折口信夫を読み直す (講談社現代新書 1230)

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  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061492301

作品紹介・あらすじ

民俗学・芸能史・国文学に独自の学説を立てた折口信夫。鋭い直観から生まれたその理論の魅力と欠陥は。まれびと・依代・他界などの名彙をほぐしつつ折口学の体系を検証する。

感想・レビュー・書評

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  • 膨大で独創的な折口信夫の論を分かりやすくまとめ、現代の視点からその体系を検証した本。民俗学の本をある程度読んだ人間としては、「この考え方も折口発だったのかー」というのが色々あって面白かった。

  • 折口信夫について一切の知識がなかったので、彼について、ざっくばらんに知るために読んだ。

    折口の生涯などには一切ふれず、彼の著作の流れ、基本となる著作の紹介と、著作にたいする筆者じしんの批判。批判は、誠実な検証がなされているという感じがして、すごく好感が持てた。(ただ、好感が持ててしまうだけに、折口初心者なので、折口にたいする不信感が募った)

    折口は、日本民俗学の領域で、柳田國男とならぶ双頭であること。柳田に触発されて多くの論文を発展させていること。(柳田が庶民の生活の解明につとめたのに対して、折口は芸能史や国文学の研究につとめている)

    柳田の研究は、帰納的、個別的。多くのデータを取ることで自然科学的に実証していた。

    対する折口の研究は、演繹的、体系的であった。実感尊重主義であり、かぎられた資料をもとに、実感を駆使して頭の中で理論をくみたてる。のちになってその理論に都合の悪い資料が出てくると、素早く理論の組み替えをおこなうが、前の理論との整合性には考慮がはらわれず、矛盾した理論がかれの名前のもとに同居することになる。

    紹介されている折口の論は、
    まれびと、翁と三番叟、依代、鎮魂、常世・他界。

    データとして使えるのかは甚だ疑問に思ったが、紹介されている折口の思想はどれも魅力的。まれびとの考え、依代のところ、神への犠牲は殺すべき神の身代わりである。個人は異教の人を他界人と考えた。など。

    その他、筆者の書いていることで面白かったこと
    犠牲が神の身代わりではなく、神そのものであること。(アイヌのイヨマンテ)
    折口の天皇論が、戦時の国民にイデオローグとしてもたらしたこと
    折口の天皇論では、天皇霊論のモデルが、沖縄地方の支配者の支配権を保証する世かけセジにあること(天皇の起源)


    筆者の論が中心的ではあったが、そこまで筆者が前面に押し出てきてうるさいわけでもなく、説明もすごく分かり易かった。

  • 折口に関しては概要しか知らないのですが、ある程度の彼の理論に対する知識がないとやや読みづらく、用語解説もほとんどありません。
    彼の主要な理論を項目ごとに分けて整然と批判を加えていくのですが、そのために引き合いに出される国内ないしは中国、朝鮮の宗教的儀式の数々が非常に面白く、興味深かったです。
    彼の研究は日本の原信仰からあの世観、能などの古典芸能まで幅広く、この本の中でどれもある程度触れているので、民俗学にあまり明るくない自分でも十分楽しんで読めました。

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著者プロフィール

1934年、新潟県新潟市に生まれる。新潟大学卒業、東京大学人文科学研究科博士課程修了、文学博士。学習院女子短期大学教授、学習院大学文学部教授を経て、現在学習院大学名誉教授。前国際浮世絵学会理事長。元日本近世文学会代表。大韓民国伝統文化研究院顧問。研究領域は近世文芸、浮世絵、比較民俗学、比較芸能史。

●主な著書に、『愛と死の伝承』、『近松世話物集(1)(2)』、『歌舞伎開花』(いずれも角川書店)、『元禄歌舞伎の研究』、『近世芸能史論』、『近松世話浄瑠璃の研究』、『親鸞の発見した日本─仏教の究極』(いずれも笠間書院)、 『忠臣蔵の世界』(大和書房)、『江戸その芸能と文学』、『近世の文学と信仰』、『心中─その詩と真実』、『出版事始─江戸の本』(いずれも毎日新聞社)、『日本王権神話と中国南方神話』(角川書店)、『大地女性太陽三語で解く日本人論』(勉誠出版)、『鶴屋南北』(山川出版社)、『日本の幽霊』(岩波新書)、『日本の祭りと芸能』、『北斎の謎を解く』(いずれも吉川弘文館)、『霊魂の文化誌』、『江戸文学の方法』(いずれも勉誠出版)、『安倍晴明伝説』(ちくま新書)、『日本人と遠近法』(ちくま新書)などがある。

「2017年 『能・狂言の誕生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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