- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061492523
作品紹介・あらすじ
紋章に刻まれた言葉は協調・完全・勤勉。家訓は「語るなかれ」。徹底した秘密保持と、一族の結束と連係で国際金融を制覇し、今なお世界を牛耳る巨大財閥の実像を描く。
感想・レビュー・書評
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よくは知らないが、誰もが耳にしたことがあるロスチャイルド。この本は読みやすく、彼らの歴史と全体像が分かる。
ロスチャイルドの歴史を知ることは、ヨーロッパの近年の歴史と現在を知ることと言えるくらい、ヨーロッパ諸国への影響力は大きかった。商才のあった1代目マイヤーは、5人の子供に意志を受け継ぎ、やがてその巨大財閥の原型を確立させていく。
まだ連絡手段が未発達の時代にヨーロッパ各国に五人が散らばる、というだけでも難儀であるのに、逆にその各国にいるための情報収集や情報操作などのメリットと、多くの財産を十二分に生かした戦略で繁栄し続けた。その後の分家消滅や分裂はあったが、なんとかパリとロンドンの分家は生き延び、今日に至る。
知ればロスチャイルドは銀行業務だけではなく、色んな産業や有名企業の創業や業務に関わりを持ち、アメリカ大陸にも進出しその幅広さに驚いた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ロスチャイルド一族の歴史について書かれた本。
ともすれば、陰謀論とともに語られるイメージだが、内容はロスチャイルド一族の歴史を丁寧に紐解いている。
個々の細かい知識は覚えられはしないが、金融を握ったロスチャイルド一族が世界を動かしていたこともあることから、世界の流れの中での金融の重要性を改めて認識させられた。また、ユダヤ人への興味がますます深まったので、機会があれば他の本も読んでいきたい。 -
[家の中の家]近代ヨーロッパにおいて、その卓越した情報力と金融力を基礎として栄えたロスチャイルド家。その影響力と知名度の大きさから、時には陰謀論と絡めながら語られることすらあるこの一族の歴史を、史料に基づき丁寧に記した作品です。著者は、上智大で学び同大学で教えたこともある横山三四郎。
私もそうだったんですが、「ロスチャイルドという名前だけは聞いたことのある」という方にぜひオススメの作品。どのように家を興し、発展し、今日に至るまで栄えるグループを作り上げていったかがわかりやすく解説されています。また、一族が仕出かしてしまった失敗についても記されているので、コンパクトでありながらバランスの取れた一冊になっているかと。
ロスチャイルド家の物語が近代ヨーロッパの物語に織り込まれながら解説されているのも本書を読み進める上で魅力に思える点の一つ。その時々の時流にどのようにして乗っかり、また時流そのものを作り上げていったかが丁寧に示されています。それにしても、情報の重要性を地で追求した初代の視野の広さは、当時の基準からすればとんでもないとしか形容のしようがない......。
〜ロスチャイルド家でもっとも驚くべきことは、創業以来二〇〇年を経て初代マイヤー・アムシェルの後裔たちがなお時代の最先端を走り抜く気迫、才能、感性をもっていることではないかと思う。〜
スケールが大きすぎて☆5つ -
・ユダヤ人がイスラエル建国を目指すシオニズム運動にはロスチャイルド家としては元来消極的な立場を取っていたが、第二次世界大戦後はユダヤ人への同情世論もありその立場を変えはじめた。
・ワーテルローの戦いの際の相場操縦やアーヘン会議における賠償問題に対する各国への圧力など、政治経済において相場操縦によって影響力を多大に発揮してきた。
・ラフィットとムートンのワイン戦争やイギリスのワドスドン館という城など社交界においても王を招くなどして影響力を発揮した。
ロスチャイルド家の表の歴史を学ぶには良い。著者はロスチャイルドのユダヤ陰謀説を事実無根と否定する立場である。しかし’95年発刊ということで致し方ない面はあるかもしれないがフリーメイソンに言及しないのはいただけない。イルミニテイはともかくフリーメイソンの一員であることは公言されてるしその内実を知りたかったが、本書には一切書かれていない。また上記シオニズムについては第二次大戦後に消極的だった立場を変え始めたとあるが、180度スタンスを変えて大きく推進しているようにしか見えない。それならそれで良いのだがなぜシオニズムにはあまり関与していないような印象をもたせようとするのか。裏の情報は出てこず公の事実を知るに留まるのでこの本をベースにさらに深掘りをするには良いと思う。 -
2014.08―読了
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名前は知っているものの陰謀的なイメージしかなかったので、網羅的に丁寧に説明がなされていて面白かった。ワインやツタンカーメンなどネタになる。
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世界史の学習をしているなかで、ユダヤ人が陰で大きな影響力を持っていることを知りました。
中でもロスチャイルド家というユダヤ人一族は、莫大な財力を背景にスエズ運河株買収などといった歴史的場面でも活躍し、現在に至るまで世界への影響力を持ち続けている、、、ということを耳にしたので、同一族の歴史について学習しようと思い、本書を手にとりました。
この類いの本は「陰謀論」に終始していることが多く、本書についてもあまり期待はしていなかったのですが、予想に反してしっかり史実と結びつけて丁寧に説明がなされていて満足のいく内容でした。
主に近代ヨーロッパ史の重大な局面においては、常にロスチャイルドの陰があったということを知ることができ大変興味深かったです。
○歴史的視点
大陸封鎖令を逆手に取ったビジネスモデルやウェリントン将軍へ秘密裏に行われた後方支援などは、ナポレオンの苦しむ顔が見えるようで物語としても楽しめました。
○経済的視点
鉄道や石油といったものの黎明期に先駆けて投資していく先見の明とロスチャイルドネットワークには驚きました。「情報は金」ということを心得ていたんでしょうね。
○雑学的視点
ツタンカーメンの発掘における資金援助や5大シャトーとロスチャイルドというような雑学的な部分も本書で初めて知ったことでした。
人種的逆境をものともせず、幾多の戦乱をくぐり抜けてきた「五本の矢」と「赤い盾」
その英知を知るということは、現代そしてこれからを生きる私達にとって大変意義深いことであると思いました。
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2019年9月6日読了。
●初代→マイヤー・アムシェル(古銭商から出世)
フランクフルト家→アムシェル・マイヤー
ウィーン家→サロモン・マイヤー
ロンドン家→ネイサン・マイヤー
ナポリ家→カール・マイヤー
パリ家→ジェームズ・マイヤー
●シャトー・ラフィット・ロートシルト
→元々名声のあるシャトーをパリ家のジェームズ・マイ
ヤーが競売で大金をはたき所有者に。
●シャトー・ムートン・ロートシルト
→ロンドン家ネイサンの息子ナサニエルが購入。
→ナサニエルのひ孫のフィリップが今の地位まで向上さ
せる。
→時代を代表する画家にラベルの製作を依頼。
●P41
ロンドン分家のアルフレッドは、他人の娘アルミナに
金銭面含め、寛大な態度に出たが、その理由は未だ謎で
隠し子説もある。
●「語るなかれ」の家訓
●ロンドン分家のライオネルは強烈な園芸愛好家。
ほとんどのメンバーが何らかの収集癖を持っていた。
●英語でロスチャイルド、フランス語でロチルド、ドイツ
語でロートシルト。「赤い楯」の意。
●イディッシュ語で書かれた暗号の手紙を駆使。
秘密保持の手法は、一族の間で近年まで続けられた。
●P68
ロンドン家のネイサン・マイヤーはワーテルローの戦い
で、ナポレオンの敗北を誰よりも知り、公債を売って相
場を暴落させてから買いに転じて、天文学的な儲けを手
にする。
●P74 アーヘン会議
●ロンドン家を飛び出したジェイコブは
「ネイサンの生まれ変わり」と言われる程の才を発揮。
ネイサンが語った証券市場で成功する秘訣
「早過ぎると思うほど早く売ってしまう事」
●パリを飛び出したモーリスも莫大な資産を築き、それを
受け継いだエドモンも地中海クラブなどで富を増大させ
る。
●P157 ディアスポラの歴史
●ネイサンの甥ベンジャミン・ゴムベルツがユダヤ人であ
る事を理由に保険会社への入社を断られ、それに怒った
ネイサンは逆に保険会社を創設。今やヨーロッパ最大の
保険会社に。アライアンス。
●“現代イスラエルの父”と呼ばれるエドモン。
●P186 キャンプデービッド合意 -
ユダヤ人の陰謀だとか言う時には
ロスチャイルドがどうたらなどとくっついてくるものですが
実際のところはあんまり知らないもので読んでみた。
古物商というか、古銭を扱う商人として貴族に入り込んでいって
1代で足場を築いてのち、息子たちがヨーロッパ各地に散らばり
金融と情報ネットワークを確固たるものにするスピードは驚異的なものだ。
才覚は当然あるだろうが、時代背景として
産業革命から資本主義の萌芽の流れにうまく乗っていったのも大きいように思う。
実際、楽天の三木谷は一代で銀行を含む企業グループを作っているし、
こうした資本の蓄積スピードは時代が下る程早くはなっている。
政治との癒着関係というのも気になるところだろうが、
たしかに、ロスチャイルドが興った初期は貴族が居たが、
民主制が発展するほど、資本家が関与できる範囲は政体そのものから
政治家個人の単位へと限定されていく。
また、先に述べたように資本は今の方が流動的な動きをするようになっており、
ロスチャイルド銀行は突出した存在などということはない。
ただし、今もクローズドで家族的な経営主体を貫いているのは特色としてあるし、
ユダヤ人のための活動に陰に陽にと携わることはあるだろう。
しかし、文中で特に印象的だったのは
グローバルな資本であるゆえに紛争を防ぐために奔走する姿である。
それは資本主義のポジティブな要素のひとつとしてとらえていいだろう。
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五人の兄弟が密着している肝心の国家がそれぞれ利害を異にして角突き合いを始めたためである。国境を越えて繁栄しようとするロスチャイルド家の利益は、国境という鎧を着けてその目的を追求する主権国家の利益とは必ずしも一致しない。その矛盾が表面化したのである。(p.81)
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後段で保守的な勢力としての側面が非難されたともあるのだが、
それでも、殺さない、破壊しないという方向性は支持できる。
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ぶどう園を隣り合わせに持つパリとロンドン両家の冷たい関係は二〇年も続いた。そして、一九七三年、ついに格付けの再検討(ボルドー・メドック地方)が行われ、ムートンは第一級に格上げされた。ほかの多くのワインについても検討されたのに、変更されたのはムートンただ一つだった。ロスチャイルド家の政治力が大いに発揮されたことは確かとみられているが、ともあれ半世紀にわたって土壌の改良と品質の向上に努めてきたフィリップ男爵の努力は報われ、ロスチャイルド家はついに二つのプルミエ・クリュを手中にしたのである。(p.30)
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なんというか、
この負けず嫌いの感じは人間味があっていいエピソードと思う。
また、この競争関係が同族会社の中にあって活力を生んでいるんだろう。 -
ロスチャイルド家については、全容が明らかになっていないのだと思うが、ユダヤ人の歴史や欧州の歴史の裏で活動するロスチャイルド一族の明らかになっている活躍の一部から、その概要が理解できた。