響きと怒り (講談社文庫 ふ 24-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (557ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061330405

感想・レビュー・書評

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  • 紙の古びた講談社文庫(高橋正雄訳)で読んだ。
    邦訳は(文豪でない限り)新しいほうがいい、というタイプだが、まあ手元にあったので。
    しかし読むに連れ、頭からネジが飛び出そうな訳で、我慢できず一章の途中でウェブ上の漁ってしまった……ら……。
    もとは1968年の世界文学全集のための訳らしく、講談社文芸文庫(1997)も同じ訳らしい。
    対して岩波文庫上下巻(2007)の平石貴樹・新納卓也訳は、もっと親切で丁寧で、親切すぎるという批判が多いくらいだ。
    まあ今回の高橋訳は、たぶん中上健次も同じ訳で読んだんだろうなーと想像しながら読んだ。
    次回は岩波文庫で再読すること(第1部の語り手の一人称は今回は「私は云々」だったが、絶対に岩波文庫「ボクは云々」のほうがしっくりくるはず!)。

    内容については……。
    第1部「1928年4月7日」視点人物は白痴ベンジャミンの錯綜した認識。
    第2部「1910年6月2日」妹姦を夢想する長男クェンティンの自死。
    第3部「1928年4月6日」次男ジェイソン。けちでせせこましい。姪クェンティンとの反目。
    第4部「1928年4月8日」視点人物は様々だが、今まで傍らに追いやられていた黒人女中ディルシーにも焦点が当たる。
    わざと卑近な言い方をすれば、「仕掛け感モリモリ」。
    ある一家が没落していく過程に、様々な方面から光を当てていく。
    父の酒浸り、母の鬱陶しさ、長男クェンティンの近親姦疑惑、三男ベンジャミンの知的障害。
    そんな中で娘キャディだけが、語り手や視点人物にならない代わりに、求められる対象として、ぎらぎら輝く。
    その娘クェンティンの小娘感がさらに、母キャディを照らし出す。
    なるほど中上が兄(自殺)と姉らへ独特な感情を持ったのと、パラレルに見えてくる……。
    いやもう現時点で書ききれないことは多いし、今後も読み返すことだろう。
    というか読み返すときには岩波文庫でと決めた。

    そして正直に既読作にランク付けすれば「八月の光」<「響きと怒り」<「サンクチュアリ」。
    あとは「アブサロム、アブサロム!」「エミリーに薔薇を」を読んで、再度ランクを見直したい。

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著者プロフィール

一八九七年アメリカ合衆国ミシシッピー州生まれ。第一次大戦で英国空軍に参加し、除隊後ミシシッピー大学に入学するが退学。職業を転々とする。地方紙への寄稿から小説を書きはじめ、『響きと怒り』(一九二九年)以降、『サンクチュアリ』『八月の光』などの問題作を発表。米国を代表する作家の一人となる。五〇年にノーベル文学賞を受賞。一九六二年死去。

「2022年 『エミリーに薔薇を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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