神と仏 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 144
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061456983

作品紹介・あらすじ

人は古来、神秘という名の不思議や不安、恐怖にとらわれ、見えない神に祈願を捧げた。6世紀半ば、仏教とともに仏像がもたらされた時、日本人はそこに人間を見、来世を信じた。以来、神と仏は、陰に陽に、いつもわれわれの生活とともにある。肉体から霊魂を救済することをめざす神道、心身一如の状態を理想とする仏教。対照的な2つの宗教と、日本人はどのようにかかわってきたのだろうか。協調、融和、統合の関係を6つの側面からさぐり、日本人のアイデンティティに迫った。

さまざまの場所にいるカミ、ホトケ――古代の人間は、カミやホトケのような存在が、この宇宙空間のさまざまの場所に生息し生活しているのだと考えたとき、ようやく心の平安をえ、自分たちの生活の指針をうちたてることができると感じたのではないだろうか。現世を超越する怒りのカミやホトケ、あるいは山や川や樹木のように、われわれの身辺によりそって加護の手をさしのべてくれる慈愛にみちたカミやホトケが、しだいに一つのまとまりのある世界を形成するようになった。つまり、遠いところに超然としている天空のカミもいれば、近いところに寄りそって立つ地蔵菩薩のようなホトケもいる。そこから、さまざまな性格や属性をもつカミやホトケとわれわれ人間とを結ぶ、多様な遠近感覚が生みだされ、育てられていった。――本書より

感想・レビュー・書評

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  • 神道の考え方も仏教の考え方も、日本で生きていながらよく理解していないなと思い手に取った。
    どの章も神と仏をメインとしてテーマとしたものの構造を比較しながら解説や分析が進むので、神と仏の日本での捉えられ方、それぞれ担う領域についてこれまでより理解が進んだと思う。
    また、教科書では暗記するだけだった大乗仏教にも詳細な方針の違いが見えたりしたのも収穫だった。
    ただ、当然ではあるが正解の確かめようがないテーマは実際どうだったか不明、すなわち著者の考察止まりの部分が目立った印象。
    そもそも私が日本の宗教観に詳しくないためこの考察に対して現状は評価することができない。
    この本をきっかけに他の人の考察にも目を通し、忘れた頃に再読してみたいと思った。

  • プロローグ
    第1章 見えるものと見えざるもの
    第2章 媒介するものと体現するもの
    第3章 死と生―心身の統合
    第4章 祟りと鎮め
    第5章 巡りと蘇り
    第6章 美と信仰
    エピローグ
    あとがき

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    本書は日本の歴史における主要な宗教である「神と仏」が日本人にどのような影響を与え、どのように関わってきたのかが解説されている。
    この本では「カミとホトケ」、「イタコとゴミソ」、「死と生」、「祟りと鎮め」、「巡りと蘇り」といった二項関係を中心に解説されている、その関係性が分かりやすく解説されている。
    また、日本において「神と仏」は単純に相対するものではなく、寄り添ったり、融合したりと様々な形をとりながら日本人と関わって来たということをよく理解することができた。1983年出版と少し古い内容ではあるが、その中身が今も通用する部分があると感じた。

  • 神と仏の両方を信仰してきた日本人の精神の基層を、民俗学的な観点からの考察を交えながら論じた本です。

    仏教が民衆に親しまれてきたのは、経典に記された理論によってではなく、喜怒哀楽に満たされ、災厄や病気、事故に取り巻かれている日常の生活の中での祈りに答えてくれると信じられたからでした。本書では、民衆が神と仏に奉げてきた信仰のかたちを、イタコとゴミソ、怨霊と修験道、霊場巡りといった具体的な事例にそくして考察しています。

    テーマはたいへんおもしろいのですが、とりあげられている題材のそれぞれについて、もっとていねいに解説してほしいと感じました。

  • 虫のいいことに困った時に神様仏様とお願いする割にはよく分かっていない世界。昨年の伊勢神宮の式年遷宮にまつわる観光や神社仏閣巡り、仏像や仏教絵画などの美術品に興味を惹かれる割には根本的なことを知らないことが多すぎる。一度きちんと学ばなければ‥と漠然と考えていたら出逢った本です。
    初版は1983年と何と30年も前なのですが、テーマが明確ですし、山折先生の著書なので、私のねらいどおりに基本的なことが分かりやすく書かれていました。日本人の宗教観がどういう構造で成り立ってきたのか、神々や仏とどう関係してきたのかがよくわかりました。神は見えない存在、それに対して仏は見える存在である、ということや日本文化の重要な指標と位置づける「祟りの文化」そしてそれを鎮める呪術が開発されてきたこと。祟りの局面にはカミの機能が、それに対して影響力をふるったのがホトケの作用である。‥とする下りはなるほどと慧眼する思いでした。宗教学の基本を学びたい人にはお勧めの書です。

  • 山折哲雄著『神と仏 日本人の宗教観』は、1983年に講談社から発行された。

    「可視と不可視」、「媒介するものと体現するもの」、「死と生」、「祟りと鎮め」、「巡りと蘇り」、「美と信仰」の六つの角度から神道と仏教を見つめる。

    そこには在来の神道と外来の仏教という、日本文化と異文化のせめぎあいと、協調の軌跡がたどられている。

    日本の文化なり、日本人の宗教観なりを、ある意味で大胆に展望しているが、「相互に補完的な関係」とも言っている。

    死生観。命の終焉で、ぷっつり切れると考えるか、その後にも続くと考えるか。立ち止まって、考えてみるべきかも。

    • pacific@北海道さん
      山折哲雄著『神と仏 日本人の宗教観』は、1983年に講談社から発行された。

      「可視と不可視」、「媒介するものと体現するもの」、「死と生...
      山折哲雄著『神と仏 日本人の宗教観』は、1983年に講談社から発行された。

      「可視と不可視」、「媒介するものと体現するもの」、「死と生」、「祟りと鎮め」、「巡りと蘇り」、「美と信仰」の六つの角度から神道と仏教を見つめる。

      そこには在来の神道と外来の仏教という、日本文化と異文化のせめぎあいと、協調の軌跡がたどられている。

      日本の文化なり、日本人の宗教観なりを、ある意味で大胆に展望しているが、「相互に補完的な関係」とも言っている。

      死生観。命の終焉で、ぷっつり切れると考えるか、その後にも続くと考えるか。立ち止まって、考えてみるべきかも。
      2010/09/20
  • 仏教と神道がいかに相互補完的に発展してきたのかがよくわかる。
    「タタリ」と「祟り」の話で源氏物語などを題材に説明しているのが面白い。
    色々考えると、日本人の貪欲でミーハーな性質は重層で柔軟性のある文化を築き上では重要であると感じる。

  • うんよかった?まあ名著の一つだからね!!でも面白いですよ><

  • 正月には神社に詣るし大晦日には除夜の鐘を聞く。そんな日本人の一風変わった宗教観を斬る一冊。…日本人って宗教的にはかなりアバウトなんぢゃ…としみじみ思った一冊。

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著者プロフィール

山折 哲雄(やまおり・てつお)
昭和6年サンフランシスコ生まれ。父は浄土真宗の海外布教使。震災の被災地岩手県花巻市で少年時代を送る。東北大学印度哲学科卒業。同大助教授を経て国立歴史民俗博物館教授、国際日本文化研究センター所長などを歴任。むずかしいテーマを分かりやすく、かつ独得な視点から論じて読者を飽かさないユニークな宗教学者。専門の宗教学、思想史のほか、西行などの文学的テーマから美空ひばりまで、その関心とフィールドの広さは定評がある。『人間蓮如』『悪と往生』『ブッダは、なぜ子を捨てたか』『親鸞の浄土』など、著書は100冊を越える。

「2022年 『日本人の心と祈り 山折哲雄講演選集 CD版 全6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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