世界史をつくった最強の三〇〇人 (星海社新書)

著者 :
  • 星海社
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本棚登録 : 298
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061385023

作品紹介・あらすじ

つまらない教科書はうんざり。世界史はこう教えてほしかった!
本書は、世界史に登場する何千、何万人もの人物の中から、歴史小説家である私が「こいつが主人公の小説を書きたい!」という基準で324人を選んだ人物事典です。事典といっても、教科書みたいに退屈なものではありません。小説家である以上、歴史の面白さを皆さんに伝えることが使命です。ですので、人物の解説には「エンタメ性」を持たせました。つまり、あら探しだったり、誹謗中傷だったり、著者の好みが思いきり反映されていたり……。
とにかく、肩の力を抜いて自分の好きな時代や人物から読んでいってみて下さい。人物が単なる記号から等身大の「キャラクター」に変われば、歴史はもっともっと面白く見えてくるはずです。

感想・レビュー・書評

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  • 歴史作家である著者が興味を抱いている歴史上の人物324人を、時代別に紹介しています。
    史実よりもエンタメ性を重視して、キャラクターとして登場させたという通り、インパクトの強い人たちが続々登場します。

    初めて聞くような無名の人も多く採り上げられますが、各人物の紹介文章はさほど長くはなく、著者のつけたキャッチコピーがついているため、コンパクトに、そしてテンポよく読み進められます。
    ゴシップに比重を置いているとはいえ、まったくの嘘を載せているわけではないため、安心感を持ち続けられました。

    例えば、レスボス島のサッフォーは、同性愛者だと言われていますが、それは後世のキリスト教保守派が恋愛詩を遺したサッフォー非難のためのでっち上げだったということ。
    今ならば名誉棄損罪に問われますね。
    また、西太后の残虐なエピソードも、多くが創作だとのこと。
    極悪非道な女帝ではなかったことに安心しますが、負けた側は勝った側の正当性のために悪く言われる、これは歴史の常なのでしょう。

    マウリア朝創始者のチャンドラグプタは、王としての栄華を極めながらも、断食修行の果てに餓死したとのこと。ウィキペディアにも載っていない激しい情報です。

    キリストの欄には「母は神と浮気したことにされた」と書かれてあり、シニカルな見方にくすりとしました。

    ネロは、芸術とお祭り騒ぎが大好きな明るい性格の名君だったのに、母の度を越した愛と帝位の重みに耐えかねて精神が壊れたのだそう。そう考えると不幸な人物です。

    諸葛亮が天才軍師というのは『三国志演義』の作った虚像で、実際には、有能な政治家ながら軍事は苦手だったと書かれていたのは、衝撃でした。
    それって軍師じゃないじゃないですか。これまでのイメージががらがらと音を立てて崩れていきました。

    ハールーン・アッラシード(アッバース朝最盛期のカリフ)は、冒険商人シンドバッドを使者に用い、『千夜一夜物語』にも登場した、とありました。
    シンドバッドが実在の人物だったとは思わなかったため、驚きました。

    イブン・バットゥータ(旅行家)は、30年分のメモを背負って旅をし、30年分の記録を故郷に帰ってからまとめたのだそう。
    そんなに膨大な年月を経てからだと、記憶違いがあるのは仕方がないでしょう。

    コロンブスの発見のせいで、ネイティブアメリカンはインディアンと呼ばれるようになってしまいましたが、彼がアフリカの西にインドがあると思っていたのは、アラビアマイルをイタリアマイルに変換していなかったため、地球を小さく見積もっていたそうです。
    同じ距離単位名が招いた混乱が原因だったということです。

    マゼランは、世界一周を目前にして殺された悲劇の人物かと思っていたら、以前にすでに世界一周は達成していたとのこと。
    フィリピンでは自分を王にしろと命じて戦闘になり、殺されたのだそうですから、あまり同情の余地はないのかもしれません。

    ドレークの欄で、「無敵艦隊」は負けてからつけられたあだ名だと知りました。
    どういうことでしょうか?回顧主義かもしれません。

    ネルソンは、トラファルガーの海戦(対仏、スペイン)で勝利と引き換えに戦死した英雄ですが。それまでに右目、右腕を失っていたそう。
    なんとも壮絶な一生を送った人だったのですね。

    ドレークのくだりで「しかし、なんでこんなに海賊は人気があるのだろうか。山賊ではだめなのか。」と書かれていたのには、笑ってしまいました。

    カメハメハ一世のところに「気の塊を発射したりはしない」と書かれてろい、すぐにピンときませんでしたが、イラストをみてはっと思い当りました。
    イラストでは大王は、思いっきりかめはめ波を出していました。

    ほかに、いいコピーだと思ったのは、ナポレオンの「ゲームにも酒にも魚の名前にも」やゲーテの「たまにダンテと混ざる」。

    リヴィングストンは冒険家だと思っていたら、布教のためにアフリカに渡ったのだそうです。
    つまり、ザビエルが密林を探検していたようなものでしょうか。

    マルクスは、経済学者としては天才だが、私生活では全くダメ人間で、召使いに産ませた子供をエンゲルスがこっそり引き取ったのだとか。
    そんなエピソードは全く知らなかったため、エンゲルスに同情しました。
    しかし歴史上では、マルクスは輝かしい栄誉を受け続けているわけですね。

    伊藤博文の欄には、いいことばかり書かれてあり、実際には幕末に要人を何人も殺したテロリストだと思っている私は、なんだか物足りなさを感じました。

    トルストイの夫婦仲は悪かったことも、この本で知りました。
    晩年の家出が謎でしたが、それは「世界の人が共感してくれるのに、妻はわかってくれない」というのが原因だとか。

    抒情的な短編をのこしたオー・ヘンリーは、投獄され、獄中から作家デビューをし、出所後人気作家となったものの、酒におぼれて病死したという、悲劇的ながらもドラマチックな人生だったとのこと。
    彼の一生が一番物語のようです。

    一番私が興味を抱いたのは、スウェーデンのクリスティーナ女王。
    6歳で王に即位したものの、27歳で退位し、諸国を巡った後ローマに落ち着いたそうです。
    若くして王位につき、そして退位した彼女がなにを思ったのか、今度彼女に関する本を読んでみたいと思いました。

    やはり歴史作家は、史実にエピソードを加えて生き生きと現実的に蘇生させることが上手。
    さまざまな人がおり、どんなに英雄でも、美しい伝説を取り去ってみれば、結局人間臭さが抜けないものだなあと思うと、かつて実在し、世界を動かした人々がぐっと身近に感じられるようになりました。

  • 名前を聞くだけで分かる有名人から、
    名前だけは聞いたことがある人まで、
    1頁足らずの数行でバッサバサ、である

    時折挟み込まれる肖像画(イメージ)は、
    彼らへの夢を持たせるのか壊すのか、
    きっと、どちらでもない絵心が潜んでいる

    新聞のスキマに置いてあると、
    時間を忘れさせてくれる本です。

  • 数ある歴史人物の中からの300人
    限られたページ数の中で、厳選の方法や紹介内容については議論の余地もあると思われます。

    しかしながらこういった視点から歴史を学ぶことが出来れば単なる暗記物の教科に留まらずより魅力的な学びの素材になるような気がしました。
    あくまで自主的な学びのきっかけになる1冊という思いを感じています。

  • 歴史小説家・小前亮さんが歴史人物の中から「こいつが主人公の小説を書きたい」の基準で選んだ324人を紹介する、エンタメ要素強めの歴史人物事典。

    275ページの中で324人を紹介するので、1人あたりの紹介文は約7行。それでも本書に登場する歴史人物はキャラが立っているせいか、どれも魅力的な人物ばかり。

    本書を片手に世界史を勉強すると、世界史をもっと面白く感じると思います。

  • 2017/07/20 初観測

  • なかなか面白かったけど、ただの人物史だけで歴史がないので、あまり頭に入ってきません。。。世界史を一通り学んだ後の方が面白そう。

  • 新進気鋭の歴史小説家による、古今東西の偉人300人をあげつらったもの。

    当然300人なので限界があるし、そのチョイスは意見あるだろうけど、今まで知る機会の少なかった古代やアラブ世界なども知ることができ、非常に勉強になった。

  • 世界史上の324人を選び出し、皮肉も交え短くまとめたもの。選び方も面白い(マジャパヒトの宰相やマリンティンなんて初めて聞いた)。もう少し調べてみたい人も。そしてイエスやマゼランの紹介のウィットといったら。切り口を変えた見方もあり興味深い。/ハンムラビ:当時の史料には、市場の物々交換レートや、標準の給料を制定した命令などがあって、四千年近く前の話とはとても思えない。/ソロモン:民に重税や苦役を課して、神殿や宮殿を建設し、自分は大勢の妻とともに贅沢三昧というものだったから、暴君そのものである。/ペリクレス:かつての敵ペルシアに亡命、地方の知事として一生を終えた。/蘇秦:「史記」は史料の不足から、蘇一族の業績を蘇秦ひとりにまとめてしまっており、おかげで蘇秦は超人的な活躍をすることになる。/イエス:「青森にも墓がある」/シャープール二世:世界史上、もっとも若くして皇帝になった人物である。なにしろ、胎児のときに即位しているのである。/ハルシャ・ヴァルダナ「一代限りの栄華」/ソーマ:マルコ・ポーロの逆を行った人/ガジャ・マダ:マジャパヒト王国の宰相。三代の王に仕えて最盛期をもたらした。/マゼラン:「ほとんど漂流」/マリンティン:アステカ首長の娘。コルテスに見初められ通訳をつとめた/クライブ:ちなみに、彼のペットのゾウガメは、二〇〇六年まで生きていた。

  • 歴史小説家が厳選?した人物がキャッチフレーズとともに紹介されている。秀逸なのは、各世紀ごとに時代背景の流れを簡潔に纏めている文章。キャラの顔の挿絵は全員欲しかった(笑)201404

  • 2014/2/23読了。

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著者プロフィール

小前亮/1976年、島根県生まれ。東京大学大学院修了。専攻は中央アジア・イスラーム史。2005年に歴史小説『李世民』(講談社)でデビュー。著作に『賢帝と逆臣と 小説・三藩の乱』『劉裕 豪剣の皇帝』(講談社)、『蒼き狼の血脈』(文藝春秋)、『平家物語』『西郷隆盛』『星の旅人 伊能忠敬と伝説の怪魚』『渋沢栄一伝 日本の未来を変えた男』「真田十勇士」シリーズ(小峰書店)、「三国志」シリーズ(理論社 / 静山社ペガサス文庫)などがある。

「2023年 『三国志 5 赤壁の戦い』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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