今こそマルクスを読み返す (講談社現代新書)

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  • 講談社
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感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061490017

感想・レビュー・書評

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  • 名著

  •  270頁の新書でコンパクトな内容だが、難易度が高く濃密。これほど難しい新書、他に知らない。
     終章、国家の止揚(国家の死滅廃絶)まで言及する著者、廣松先生。バリバリの左派ぶりに苦笑。

  • 1989年以降の東欧民主化を経て、1991年にはついに社会主義陣営の盟主たるソ連が崩壊し、事茲に至って社会主義の教祖と崇め奉られたマルクスの権威は地に堕ちた。こうした激動の渦中にあった1990年、著者は『マルクスと歴史の現実』および『今こそマルクスを読み返す』を上梓し、マルクス軽視の風潮に警鐘を鳴らしている。関係主義的世界観と物象化論に定位するマルクスは、物象化によって隠蔽された資本主義経済体制における賃金奴隷制を告発する。それこそが『資本論』の要諦だ。もちろんマルクスも『資本論』執筆過程でいわゆる「修正資本主義」への変容に気付いており、資本主義から共産主義への移行過程、延いては資本主義のアンチテーゼとしての共産主義イメージについても素描の域を出ない。しかし、資本主義が資本主義である限りマルクスによる原理的批判は妥当し、社会主義陣営が自壊した現代世界においても、いかなる未来社会を目指すかは我々自身の課題となる。

  • 一章 マルクスの開いた新しい世界観
    二章 『資本論』で言いたかったこと
    三章 資本主義の命運と共産主義革命

  • 著者のマルクス論を簡潔に提示した入門書。

    著者は、西洋の実体論的発想と対置される、関係の第一次性の立場から、マルクスの思想を理解する。著者は『資本論』の内容の紹介に先立って、みずからの物象化論の概要に触れている。「物象化」とは、人と人との社会的な関係が、日常的な意識において自立的な物象の相で現象する事態を意味する。ただしこの物象化を、心的ないし精神的なものが物的ないし客体的なものへと転化するという仕方で理解してはならないと著者は言う。そうした理解は、近代哲学の二元論的対立を前提としている。だがマルクスは、そうした二元論的な枠組みを解体し、関係の第一次性の立場に至ったというのが著者の理解である。それゆえ「物象化」も、そうした関係が物象の相で現われることと理解しなければならない。

    こうした物象化理解に基づいて、『資本論』の内容が検討されてゆく。まず、投下された必要労働量に応じた「価値」が物象化され、その価値に応じた交換が「等価交換」として思念されることになる。マルクスは、こうした等価交換の考えに基づいて、雇用労働に対する対価が労働能力の生産・再生産費とみなされるようになることを指摘し、さらにそうした資本主義の進展が剰余労働の搾取、領有法則の転回に至ることを論じた。

    他方で、資本主義において労働力は他の商品と同様に扱われることになることに注意しなければならない。それは、労働力の購入者である資本家が、購入した商品である労働力を、みずからの権限で使用できるということを意味している。ここからマルクスは、資本主義において労働者の形式的包摂にとどまらず実質的包摂が生まれ、「賃金奴隷制」が成立することを説いた。

    著者はこうしたマルクスの思想を紹介した上で、資本主義の克服は単なる法的レヴェルにおける生産手段の私的所有制度の廃止だけでは不十分だと述べている。私有財産制を廃して全生産手段を国有化したところで、国家という報人資本家が国民を雇用して賃労働をさせる「国家資本主義」が生まれるにすぎないのであれば、賃労働制度の止揚は実現されない。マルクスは私有財産制の廃止は必要条件の一つにすぎず、労働力の商品化・物象化を止揚した自律者社会を理想的未来像として思い描いていたのだと、著者は主張している。

  • エピステーメーとして、マルクスの時代でつかわれ畸形化しちゃった、手垢べったちの術語が、僕には、どうもこうも、どうしても、うるさくてうるさくて。で、俺、その時代の人間じゃない。ゆえに辛い。ホントそう思う。
    だからつまり、えーと、まずちょっと読みにくいかな?ってな本っていうのがベースにあって、新書なのに真面目系、真面目系なのに飛躍する。そんな感じ。そんな本。うん。ヘーゲル的な流れと現代の問題意識との間にはやはり断層があるんだねって、そうかんじられたたことが、それはそれで収穫で、でもそこから何も感じ取れないのかっていうと、割り切って読めば、愛すべき、いやでも飛んでもごめんなマルクス本。つまり嫌いじゃないねって。
    でもさ、ヘーゲルと現代との間には断層があるって、今いっちゃったけど、間には断層があるって、コトバの使いようによっちゃあ単なるトートロジーだよね。術語とか、その語法とか、そういう畸形化してるとこはいったん置いといて、いわゆる、サルトルとレヴィストロースとか、ファイヤアーベントとか、いろいろ、そういうわかりやすい時代の流れとかその交代って、むしろ、弁証法ってかたちでは、ある意味予言されてるんだよね。期せざる形で達成しちまったわけでこっちから見れば、もう、快哉!いや面白いんだけどさ、むしろ、そういう意味で、いえば、人文には、起源なんてあるのかね。
    そんなこと考えて読んでたよ。
    つまり、あまり集中して読めなかった。
    作者さんごめん。

  • 他の2冊とともに一旦積ん読。理由はサクサク読めないので、時間の無駄感が出てきているので、質も低下している。

  • 20120305Amazonマーケットプレイス

  • 難しかった。社会主義はマルクスって言われてるけど、ソ連のマルクス論は実は少しずれていた。-という感じです。資本論も触れていたんだけど、私には難しすぎて、3割理解したらいいところ。いつか読みなおして、その時「こうゆうことを言ってたんだ」とわかる大人になりたい。

  • 第一章 マルクスの開いた新しい世界観
    第一節 人間観をどのように改新したか
    第二節 社会観をどのように更新したか

    ……以下、目次が全部14文字ぴったり。

    第二章 「資本論」で言いたかったこと

    括弧あわせて14文字。芸が細かい。廣松渉絶対A型。

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