虚無への供物 (講談社文庫)

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著者 : 中井英夫
  • 講談社 (1974年3月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (669ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061360044

虚無への供物 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

  • ミステリにおける位置とか意義など私にとってなんの問題にもならない。ただひたすら蒼司が好き。
    普通の小説で初めて萌えを味わった記念碑的作品である。
    中学生だった私にはおぼろげな萌えしかつかめなかったけれど、のちにこの作品の前身となるアドニス掲載作品を読んでからはもうどうしようもなく私の中で不動のキングオブ萌え。

  • 中井英夫氏の著作を初めて購入し読了した文庫本。多分澁澤龍彦氏の書評で知り求めたと記憶する。日本三大奇書の一冊だが内容は三冊の中で一番正常な内容。ただミステリとしてはミステイクな構成なのでアンチミステリという奇書なのかも?短篇を書くのが生来の中井さんが何を思ったのか全ての構想が浮かんで10年掛けて書き上げた長篇。実は途中まで書いて乱歩賞に応募した曰くつきの作品で結果は選外。実際は10年以上掛けていたらしく寺山修司にからかわれた趣味の執筆日々。私自身虚無を読むのは講談社文庫版、三一書房作品集版、東京創元社文庫全集版の3回で重複する度に再読している。

  • 再読(15年ぶり?)

    たまたま手近にあったので、なんとなく手にとってしまいました。内容は完全に忘れておりました。

    前回は全く気付いていなかったのですが…どうも洞爺丸事件というのがかなり大きな背景にあるらしいですね。

    洞爺丸事件というのは、

    洞爺丸事故(とうやまるじこ)は、1954年(昭和29年)9月26日に青函航路で台風第15号により起こった、日本国有鉄道(国鉄)の青函連絡船洞爺丸が沈没した海難事故である。死者・行方不明者あわせて1155人に及ぶ、日本海難史上最大の惨事となった。 Wikipedia より。

    という実際にあった事故だそうです。

    虚無への供物といえばアンチミステリの日本三大奇書であるだの、それまでのミステリのガジェットが詰め込まれてるだの、ポオやドストエフスキー、ルイス・キャロルなどの引用が氾濫しているだの、フィクション的な部分ばかりが注目されているように感じますが、このように現実に大きく影響されている面?もあった、というのが個人的に驚きました。

    というか、初読時は現実にあった事件だと認識していなかったような…

    まあ、ファンの間では有名なんでしょうけども。

    とりあえず言えるのは、ミステリを読み込むだけではこの作品を完全に理解するのは難しそうだな、ということでしょうか。

    まあ、のんびりとやりましょう。

  • 読書の秋だしするから大作にチャレンジしてみようと読み始めたものの……一週間くらいで頑張って半分ほどまでは読み進めてきた。でも疲れちゃった。少しお休みして別の本を読みたくなっちゃったよー。面白くないわけではないんだけどね。
    ……そしてようやく読み終わりました。なんていうか…とにかく読み終わったということで。

  • この表紙と話の関係性は、わからない。

    ..が、心理描写として合っていると思う。誰のだろうか夢に出そうだ
    と思った。

    ストーリーの節々に歌、「シャンソン」があり、
    “虚無”という、
    テーマを雰囲気にまで溶け込ませた作品だと思う。

    私にとって印象的なのは、
    “誕生日が同じ"登場人物がいることだ。(4月18日)
    誕生石の話まででるという特別扱いのその人が気に入っている。

    主人公たちの“野次馬的”な、“事件との距離感”の描写、
    彼らの日常が、
    “けだるげな美しさ”を思い出すストーリーでした。

  • 牟礼田ちゃっちゃと喋らんかい
    犯人何言ってんだかわかんないよ

    読んでる間は面白かったです

  • たぶん二十年ぶりくらいで再読。今はもう講談社文庫からは上下巻の装幀も新しくなったのが出ているけれど、私が持っているのは昭和57年の重版ですでに黄ばんでシミだらけ。しかし読み終わってしみじみこの表紙眺めると、微妙に真犯人をネタバレしている・・・?という気もする。でもこっちの表紙のほうが新しいのより好きだな。

    あらためて大人になって読むと、若いころは唯一の女性主要キャラということで視点として読んだと思う久生さんが、かなり面倒くさい(苦笑)牟礼田さんと蒼司さんの関係が怪しすぎる(笑)

    その面倒くさい久生さんを筆頭に、複数の探偵役のミスリードと、真犯人を知っている人間(これも複数)が犯人を庇うためにつく嘘のせいで、どれが妄想でどれが本当のことか混乱して収集つかない(でもそこが面白いんだけど)

    シャンソンは全くわからないけれど、会話のはしばしに出てくる他のミステリーや文学作品、登場人物たちの名前のパロディ、さらに三島がモデルの藤間百合夫なんていう人物がちらりと出てきたり、氷沼家の曾祖父や祖父が作者自身の祖父や父の経歴をモデルにしていたり、細かい部分で遊びが多いのも楽しめる。

    しかしその分、解説で出口裕弘が言っているように、真犯人の動機が純文学的、つまり動機が弱い、という印象はやはり否めないですね。洞爺丸事件など実際におきた事件を多く取り入れいるのは時代の雰囲気を感じられて良かった。解説によると三島などはあえてそういった時代を象徴するものを排することで長く読まれるようにと配慮していたそうですが、逆にここまで時代の風俗を細かく描写してあるものはそれはそれで貴重な気がする。

    若いころはもっと想像力が柔軟だったせいか、コンガラ童子だのセイタカ童子だの、アイヌの蛇神だのをとてもリアルに想像したようで、まるで彼らが実在して犯罪に加担したかのような印象が残ってたのだけれど、読み直したら全然そんな重要な要素じゃなかったのが新しい発見でした。

  • ボリュームを含め、壮大なる実験小説である。探偵小説マニアな人々が集い、氷沼一族をめぐる変死とその犯人を推理しあう一見推理小説でも有る。

    読んでいる途中で気づいたのだが、「ドグラ・マグラ」「黒死館殺人事件」と並んで、日本の三大奇書と呼ばれている作品らしい。しかし訳の分からない文章でもなく、突飛な状況が起こるでもなし、さらには特異な隔離状態でもない。序盤を除いた全般にわたって平易な言葉で記載されているので、だれでも筋を追うことは可能だろう。

    しかし、ボリュームも相まって、読んでも読んでも進まないという状況が続くため、奇書と呼ばれている所以ではないかと思う。

    こういう本は全否定派と崇める派の2つにわかれそうなので、シンプルに内容を評価すると、紅、橙、蒼、藍、玄に緑と黄という色で表される登場人物や部屋が登場する。これはポーの作品のオマージュらしく、内容でも触れられているのだが、それが仇になって、登場人物のほとんどが記号化してしまっている。その他の登場人物は、全て作者の分身であり、探偵小説とシャンソンの知識をひけらかす以外のキャラクター付けがなされていないのは、なかなか読んでいて辛いところだ。

    さらに、要所要所で事件が起こるのだが、その事件を咀嚼するまでに、違うイベントが起こってしまうため、作品を俯瞰した時に、イベントの割に単調に感じてしまうのは否めない。

    文章は丁寧だし、イベントもわかりやすいのに、「読んでも読んでも進まない」と感じさせるのはその辺りにあろうかと思う。

    更に読者を遠ざけていると思うのが、特に序章での探偵小説の知識のひけらかしであろう。乱歩の続・幻影城を引き合いに出すのはいいが、いちいち固有名詞を形容詞化して、状況を語るのはいかがなものかと思う。

    個人的には奇書とは思わなかったし、「アンチ探偵小説」という読解も、最後の一言以外外れていると思う。しかし、少なくともこの本を読む前に、ドイル、ポー、クリスティー等の著作をある程度読んでおかないと、理解以前に挫折する可能性があるのではないかと思う。

  • 推理小説である。密室トリック連続殺人事件。すべてが殺人と思っていたが、最初のは、本当に事故からの病死。それと周りの人々(ナゾを解こうとした人)が犯人を追い詰めた結果、殺人を犯すことになった。不思議。

  • ★★★
    水沼家で起きた水死とガス中毒死、老人ホームの火事、舟の沈没事件、
    これらは連続殺人か?
    人が死んでると言うのに妙に張り切る素人探偵たちの繰り広げる推理合戦。それらは推理小説を基にしているので理屈っぽくて全く現実的でない。そもそも「事故」と判断されたものを彼らは無理やり「密室殺人だ!」「犯人は読者よ!」、(作中では)現実の殺人事件なのに「そのトリックは推理小説では反則だから却下」なんて得意気にやってるんだが、読者としては「そもそも本当に殺人なの?」「殺人だとしてもそんな非現実的な話があるかい!」「犯人が読者だったらあなたたちの立ち位置はどこ?」と戸惑いつつ進める。
    現代風に言えば「中二病を拗らせた」登場人物の行動や、作中作品や、目くらましのようにパズルのように示される幻想的エピソード、姦しい素人探偵たちのおかげで無用にこんがらがる事件。
    素人たちの中では一人俯瞰的目線を持つ男が「解明したくないけど、しなくてはこの素人探偵たちが納得しないから仕方なく」事件解明。
    ★★★

    「日本三大奇書」と聞いて学生の頃に読んだのですが、ミステリーとしても小説としてもよく分からず、その時はそれっきりでした。
    その後中井英夫が久生十蘭のファン(ジュウラニスト)と聞き、改めて読んでみたらなんかある意味納得しました。植物学者だった中井英夫のお父様と、戦時中は記者だった久生十蘭に交流があったというので、中井英夫こそ元祖ジュウラニストというものなのでしょうか。
    さらに中井英夫の短編集に納められていた後日談では、本編から数年後に登場人物たちが集まっておしゃべりしています。本編では旅立った”あの人”も元気でやっているようで。ここで女性キャラクターの久生に対して本編主人公が「そういえばお前の名前って久生十蘭からとったんだろ?」なんていう問いかけもあります。
    そもそも「虚無への供物」は塔晶夫名義で出したものらしいですが、フランス語の「お前は誰だ(トワ・キ)」「おおっ!」の意味と言うので、これまた久生十蘭のフランス語を基にしたペンネームから影響でもされているのか。

    そんなこんなで、外連味溢れかつ深淵な十蘭の世界で育った作者が、いわゆる推理小説を超えた推理小説を目指して筆を滑らせてみたのかということでいいのだろうか。

  • 日本4大ミステリの1つであり、東西ミステリーベスト100(2013年度版)第2位。シーソーゲームのような推理合戦は臨場感があり面白かった。

  • 何日もかけてようやく読み終わった!!長いけど一度も飽きることなくどきどきしながら読んでいたし、そのせいもあってということか、終章では敬虔な気持ちにすらなった。アンチミステリの意味も実感したし。とっても好き。(2014/2/14)

  • 長い。長い。長いけど一気に読みました。
    登場人物が推理しまくって私を惑わし
    藍ちゃんがなんだか好きで藍ちゃんの推理を聞きたく
    ページをめくってしまったり。

    不思議の国のアリスがでてきたり(私の好きなティーパーティーとかとか)
    ドグラマグラがでてきたり。
    私の知らない色々がでてきたり(しってる人はもっと楽しめる)
    作品の中にでてくる藍ちゃんが口ずさむシャンソンを
    聞いてみたくなったり。

    虚無への供物は一体なんだったのか。

    いろんな推理が出てきて結果がこれだったらなーとか色々。思いました。

  • 推理小説(たぶん)なので、あまり筋立てには触れませんが、3大奇書という評価の通り、たしかにこれはあまり経験できない味わいの本。

    合理的な推理による解決→スッキリ、という読み方が出来ない。
    一応の、推理小説らしい犯人追及があり、トリックと動機の自白がありますが、ある「共犯者」の存在が示唆されながら、物語は終わる。

    良くも悪くも現代的な小説で、全能的な探偵も登場しない。被害者も犯人も探偵も共犯?本作とはまったく関係ないけれど、ピランデッロの「作者を探す六人の登場人物」というタイトルを思い出した。

    ちょっと整理がつきません。
    相当楽しめたのは間違いありません。

  • うわさに聞く「奇書」ではなく本格ミステリーの大傑作でした。自分のミステリー読解力がわかるような気分になります。

  • 東京の不動尊が5色あったなんて知らなかった

  • 夢野久作『ドグラ・マグラ』、小栗虫太郎『黒死館殺人事件』、そしてこの、中井英夫『虚無への供物』は日本三大奇書と言われる。あるいは、日本三大アンチミステリ。そう称される作品の中で言えば、おそらくこの作品がいちばん読みやすい。
    薔薇や不動、密室、きらびやかな謎に彩られた「氷沼家殺人事件(ザ・ヒヌマ・マーダー)」と、それに挑むクセの強い探偵たちの、どこか歯車がずれているような、ともすれば滑稽と言っても過言でないような推理。ほのかな衒学趣味を漂わせるそれらは、奇書特有の、読者の理解を超越しようとする「凄み」のようなものを確かに感じさせるけれど、この作品にはそれ以上に、膨大な情報を余さず読者へと伝えようとする意志がある。つまり、ギリギリのところで読者の理解を超えない。
    圧倒される感覚を求めると、少し物足りないとも思う。しかし絶妙な匙加減は、読者に考える事を放棄させない。作中の探偵たちがそうするように、読者もまた、「氷沼家殺人事件」の真相を考えながら読み進めていく。だからこそ、事件の真相が明らかになった瞬間に、読者もまた、作品世界の住人となる。いや、作品世界が現実に侵食してくると言ったほうが正しいか。思えばこの作品は、最初から現実と地続きのところに立とうとしているのだ。その感覚は喩えようもなく甘美で苦々しく、様々な感慨や業を突きつけてくる。
    カーテンが開いて始まった絢爛豪華で精緻な舞台。知らず舞台は広がり続け、自分の足元も舞台の一部となって、読者の枠を超えて立つ。そして最後には、静かにカーテンが閉まって終わる、その瞬間を見届ける。
    私がこれまで読んできた本の中でも出色の読後感であり、確かにこの本は奇書であるのだなと、思わずにはいられない。

  • 日本四大探偵小説のひとつ.馬鹿な探偵がいっぱい出てきます.耽美で美しい作品だとおもいます.

  • 読んでいて感じた印象は、文章が綺麗だなあ、ということ。駄文悪文の多い推理小説の中で、なかなかそういう文章には出会いません。周波数があってたのかな。作者が推理作家専門でないからでしょうか。

    『奇書』はどうにも、「よし!」と気張って読むせいか、肩すかしを今まで食ってきたのですが、これも思っているほどトンデモでは無かったです。
    確かに最初の推理合戦で「トリックは今まで見たことないもの!」とか自分たちで言っちゃいはじめて、「おおこれはこの後メタメタな展開になるのだな」と思っていたら、その後は結構普通に話が進む。
    推理合戦が繰り広げられる話だと聞いていて期待していたのですが、それも最初の推理合戦は理詰めというよりもトンデモ推理とか、でなければ案外普通の推理ばかりで、あれえこれはちょっと微妙かな…と思ったんですが、事件が積み重なるにつれて事態が転々と入れ替わっていくのは、まず第一に「推理小説」として形が良く整っている。
    「アンチ・ミステリ」としても、途中のあれやこれ、最後の流れなど、途中は普通の推理小説になったけれど、全編を通して見ると確かに推理小説でありながら推理小説を批評・批判していて、なるほど、と思うところも多い。

    『ドクラ・マグラ』、『黒死館殺人事件』とこれだったら、これが一番面白かったかな。
    うーんでもやっぱもうちょっと!かなあ。

  • 今年も12月10日がやってきたので再読。

  • ミステリーとしてもすばらしいのですが、単純に全体の雰囲気が好きです。

  • NHKでドラマ化をした折、たまたまそれを見て、原作も読んでみたいと手に取ったのがこちら。見た映像を追い駆けて読む、というわけのわからない方法で読んだので(十数年前)、実はもうおぼろげな記憶しかありません。もういちど読みたいと思って、今度は新装版を買いました。

  • ミステリーズ・フリークの素人が突飛な迄の推理を始める所から始まり、奇々怪々な事件が次々と起こるのを更に追窮し、非現実被れした登場人物の眸に現実を一層狂おしく見せるという、奇抜な作品である。或る意味で、「黒死館殺人事件/小栗虫太郎」とは混沌としていくものが内と外で反対になっているとも思える。

    この小説には、現実のものが含まれ過ぎている。三大奇書と称される残りの二作や乱歩・外国の探偵小説、音楽、地名… まるでこの小説の中で起こる事件のみがフィクションで、それを書き上げる「現存在」のひとりの人間の感慨深い“日記”であるかのように。如何にも、この作品の中では推理小説を書くという描写が多々含まれているが。

    人間の悪意とは、どの点を指すのだろうか。現実の偶然は、何処まで繋がりを持つのだろうか。―或いは運命や偶然とは人為的な賚に過ぎず、疑念や固定観念を以て現実と照合すれば、必ず何かしらの―その人間の思惑に遵って―驚くような、或いは気味の悪いようなもの、狂気染みたものとして現れ出すのではないだろうか。意味有り気なものばかり拾い集め、そうして「偶然の一致」を探り出した人間は、それらの連なりに勝手な意味を孕ませ、「現実の思召し」として拵えて仕舞うのではないだろうか。

    この素人探偵たちの勝手な推理談が齎した顛末や、実際の被害者を思うと、胸が悪くなるような不愉快さを覚えずには居られず、★4つにしたい気持ちにさえなる。
    しかし、それさえもこの作品が世間一般の「ミステリー小説」でなく、人の世の苦々しさに対する作者の感傷を訴え掛ける為の作品だとすれば、これ程切なく痛ましい末路を辿る作品は他と無いだろう。

    斬新な発想や、ミステリー特有の練り込まれた展開論も然りだが、哲学的な意味でも、この作品は優れたものだと感じる。
    一見、読み辛いように思えるが、実際読み進めていくと無意識に次々と頁を捲って仕舞うような魅力を持っている。

  • 私の「2つの聖典」のひとつ。
    人間らしくあろうとする者にとって、この世はあまりにも異形の世界。

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