モモちゃんとアカネちゃんの本(2)モモちゃんとプー (児童文学創作シリーズ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061192324

作品紹介・あらすじ

シリーズ第2作。いつのまにかママの手助けができるほどにすくすくと成長したモモちゃんに妹のアカネちゃんが誕生します。そして、黒ねこのプーにはめすねこのジャムという友だちができました。母と子の心のふれあいをふくよかで歯切れのよい文と対話でつづり、生き生きとした幼児世界を描いた名作。

感想・レビュー・書評

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  • 10月9日、朝のラジオ番組で第五福竜丸展示館の学芸員・市田真里さんがお勧めしていたので紐解きました。松谷みよ子さんの本は初めて読みました。

    モモちゃんシリーズは、現実の家族と幻想が入り混じったような、不思議な感じがする世界でした。自然溢れる一軒家に、お母さんとお父さんと猫のプーと一緒に住んでいて、3歳から幼稚園年長組までの日常が書かれています。モモちゃん目線で世界を見たら、こんな感じかなぁという「絶妙な描き方」です。最後にはアカネちゃんという妹さんも産まれます。

    全部で17篇載っていますが、市田真里さんが紹介したのは、そのうちの一編「クレヨン ドドーン」です。1/4ぐらいに圧縮して紹介します。

    モモちゃん(もう直ぐ5歳)が近所のコウちゃんとお絵描きして遊んでいる途中、コウちゃんが「みたいまんががあるんだ」と言ってテレビをつけると、どこもかしこも戦争のことばかり。
    いんこが教えてくれました。
    「みなみのほうで、せんそうがおこっているんです。とりもどうぶつもめいわくしているんです。なにしろ、にんげんというのは、ほんとにもう‥‥」
    「せんそう、モモちゃんちにもくる?」
    「かもしれません」
    「いや、うちにきたらいや。ねえ、どうしておとなたちはせんそうするの?せんそうなんてやめて、ご本よんだり、絵をかいたりすればいいのに」
    「わかった、クレヨンないのよ、きっとー。」
    そしてモモちゃんとコウちゃんは戦場にワープして、大砲にクレヨンと画用紙を詰めて、ドドーン!兵隊さんたちは、喜んでみんな絵を描き始めました。
    ‥‥でもこれは、やっぱりいつもの夢の中の出来事でした。
    家に帰ってモモちゃんはお母さんに聞きます。
    「ママ、せんそうどうした?おしまいになった?」
    テレビでは(まるで今のウクライナみたいに)戦争のことばかり。
    「せんそうしてるよ、まだしてるよ、せんそうやめえっていったのに」「クレヨンあげたのに」そう言ってぽろぽろ涙をこぼすモモちゃん。
    「ねえ、せんそう、どこまでくるの?えきまでくるの?がどのおかしやさんまでくるの?おうちまでくるの?モモちゃん、こわいよ」
    「きませんよ。あのせんそうはとおいところなの。でももしそばまできたら、ママが、だめ!っておこるから、ね」
    最後の言葉は流石松谷みよ子さんです。普通のお母さんは、その手前で何とか慰めようとするのではないでしょうか?ところが、モモちゃんは、ここで満足しません。ここがモモちゃんの凄いところだと市田真里さんが言っていました。
    「でも、どこかでしているんだよ、それなのに、だめ!ってママいわないの?はやくいわないと、みんな死んじゃうよ」
    ママの膝でモモちゃんは、いつまでもしゃくりあげていました。

    ラジオを聴きながら、背中がぞくりと震える気分を味わいました。

  • 「モモちゃんとアカネちゃん」シリーズ2冊めで、モモちゃんが3歳から5歳くらいのお話です。

    すくすく大きくなっているモモちゃんは、黒猫のプーや保育園のコウくんと仲良く遊び、歯が抜けたり歯医者の治療を頑張ったり、海とじゃんけんをしたりします。
    なんとプーは白猫のジャムに「ぼくのおよめさんになって」といって結婚したんです。

    そしてモモちゃんの妹のアカネちゃんが産まれました!
    しっかりお姉さんしようとするモモちゃんをおうちの牛乳ちゃんやスプーンちゃんやお皿ちゃんがお手伝いします。

    でも大変なこともあります。
    ママの言うことを聞かずに怒られたり、大事な椅子を投げてしまってしまったり、テレビの戦争の番組にショックを受けたりします。

    そしてママも大変なんです。夜遅くまでお仕事で疲れています。そんなときにモモちゃんがかけてくれた毛布に成長を感じて喜びます。
    お腹に赤ちゃんがいるときに階段から落ちてしまったこともあります。その時ママは夢で赤い実を見て「命があるんだわ」と気が付きます。
    モモちゃんが赤ちゃんだったころ、洪水の浸水で逃げたこともありました。

    なんといっても大変だったのは、モモちゃんがウシオニ(※西日本の妖怪牛鬼)に影を取られてしまって倒れてしまったことです。すぐに影を取り戻さないとモモちゃんはもう目を覚ましません。
    ママは走って急いでウシオニを見つけて「ほんとうに悪いウシオニよ!モモちゃんの影を返しなさい!」っておしりペンペンしました。ウシオニは「いたいなー なんでそういばるんだよー」というと、「わたしは、ママだからよ」と言ってモモちゃんの影を取り戻しました。モモちゃんの影は、パパがペロッと舐めてくっつけてくれて、モモちゃんは目を覚ましました、ああ良かった。

    ===
    子供の成長をまっすぐな童話なのですが、大人からすると、大人社会の大変さを童話で表現している、まるで幻想文学のような様相も感じます。
    この時代に夜まで働くモモちゃんのママ、パパとはコミュニケーションが取れているのかいないのか?の微妙な雰囲気も感じます。
    そして戦争のニュースを見てショックを受けたモモちゃんの「ねえ、せんそうどこまでくるの?えきまでくるの?かどのおかしやさんまでくるの?おうちまでくるの?どこかで(※戦争を)してるんだよ、それなのに、だめ!ってママいわないの?はやくいわないと、みんなしんじゃうよう」というこの問いに、大人はなんと答えられるのか。

  • 「ちいさなモモちゃん」の続編である
    「モモちゃんとプー」は、
    3歳半~年長さんのモモちゃんと、
    くろねこのプーのお話だけでなく、
    妹のアカネちゃんが生まれるときのことが
    書かれた童話です。

    「みんな大きくなって…」では
    ママの疲れた様子がすこし気になりますが、
    最後はくろねこプーと白猫ジャムの
    可愛らしいデートで終わるので、
    ママの様子は隠れてしまいます。

    子どもを育てるママは
    絵本や童話のなかでは明るく書かれがち
    ですが、
    本当はいろいろなことを背負っている、
    ということを教えてくれる1話で、
    印象的でした。

  • 子どもの頃に最初の数話を読んだだけ?
    ほとんどのあらすじを全く覚えていない。
    モモちゃんが戦争のニュースを見たあとに夢の中で戦地へ行き、クレヨンや画用紙を兵隊さんにあげたのに戦争が終わらないと言って泣いたのは5歳だったというのは作者子どもに起こった実際の話だろう。(大方の物語が創作ではなく毎日の出来事をファンタジーにしたものだと思う)子どもの本にこんな話が盛り込まれてるすごさ。

    モモちゃんの影を食べたというオニウシのおしりをペンペンし、「ママだからよ!」という理由で猛獣よりも強いなんてすごい。この話がこんなに面白いと思ってなかった。

    しかもこの凝った装丁。昔は本にこんなに時間とお金がかけられていたんだなぁ・・・
    お人形で描かれたいくつかの場面がさしはさまれていて、とても丁寧に作られている。本当にモモちゃんもプーも存在してるみたい。

  • 幼稚園の時、みえこちゃんに読んでもらいました。
    いちばん初めに好きになった本だと思います。
    あの頃、自分がモモちゃんと境遇が似てるせいか、時々アカネちゃんが面倒だなと思ったり、モモちゃんのがんばりにわくわくしたりして聞いていました。
    今読むとすこし切ないような、わくわくだけじゃない、重いものを感じました。
    それはこどもから見た大人の姿だったり戦争のことだったり留守番のさみしさだったり、身の回りから受け取るほんのすこしの不安が描かれているからかもしれません。
    こどもにはわかる、こどもには見える、そんな世界。

  • 『わかった、クレヨンないのよ、きっと――。だから戦争するんだ』
    クレヨンどどーんが、悲しい。

  • ももちゃんが大きくなり、プーとの関係も少し変わる。妹ができたり、戦争の話題がでてくるとか、この後が気になる。

  • ある意味思い出の本(シリーズ)

    自分が小さい頃 読んでもらった本

    大人になって自分の子供が寝る前に
    何度も読んで聞かせた本

    子供のころは単純にちょっとワクワクのお話
    大人になって読み返すと
    大人の事情や複雑な親の気持ちが沁みてくる

    年代ごと、読み返す度に
    ちがった想いがにじむ


    《モモちゃんとアカネちゃんの本シリーズ》
     ・ちいさいモモちゃん
     ・モモちゃんとプー
     ・モモちゃんとアカネちゃん
     ・ちいさいアカネちゃん
     ・アカネちゃんとお客さんのパパ
     ・アカネちゃんのなみだの海

  • 子供の時も、大人になってからも大好きな本。好きすぎてずいぶん悩んだ挙句にハードカバーのシリーズ全巻を大人買いしました。特に大好きなのが牛鬼のお話。うちの娘も大好きで、寝る前に読んでやると「明日の朝ごはんは目玉焼き!」とおねだりされます。働くお母さんに読んでほしい一冊。

  • 人形の挿絵がかわいくて大好きでした。ちょっと怖くて、意味が分からなかったところが、また大人になってから読み返して味わい深い。。。

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著者プロフィール

1926年、東京生まれ。1944年頃より童話を書きはじめ、1956年、信州へ民話の探訪に入り、『龍の子太郎』(講談社)に結実、国際アンデルセン賞優良賞を受ける。以来、民話に魅せられ創作と共に生涯の仕事となる。日本民話の会の設立にかかわり、松谷みよ子民話研究室を主宰。著書に『女川・雄勝の民話』(国土社)『日本の昔話』『日本の伝説』『昔話一二ヶ月』『民話の世界』(共に講談社)『現代民俗考』8巻(立風書房)など。

「1993年 『狐をめぐる世間話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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