上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史 (星海社新書)

著者 :
  • 星海社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061385375

作品紹介・あらすじ

国立西洋美術館の「常設展」には、西洋絵画のすべてが詰まっている!
落ち着いた低い声で私をエスコートしてくれるアートコンシェルジュの彼と共に、上野の国立西洋美術館を訪れた私。じつは一年中展示されている、ここの「常設展」を観てまわれば、西洋絵画の歴史的な流れや、個々の作品の意義、そして美術の本質がひと通り理解できるようになるという。それはすごい! 期間限定の企画展に行っては、目玉となる名作を観るだけで満足し、「わかったつもり」になっていた私には、願ったりかなったりだ。いったいここで、どんなアート体験ができるのだろうか?
「さあ館内に入りましょう。めくるめく世界が広がっていますよ」

感想・レビュー・書評

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  • 若い女性を主人公仕立てに作られている。その女性が絵画の前にいたり館内を歩いてる写真が多くて美術の案内として純粋に楽しめなかった。常設展のモデルコースとしたら参考になるかもしれないが。
    わざわざ題に、上野に行って‥と付けるなら西洋美術ではないが、JR上野駅の猪熊弦一郎や平山郁夫氏らの作品にも触れて欲しかった。

  • 自分にとって未知となる領域へ踏み出すためには、背中を押してくれる良いメッセージに巡りあえることが重要である。美術のことなど全く門外漢な僕にとっても、本書の冒頭に書かれた「美術館は常設展を見よ!」という主張にはピンとくるものがあった。

    多くの人にとって興味を惹かれるであろう期間限定の企画展に比べると、一見マイナーな存在にも思える常設展。この一風変わったスコープの絞り込みが、「今から始めても、まだ間に合うのではないか」という気持ちを呼び起こしてくれる。何といっても僕には「新刊ノンフィクションだけを読め、ビジネス本は読むな」というメッセージによって、大きく道を踏み外した(?)実績があるのだ…

    著者によると、一年中開催している常設展なら落ち着いた環境で何度でも作品を鑑賞できるし、体系だった知識を得ることができるのだという。本書で取り上げられているのは、上野にある国立西洋美術館の常設展。14世紀から20世紀までの間に描かれた数多の西洋美術作品を、ナビゲーターさながらに紹介してくれる。

    ただし館内の案内表示には逆らって、時代を遡るように見ていくのが本書の特徴だ。現在から過去を眺めていくことにより、歴史の転換点、因果関係、後世へ真に影響を及ぼしたのがどの作品かなど、はっきりと見えてくるという。早くもこの技を駆使して、「すっご〜い、内藤さんて美術にも詳しいんですね」「まあな」などとやり取りしている回想シーンが頭をよぎる。いや、ほっといてくれ。

    スタートは、個性の発露が求められ華やかさと混沌を感じさせる20世紀の絵画たち。そしてこの源泉となったものは、前の時代に見い出すことができる。それが19世紀末にフランスで結成された、ナビ派と呼ばれる人たち。「見えるがまま」ではなく「思うがまま」に描くのが特徴で、日本美術における平面性の影響なども強く受けていたという。

    時代が前進しているばかりではないことを示唆しているのが、19世紀のラファエル前派。詩人としても知られるロセッティらが活躍したこの時代は、イギリスの産業革命という大きな流れを受け、原点回帰のように自然を注意深く観察することが理想とされた。

    時代と美術の呼応は、同時期のフランスにも見ることができる。民衆が蜂起して王政を打破したナポレオン3世の時代。クールベを中心に繰り広げられたのは、既存の価値観が大きくゆらぎ、写実を突き詰めることに新しさを見出す絵画であった。

    さらに18世紀の自画像を中心とした時代、17世紀の風景画が確立された時代、ルネサンス期の宗教画の時代へと歴史は駆け上がっていく。世界史の大きな流れの中で、試行錯誤や悪戦苦闘を続けてきた芸術家たち。彼らの作品をつなぎ合わせることで、人間の精神がまるで螺旋階段のように発達してきた様子を見て取れるのだ。

    だが、いくら書評を読んでもその本を読んだことにはならないのと同じで、いくら本書を読んでも西洋美術の本質に触れたことにはならない。本書が他の類書と一線を画すのは、強く行動を喚起しようとするその姿勢にある。なんといっても、実地にかかる所要時間はたったの2時間。

    そんなわけで念入りに予習を終えた後は、いざ国立西洋美術館へ。だが行ってみると「ラファエロ展」が開催しており、しかも今週末までとのこと。思わず企画展だけを見て帰ってきてしまったというネタのようなホントの話。常設展示はお家に帰ってきてからアプリで拝見しましたとさ…

  • 学生の頃、よく美術館に行った。

    結婚する前も、そこそこ美術館に行っていた。

    結婚し、子供が出来、社会的責任が出来た頃からだろうか。

    美術館から足が遠のいていた。


    昨年秋。知人のすすめである美術館の企画展に足を運んだ。
    その企画展も素晴らしかったのだが、併せてみた常設展によりいっそう感動した。

    時を前後して、この下北沢B&Bという書店でこの本と出会った。


    主人公のOLが平日半休を使い、インディペンデント・アートコンシェルジェに依頼して、上野の国立西洋美術館の常設展をじっくり鑑賞するという設定。

    コンシェルジェの案内は、前庭のロダンの彫刻からはじまっていく。

    素朴な疑問に対する、親切な受け答え。

    平日午前ということもあり、二人は入館後順路を、あえて逆回りしていく。
    「現在から過去へ眺めていくと、歴史の転換点、因果関係、後世に真に影響を及ぼしたのはどの作品なのか、そういったことがかなりはっきりとしてきます」


    2時間ちょっとの西洋絵画への旅を終えたコンシェルジェは、語りかける。

    「その画家が生きた時代の空気、社会の全体像までが作品には入っている気がしませんか。それだけのものがぎゅっと詰まっているのですから、絵を観るってなかなかエネルギーが要ることです」

    「わたくしたちが彼らの絵を観て心を動かし、その揺れをまただれかに伝えていく。そうした連環があればこそ、作品が永い命脈を保っていけるのです。今日ここでわたくしたちが作品を観る。それが美術史の一歩を刻むことになる。大げさに言っているのではなく、ほんとうにそう考えていいと思いますね」


    芸術は特別な一握りの人のためではない。

    観る人感じる人すべてのものなのだ。

  • 国立西洋美術館の入門書としては適しているが、少し演劇がかっていて興醒めになる部分もある。
    絵画史としての本としては物足りなく、素人の率直な感想が大半で読むのが辛い時もあったが、国立西洋美術館の常設展を観るにはとても便利な一冊。

  • か20150911

  • 西洋美術史を常設展をヒントに20世紀からさかのぼりながら考えていくというもの。
    いつも大々的な企画ばかりをみんな見に行って、常設展示されている美術館のメッセージに気付いてほしいという願いも込められている感じ。
    この本を読んで誰もが思うのが、もっと絵を載せてほしい、というのと、この女だれやねん、という疑問。でも、リアルタイムに館内を閲覧するごとく文章を楽しめたので良い。
    写実に徹するのか、それとも印象のまま書くのか。新たな技法を使うか、宗教に忠実になるのか。いつだって時代に反動する形、もしくは呼応する形で絵画は描かれてきた。
    産業革命からの原点回帰としてのラファエル前派の説明のところがとてもよかったが、これはこの本で勉強になったと満足できるものではなく、一刻も早く美術館の常設展に言って、その美術館のメッセージに気付きなさい。展示してあるものは、ただ美術館にあるから飾っているのではなく、ちゃんと編集されているんです。企画展ばかりに目が言っているのはお金がもったいない! という爽快なテーマで書かれているので、とてもいいと思う。

  • ストーリー仕立てというか、テレビ番組っぽいちょっと鼻に付く感じではあるが、読みやすくやすくて、入門編としては良いのでは。

  • 美術

  • 庭の彫刻作品 庭園内に6体の彫刻 5体はオーギュスト・ロダン

    地獄の門 鋳造された作品 イタリアの詩人ダンテ・神曲の名前から
    当初の構想→フィレンツェ洗礼堂にあるギベルディの天国の門(均整のとれた作品)→生々しい造形
    門の上に3つの影→3人の男性像は同じものだが角度によって異なる像に見える

    西洋画 ルネッサンス期 最初のルネサンス絵画 1425~27年マザッチョ・楽園追放 作者と作品名がセットで伝わる中世

    聖ミカエルと龍(作者不明) トスカーナ地方のシエナ・シエナ派 館内で最古の絵

    最後の展示 20世紀→歴史の評価が定まっていない・歴史がどんなジャッジを下すのか知りたい

    ジョアン・ミロ 小さな子が無心で書いたような作品 第一次世界大戦
    普段は自分の意識の下に隠れているものをさらけ出す→シュルレアリスム

    19Cと20Cの絵画をつなぐナビ派

    印象派→光を捉えることを唯一の目的にして作画 当初は批判「彼らは風景を表現していない。自分の感覚を表現しているだけだ。印象主義者だ」
    モネ 睡蓮
    1863年 マネ「草上の昼食」 裸婦人 神話などの場合以外で裸体→批判
    1865年 オランピア→大批判

    1783年 マリーガブリエル・カペ「自画像」 女性の作家 有力者の肖像画を描く仕事→自分ならこんな風に書ける。

    バロック時代 1612~13年 ペーテル・パウル・ルーベンス「眠る二人の子供」 
    フランダースの犬の主人公ネロが見たかったルーベンス アントワープ大聖堂のキリスト降架、キリスト昇架→両作品の迫力は驚くべきもの

    1610~14年 エル・グレコ「十字架のキリスト」

    祭壇画 涙の描写

  • 国立西洋美術館の紹介。

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著者プロフィール

リアス・アーク美術館館長。美術家。1971年宮城県石巻市生まれ。常設展示「東日本大震災の記録と津波の災害史」を企画担当する。気仙沼市東日本大震災伝承検討会議委員、同遺構検討会議委員および遺構施設展示アドバイザー。気仙沼市復興祈念公園施設検討委員。2004年宮城県芸術選奨新人賞受賞(美術・彫刻)、2017年棚橋賞受賞(日本博物館協会)。

「2024年 『被災物 モノ語りは増殖する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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