キング牧師とマルコムX (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061492318

作品紹介・あらすじ

「夢」のキングと「悪夢」のマルコム。黒人運動の二大天才指導者の思想を通して問うアメリカの「現在」。

感想・レビュー・書評

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  • キング牧師とマルコムXの2人の人生を
    比較しながら記載されていて、分かりやすいし面白かった。

  • キングの主張は「白人に受け入れられる為に白人を愛するのではなく、白人よりも道徳的に優位であるとアピールして彼らの良心を呼び覚ます」もの。
    白人の人格は人種的隔離という制度で歪められたもので黒人が彼らを愛する事で報復はしないと彼らに気づかせる必要がある。相手への不安と恐怖がなくなれば彼らの社会に浸透出来るはず。暴力で相手の行動を変えても精神的に勝った事にはならないといった考え。
    公民権運動開始時、制度的差別があった南部では希望があったが、後に北部在住の黒人の経済状況を知って権利だけでなく黒人の生活水準を引き上げる経済的公正が必要と考えが変わる。

    【アフリカへの認識】
    アフリカという出自に誇り持つよう主張し白人と交わる事に反発するマルコムXに対しキングは自分達はアフリカ人ではないとアフリカ文化には無関心
    マルコムXもアメリカに援助される立場のアフリカ諸国に支援求めるなどズレている所があった。

    【思想的な接近】
    最終的にマルコムXはアフリカの第三世界との連帯、キングはベトナム反戦からアジア黒人の解放を考え、両者ともインターナショナルな社会主義に接近していたと筆者は考えている。

  • 黒人の公民権運動について、思想を異にする部分もある2人をフィーチャーしており、時代がどう揺れ動きながらも前進していったかがよくわかった。ただし、筆者の考察が所々府に落ちない部分があり、読み進めにくいこともあった

  • 対照的な二大公民権運動指導者の思想と足跡を通して、黒人社会を読み解く。なぜキング牧師の非暴力思想と相反するブラック・パワーが生まれたのかが分かる。

  • キング牧師の思想◆マルコムXの思想◆キングとマルコムはどう違うか◆現代に生きるキングとマルコム

  • 本書が刊行されてから20年以上経過しているのですこし古い記述もありますが、2人のバイオグラフィが短く纏まっていて、それを良く知ることができました。
    人種差別は決して許容されてはならない!

  • 2人のバイオまではちゃんと読んで、そっからは速読でした。というのも、前半で書いてあったことの繰り返しが多いためで、借りたのが古い版だからかもしれませんがちょいだれますね。あと、2人の思想を読み解くこととアメリカの「現在」に、というテーマがテキストからは見えづらくて、ちゃんと読んでないからかもしれませんけど。なんでこれ借りたかというとマルコムXって名前がそういえばカッコイイよなと思っていたからなんですが、彼の思想を見るにつけヤコペッティ監督の作品に影響を与えたんじゃないかと。

  • 「アメリカの夢」を求めたキング、「悪夢」から出発したマルコム。育った環境の違いが別々の方向へ二人を導いたこと。困苦と怒りに端を発するマルコムは極端な思考に偏りがち、非暴力の力を信じたキングは現実の抵抗に遭い破綻していく。二人がいずれも暗殺され夭折しているのは大変残念なことに思いました。古い本なので社会問題を考えるというより、人間の限界とそれをいかに乗り越えるかに思いが至りました。

  • 黒人問題の活動家二人、どちらも知っているが、具体的に何をどうした人なのか実はちゃんと知らなかったので、やや古い本だけど読んでみた。黒人大統領が誕生する前に書かれた本だけあり、最終章の総括はやや時代感を覚えるが、それ以外は必要にして十分な知識は得られる。

  • この本が出版されたのは1994年である。
    今から20年前の本だが、この当時、おそらく著者が抱いていたであろう「分離主義の危険」は今もより根深い問題として残っているのではないだろうか。
    「キングが唱えた非暴力による公民権運動によって、今日の黒人の発展がもたらされたことは、だれも否定できない事実である。しかし、その発展の恩恵を受けていない貧困層が厳然として存在することも明らかである…貧困層の絶望が深まれば深まるほど、白人との統合を拒否し、分離主義が強まっていく危険性が高くなる。黒人の児童を白人の児童から切り離し、黒人だけの学校をつくろうとする動きもある。黒人の児童に劣等感を感じさせないようにするには、分離教育がよいのだという」(18頁)
     ここで筆者の述べる懸念は、この分離主義が経済格差の問題とリンクして、台頭してきていることだ。これは将来アメリカの分裂につながるのではと危機感を抱いている。
    こうした点ではキング牧師もマルコムXもそれぞれの出自やその思想は当初異なっていたが、次第に重なる部分が現れてきたのだという本書の指摘は重要であり、興味深い。
     キングとマルコムの行動の重なりでいえば、両者とも人種的な誇りや自立への努力を訴えたことだろう。キングもマルコムも人種を超え、社会において恵まれない境遇の人たちに誇りを持たせ、自立を促し、その救済を指向していた。その中には白人の貧困者まで含まれるような運動を展開していた。そうした視点は今もなお重要だと思える。

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著者プロフィール

1942年、東京生まれ。東京外国語大学卒業後、時事通信社、小学館、在日アメリカ大使館を経て、桜美林大学教授(アメリカ研究)。2013年から同大学名誉教授。
著書(単著)には、『現代アメリカの保守勢力――政治を動かす宗教右翼たち』(ヨルダン社、1984年)、『アメリカ黒人のジレンマ――「逆差別」という新しい人種関係』(明石書店、1987年、増補版1992年)、『アメリカの貧困と不平等』(明石書店、1993年)、『キング牧師とマルコムX』(講談社現代新書、1994年)、『神の国アメリカの論理――宗教右派によるイスラエル支援、中絶・同性結婚の否認』(明石書店、2008年)、『オバマの誤算――「チェンジ」は成功したか』(角川oneテーマ21新書、2010年)、『アメリカの黒人保守思想――反オバマの黒人共和党勢力』(明石書店、2014年)、『カリフォルニアのワイン王薩摩藩士・長沢鼎――宗教コロニーに一流ワイナリーを築いた男』(明石書店、2017年)がある。
訳書には、アンドリュー・ハッカー『アメリカの二つの国民』(明石書店、1994年)、シーモア・M・リプセット『アメリカ例外論――日欧とも異質な超大国の論理とは』(明石書店、1999年、金重紘との共訳)、ティム・ワイズ『オバマを拒絶するアメリカ――レイシズム2.0にひそむ白人の差別意識』(明石書店、2010年)がある。

「2023年 『宗教からアメリカ社会を知るための48章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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