四つの終止符 (講談社文庫)

  • 87人登録
  • 4.03評価
    • (15)
    • (10)
    • (12)
    • (1)
    • (0)
  • 10レビュー
著者 : 西村京太郎
  • 講談社 (1981年10月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061362123

四つの終止符 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

  • 『聾学校』はあっても『聾唖学校』というものは存在しない。

    耳の聴こえない人が言葉を理解できないということはない。言葉を話すことが出来ないという訳ではない。我々が話しかけようとしないのだ。
    自分の中にもある偏見を炙り出される思いがした。

    下町の工場で働く耳の不自由な青年、晋一。ある日、病弱な彼の母が死亡するが、服用した栄養剤から砒素が検出されるや容疑者にされてしまう。彼は無実を訴えるが、信じてくれるのは場末のキャバレー『菊』の女給、幸子のみ。かくて幸子は晋一の容疑を晴らすため、素人ながら捜査を始める。

    最近、西村京太郎の初期の作品を何作か読んだが、その全てに普通に生きる人々、まじめに生きる人々、愚直に生きる人々への優しいまなざしを感じる。そして、なんらかの社会への歪みに対しての問題提起がある。しかし、それを生のままではなく、エンタテインメントの加工を丁寧に施して出すところに職人の心意気を感じる。

    捜査のバトンは手から手へと渡されていく。読了後、『四つの終止符』というタイトルが胸を打つ。ノンフィクションではなくミステリ、娯楽作品だからこそ伝わるということも確かにある。

  • ハンディキャップを持つ青年が自らの母を殺した罪を問われるが、その無実を証明するために立ち向かう飲み屋の女将の話。なぜ青年の母は死ななければならなかったのだろうか。青年が死亡前に購入したビタミン剤が引き金になっているというが、病気がちの母を安楽死させた?それとも別の理由なのか・・・
    新進気鋭、西村京太郎の初期作品のクオリティの高さ。鉄道については出てこないが、背景描写には定評があると言わざるをえない。当時の社会の障碍者に対する見方への問題提起も含まれて、読みがいのある作品。

  • 西村京太郎さんといえば、今や「トラベルミステリー 十津川警部」のイメージが強いですが、本書は氏の初の長編書き下ろし社会小説です。
    残念ながら今では絶版になっており、書店で購入することが出来ませんが、このような小説は是非とも再販してもらいたいです。

  • 聾人である晋一は、彼の母親を毒殺した容疑で逮捕されるが、拘留中に自殺します。彼の知り合いの女性が「聾者にとって唯一の支えである肉親を殺すはずがない」と考え、真相究明に乗り出します。
    特に大掛かりなトリックがあるわけではないのですが、伏線がきちんとちりばめられており、本格推理としての骨格がしっかりしています。十分に楽しめました。
    欲を言えば、自殺したホステスの真意がうやむやだったことです。もっとはっきりとした動機が欲しかったです。

  • トラベルミステリーで有名な西村京太郎による長編ミステリー第1作「四つの終止符」です。

    この作品は、聾者の置かれた厳しい現実、理解のない社会に対する痛烈な批判が、荒っぽい言葉ではなく、淡々と語られています。ミステリーとしては、いったい誰が犯人なんだろう?と、最後の方まで分からず、う~ん?と悩みますが、そのこと以上に、聾者に対する世間の冷たい扱いを改めて知り、自らへの反省も含めて、大いに考えさせられる作品でした。

    下町の玩具工場で働く晋一は耳の不自由な青年だった。ある日、心臓病で寝たきりの母が怪死する。母のためにと晋一が渡したという栄養剤から砒素が検出されたとき、容疑は晋一に集中した。すべてが不利な中で彼は無実を叫びつつ自死してしまう。

    晋一がたまに行っていた飲み屋「菊」のホステス幸子は、ある理由から晋一と懇意になっていたが、彼の無実を信じ、無実を晴らそうと動く中で、彼の自死を知り、自らも後を追ってしまう。

    同じ店のホステス仲間の時枝は幸子の無念を晴らしたいと考え、新聞記者の古賀とともに、真犯人を探しはじめる。

    貧しく、誰にも恨まれることのない晋一の母、晋一が殺したのではないとしたら、一体誰が彼をハメたのか?

    作品の中で、何度か聾学校が描かれていますが、子供たちは聾学校で一所懸命に言葉を覚え、社会に出ていくものの、社会の仕打ちはとても厳しいものでした。聾学校の中で、あんなに明るかった子供たちが、社会に出て、周りの無理解にさらし者にされ、笑顔を失っていく...。ただ、耳が聞こえないというだけで、どれだけの差別を受けるか....。

    そうして、彼らは自分たちの殻に引きこもっていってしまう....
    いや、そうさせてしまっているのが社会なのだ....

    最後に分かる真犯人ですが、何故、彼がそんなことをしたのかについては、やや釈然としないものもあります。ただ、その時点では、真犯人のことよりも、障がい者の置かれる現実の厳しさの方が重くなってしまっていました。

    本作は、1965年に松竹から「この声なき叫び」というタイトルで映画化され、また1990年には劇団GMGというところが自主映画として「四つの終止符」と同じタイトルで映画化しています。

    さらに、テレビ東京系列『女と愛とミステリー』枠でテレビドラマ化もされ、2001年1月17日に放映されています。

  • 身体障害者の問題を非常に上手く取り扱かった推理小説です。
    推理を楽しみながら、社会問題も考えさせられる作品。

  • 冤罪、差別、偏見。その裏に隠された意外な真実。人の醜さを全面に押し出しつつも、信じる心の大切さをも感じるミステリー。

  • ●長編第1作・社会派●推理小説と文学作品の融合●耳が聞こえないということは…考えさせられます。

全10件中 1 - 10件を表示

四つの終止符 (講談社文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

四つの終止符 (講談社文庫)のKindle版

ツイートする