- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061386020
作品紹介・あらすじ
井伊氏はなぜ生き延びられたのか?直虎・直政の実像は?大河ドラマ『おんな城主 直虎』時代考証担当者と辿る、激動の五〇〇年史!
感想・レビュー・書評
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2017年大河ドラマの時代考証の一人による、鎌倉時代から彦根藩藩祖直政までの井伊家の解説本。資料を丁寧に解説して学術的なアプローチをしているがゆえに、直政以前の詳細な事績は井伊谷を失った経緯を含めてはっきりしないことがよくわかる。ただ今川末期の遠江国の争乱にはもう少し紙幅を割いて欲しかった。豊臣時代に徳川家中での地位が随分高くなっていたのは意外。四天王最年少なのに筆頭格とは…松平家と井伊家の今川家中でのバランスはどうだったのか、直政の家中や他の3人との関係はどうだったのか気になる。
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相変らず星海社の編集の方はとんでもない本をどんどん出してくる。学問とは客観的事実を明らかにすることであり、何かを主張するためにあるのではない、ということを、「主張」することなく、出版でもって示している。
本書の研究スタイルは、【本書では文章資料を重視するとしているが、ここでいう「文書」とは、同時代に受・発給された書状や領主層から出された権利書類などのことである。同時代の資料であるのだから、一番信用がおける。】【また「同時代」ということであれば、文書だけでなく、当時は日記や紀行文等を記録している人たちもいたので、それらを参照することも必要である】として、できるだけ一次資料に基づいて、歴史を浮かび上がらせている。
この本を読み終えた後だと、ある歴史本は「主張をつないでいる」のではないかとか、なんの資料に基づいているのかとか、かなり「慎重」になれる。また、一次資料をつないで、自分の「主張」に繋いでいっているかどうかなど、読む訓練になる。「主張」と「資料を読む」ことは、あまりにもかけ離れていることを示す本である。
そして、資料がなければ、資料がないのでわからない。疑わしい資料は疑わしいので参考とならない。ならないのであれば、その資料を却下するとなれば、何も残らない。何も残らないのであれば、何も残ってないからと「割り切る」姿勢ができるかどうかだ。「想像力」とか「古代人になり切る」とかすると、色々問題が出てくるだろうことを、本書から学べる。 -
家系図への疑いも含め、歴史研究の観点での記述がされており、知的に興味深い話が多い。直虎の話にたどり着くまで延々と長いので、大河ドラマの入門書としては向いていないが、この本を読んでいれば男性説に対して動揺する必要がないことがわかる。