡もなく、この20世紀のコッペリアと一体化し、そして突き離しながら、〈僕〉は、自分と彼女がどう関わり合っているかをたしかめる。こうして〈僕〉はゆっくりとした歩調を保ちながらなにものかになって行くのだ。主人公が海外渡航しない「海外渡航小説」の、これはみごとな収穫といえるだろう。──井上ひさし(朝日新聞文芸時評より)

感想・レビュー・書評

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  • 読書会のために5年ぶりに再読。

    今回の再読はとても新鮮でした。どうも私はピンボールのシーンが何かの映画とごちゃ混ぜになって記憶していたので、実際のピンボールのシーンにちょっとしびれてしまった

    探していた3フリッパーのスペースシップに会いに行ったシーン、ネタバレになるのであまり言えないけど、
    まず、「両手を上げて。」
    向かう所から急にテクニカラー的な映像が迫ってきて、
    しとしと雨の降ってる墓場的な鼠の世界からゴダールの映画みたいにジャンプカットされて…
    ウェス・アンダーソン的な世界が広がったんですよね、一瞬。
    そして、ようやくピンボールとの会話で、ああ、そういうことかと気づいた私。。たぶん遅すぎ←

    プロローグに、1章がはじまる前にちゃんと書かれていました。

    *これはピンボールについての小説である。

    *物事には必ず入口と出口がなくてはならない。そういうことだ。

    _僕は井戸が好きだ。井戸を見るたびに石をほうりこんでみる。小石が深い井戸の水面を打つ音ほど心の安まるものはない。_

    井戸というのはつまり、ピンボールマシンのコインを入れるところ。。
    全てがピンボールというメタファの上に成り立っている小説だったんですね。
    やっとそういうことが理解できて、鳥肌たちたちでした。2作目ですでに春樹ワールドが完成してた…凄くないですか?天才としか…
    あ、世界が知る天才なんでしたね春樹さん

    配電盤のお葬式、良かったですよね。
    双子と耳鼻科に行ったシーン、好きだった。
    _11番ホールのドッグ・レッグは耳の穴を思い出させ、フラッグは綿棒を思い出させた。もっとある。月にかかった雲はB52の編隊を連想させたし、空の星はかびがはえたパセリの粉を連想させたし…もうよそう。_

    こうして春樹さんの書く主人公たちは、井戸の入口からどんどん中へ奥へと入っていくことになるのですね。

    そして直子への思いが募ります。

    風の歌を聴け では、「カリフォルニア・ガールズ」だったけど、
    今回は僕がふいてる口笛が最高♡
    とくにスタン・ゲッツの「Jumpin’ with symphony sid」これは2回出てきた。
    春樹さんはスタン・ゲッツがやっぱりお好き!

    双子が買った「ラバー・ソウル」をかけるシーンもちょっと切なくていい。

    …思わず自分用にプレイリスト作ってしまったほど、余裕のある再読だった。

  • 「なあ、駄目だよ。みんながそんな風に問わず語らずに理解し合ったって何処にもいけやしないんだ。」

  • 「風の歌を聴け」よりも好きだと思った。
    「みんながそんな風に問わず語らずに理解し合ったって何処にもいけやしないんだ。」というのがとても印象深い。

  • 「僕」と双子の女の子、鼠とジェイ。周囲と距離を置くように、そして流れるように生きる二人の男性の話。

    --------------------------------------

    お話の意味がわかったのか、と問われれば、正直なところよくわからない。ピンボールも配電盤もなんのことやらという感じだ。
    でも、楽しめたか、と聞かれれば、大いに味わいながら読むことができたと思う。意味がわからないのに?
    それはフジロックやサマーソニックで海外のバンドを観ている時の気分に似ている。

    たとえば音楽を聴いて楽しむ時、ボーカリストが歌う言葉の意味は重要でないことはよくある。楽器や声の音色、リズム、雰囲気。五感すべてで音楽を楽しむ時、言語は何の役にも立たない。

    村上さんの小説にも同じようなことが言える。文体とかリズムという言葉を使うのが正しいんだろうけど、空気と呼ぶのがしっくりくる気がする。
    全体に漂う、あきらめにも似たセンチメンタルな空気。失った時間や井戸のことをいつも思っている。そこに意味は必要なくて、ただその空気をどう感じるかが重要なんだと思っている。

    だから、村上さんが伝えたいこと(そんなものがあるとすれば)は何も理解してない。
    センチメンタルな文章を読んで、「やれやれ」という気分に酔っているだけで本質的な部分をわかろうとすらしていない自分がいる。そういう読み方もある、と寛大な気持ちで見放してもらえれば何よりだ。

  • 後味か好き。個人的には、けじめをつける話し。

  • 2023/01/05 読了 ★★★★★

  • どうしても違う世界での出来事としてしか捉えられない原因はどこにあるんだろう……(あるいは私の先入観なのか)。とても読みやすかった。早くも鼠回収。

  •  最初に読んだのは20歳くらいだから30年ぶりの再読だ。ネズミとジェイと双子、何を示唆しているのかを悩んでみるけどどうもわからない。何かをわかろうとするより、ただ眺めるように読んだ。
     わかならいんだけど、嫌いじゃないのはなんなんだろう?
     また、フライドポテトを食べながら、ビールを飲みたくなった。

  • 何度目?
    三部作の真ん中。
    会話はちょっと恥ずかしいけど、、、
    羊にいたる大事な序章。

  • もう何度読んだことだろう。

    それでも何だかやっぱりいい。
    ストーリーとか、ではなくこの文体やリズム、空気感とかが好きだ。

    中でもピンボールの(彼女)との親密さが、温かくもあり、切なくもあり、悲しくもあり。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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