クレヨン王国 月のたまご PART3 (講談社青い鳥文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061472310

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  • 三郎の病床からの復帰、ダマーニナの活動開始、雲影刑務所でナルマニマニの小人文字解読、アラスベ商事(あらゆる全てのことをやる)の社長・ベニザル=ワーガス(本名はキザル=ワーガス)の脱獄。
    前半は全体の話が少し進行し、後半はメイン4人以外の動き。後半の方が軽い話で面白かった。

    アラエッサが名づけた"気の利く散歩"は、まゆみと三郎を2人きりにしておくためでもあり、アラエッサとストンストンもまた、二人きりのおしゃべりが楽しく、まゆみや三郎に聞かれる笑われてしまうような思い出も気安く打ち明けられた。p145
    というエピソードが好き。

    三郎はダマーニナと火山を突破する際、ダマーニナの白いベッドの中で見を守っていたが、そこは憎しみで汚れた水のプールであり、それをたくさん飲んでしまっていた影響で動けなくなる。
    アラエッサ秘伝の最後には死んでしまうが、胃が裏返るまで吐き出す秘薬を作り飲ませると、何日か吐き出し続けた末、途中肝臓を吐き出しつつ、回復した。
    一方、ダマーニナはクレヨン王国にやってきて、今まで憎しみの汚水が食事のようなものだったが、地上にでるとまともな食べ物を食べなければいけない身体になり、詐欺師にファミレスで奢られ、古びた城を紹介されつつ、宝石を渡す。ダガー書記長が年に2回点検に来る建造物の1つで、詐欺師に騙されたんだなと経緯を理解し、宝石を取り戻す。
    一方、ナルマニマニは小人文字を解読し、何か危険なことが起こる予言を知る。そこへワーガスが投獄されてすぐ脱獄する仲間を募るが誰も手を挙げず、目に入ったナルマニマニにどうだ?と誘うと承諾。赤い顔の猿だと思われたワーガスだが、実は仮面を被っており、本当は黄色の顔。お面の中に脱獄道具を隠していた。同じ黄色の顔のナルマニマニに親近感があったのだった。檻から出て、所長の赤いスポーツカーで逃亡。ワーガスは途中で降り、ナルマニマニはしばらく車。実はその車は追跡されていたが、ナルマニマニがおかしな行動をとるまで手を出さないことになっていた。
    サードを称える神殿を作っていたが、まゆみ達がずっと川魚しか食べてないので何か買いに行こうと代表でまゆみが行くついでに、神殿で祈願。すると、ごせいもくさまはダマーニナだった(まゆみは知らない)。ナルマニマニがまゆみを目撃。
    予言の魔女はまゆみだろうと考え、小人の予言書とまゆみを城に差し出して昔の生活に戻ろうと考えていた。午後9時に会おうとダマーニナと約束しており、やってきたまゆみをナルマニマニと教え子が誘拐する。が、弟子は逃げ、監獄の追っ手に捕まる。まゆみは消えていた。
    その頃、かつてさざなみミラーをはめていた中指が痛み出した三郎はまゆみの危機を察し、助けに向かう。


    ストンストンは笹舟の作り方を知らないなとまゆみが見抜くと、アラエッサは子供の時代というものが欠落してると指摘していたが、ストンストンはまだ1歳なんだから仕方ないだろと思う笑(アラエッサは5歳らしい)p155
    永遠に、可及的速やかに。

  • ゆっくりできないね。
    クレヨン王国、夢の国。
    でもそれは、理想の国って意味とは違う。
    なんでもありの国なんだろう。
    だから人の想念も渦巻く。
    良いものも、悪いものも。
    いや、初めから良いも悪いもないのだろう。

  • 序章(1巻と2巻)が終わり、そろそろ不安な展開。

  • おもかげ池のコブシを君に見せたい、おもかげ池でふたりでボートに乗りたいという夢、切望、後悔をようやく叶えた三郎。

    p8
     まゆみは、三郎の黒々と光る二つのひとみだけを感じていました。そして、それが自分のひとみの影のようにも思われました。
     ――あれは、三郎さんの目だけれど、あたしの目がうつってもいるんだわ。あたしの目もあれと同じ、そっくりうり二つなんだわ。――
     三郎の目の中に、自分のすべてがすいとられて解放されていく感じと、反対に自分の胸の中に、三郎のすべてを入れてふくらんでいく充実した快感とが、すう息、はく息のように、かわりばんこにやってきました。それは、自分という生き物が、いかにもあたたかく生きているという感じでした。

    このまゆみが、三郎の吐いた青黒いエキス、あの毒の水を、彼の愛するクレヨン王国を汚さないために身を持って飲んでおさめようとした気持ちなんて……

    p56
    「花が好きなの。それに、なぜ、花がきれいなのかって、そのわけ、知ってるの。」
    (野鳥クラブの仁科先生の受け売りだからと言いながら)
    「むかしは、植物は、シダみたいなものばかりで、花なんかなかったんだって。そうよね。」
    「うん。」
    「こん虫たちがでてきて、植物は花びらのきれいな花をつくったんでしょう? 虫たちは、茎の汁をすったり、葉を食べたりして、けっしていい友だちばかりじゃなかったと思うの。でも、植物は、それを外敵としてしりぞけないで、いっしょに生きていく道をえらんだ。そのやさしさが、つまり花の美しさなんだって。虫をもてなすために、みつを用意するなんて、たいへんなことでしょ。手も足もないのに、どうしてそんな仕組みができたのか、考えられないくらいでしょ。花が虫でない人間にもきれいに見えるのは、虫という異分子と強調して栄えていこうという、やさしさとかしこさのしるしだからって、仁科先生はいった。こうもいったわ。もし、地球に宇宙人があらわれて、かってなことをはじめたら、きみらはどうする? 追っぱらおうとしたり、どこかへかくれようとしたら、それはシダと同じなんだって。宇宙人といっしょにやっていこうというやさしさと勇気のある人が、花のある人なんだって。花は人間の進む道の手本を見せてくれているんだって。だから、人間だけで栄えていこうという人には、花の美しさは、わからないんだって。ね、三郎さん、いい話だと思わない?」


    p62
    ここで語られるゲートック医師の悲しい過去。
    友人を、自分がちょっとした皮肉を込めて発した言葉で、死なせてしまった悔恨。嵐の波間に浮かぶのは石かオットセイかとの言い争い。
    「そのとき、わしは、なんと冷笑的な目つきをしていただろう。この目つきばかりは、いまでもゆるすことができない。当然、クーツは、わしをあざわらうために、海にむかって、とびこんでいった。やつが灰色のものに近づいたとき、灰色のものは、目だって、はっきりと動いた。そして、白い波がかぶさり、わしは友だちを失ってしまった。
     口はわざわいのもと、とはよくいったものだ。しゃべる必要のないことを、しゃべってはならない。これが、医学士ゲートックの、きみたちへの忠告だ。」
    ……本当に……。


    キザルのワーガスも登場! 『七つの森』で、ただ泥棒として出てきたワーガス、こんなに大泥棒だったのねえ。


    この本のあとがきを読んだときに、お手紙書こうと思って、書きたいと思って、そのままにしてしまったんだよねえ……
    後悔しないように、と、今なるべく思って、いいたいこと伝えたいことを伝えるようにしているけれど、それで失敗して後悔することもまだまだ多い。そのやり方も学んでいる途中。

    福永さんは、ライオンが私が子にやさしい表情を向けていること。車内の赤ちゃんに、大勢の乗客がやさしい眼差しを向けていることから、
    「これからおまえが生きていくうえで、いちばんたいせつなのは、こういうやさしさなんだよ」
    と教えているのではないかとさとる。
    そうでなければ、ライオンは厳しいだけで強さを伝える筈だからと。
    「どんな猛獣も、まず、やさしさから教える。それは、やさしくなければ、種として生き残れないからである。子どもを産んで育てる、という行為は、やさしさがなければ不可能なのだから」
    「童話は、人生のいちばん最初の読み物である。生きるうえで、いちばんたいせつなもの、やさしさ、それを書けばいいのだ」
    「だから、わたしは、ダマーニナにもやさしくするつもりである。かといって、それは、彼女の運命を過酷にしないという意味ではない。まゆみも、ダマーニナも、神が課している、それぞれの道をつき進んでいかなければならない。それが真剣に生きるという事だから。」

  • ダマーニナ(悪女)始動。思惑がどんどんからみあって徐々に複雑になってきました。幸せいっぱい夢いっぱい、なお話じゃなかったんだなあと改めて納得。まゆみちゃん頑張って。でもダマーニナも可愛いです。

  • 「月のたまご」を助けた三郎は、地底をさすらううちに、かつて「月のたまご」の乳母だったダマーニナに会った。火山の爆発でクレヨン王国へ生還できた三郎のまゆみを思う愛の強さが、まゆみを王国へ呼びもどし、やっと再会した二人。だが、ダマーニナのにくしみの青い水を飲んだ三郎は、きゅうに苦しみはじめ、息もたえだえに・・・。医者を呼び、何とか助かった三郎の代わりに、白藤山の月の宮へ向かうまゆみだったが、そこでごせいもくさまと会おうとした矢先、何者かに連れ去られてしまう。

    ようやくサードとまゆみが再会し一段落かと思いきや、今度はまゆみが危機にさらされます。ダマーニナに捕まったわけでもないし、ナルマニマニ博士からは逃げられたようですが、三郎の直観からして何が起こったの?!と気にせずにはいられません。続刊求む。博士はせっかく脱走できたのにダガーに捕まってしまって心配。早く無事に帰還できるといいなぁ。アラスト組はサードとまゆみを気遣ったり、彼らなりにやれることをやろうとしてる姿がちょっと大人になったなと感じます。月のたまご探検隊の活躍が楽しみ。早く四人そろうといいね。

  • 0605

  • 2008/05/06読破。
    まゆみとサードの恋って多分、なんか忘れてたものを思い出すから好きなんだと思う。

  • この辺り記憶にある!読んだんだな〜。それにしても、一体どうなる事やら、収束の雰囲気が全くない(笑)三郎とまゆみは離れたままだし、どうなる事やら・・・早く次次!!

  • 無事再会できたまゆみと三郎。再会の喜びもつかの間、三郎に異変が・・。

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著者プロフィール

名古屋市生まれ。早稲田大学文学部国文科卒業後文筆活動に入る。1956年 オール読み物新人賞受賞。1963年 モービル児童文学賞受賞。1964年 『クレヨン王国の十二か月』で第5回講談社児童文学新人賞受賞。1968年から1988年まで、自然に親しむ心をもった児童を育てる目的で学習塾を開く。
2012年逝去。主な著書に『クレヨン王国』シリーズ47タイトル、『静かに冬の物語』(以上すべて講談社刊)などがある。2012年逝去。

「2016年 『クレヨン王国黒の銀行(新装版) クレヨン王国ベストコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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