「教養」とは何か (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061493582

作品紹介・あらすじ

哲学のすべてを修めた後、靴直しや陶工として働く-西欧中世の知恵のあり方や公共性と「世間」の歴史的洞察から、誰もが身につけうる教養の可能性をさぐる。

感想・レビュー・書評

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  • 教養がある人とは、単に多くの知識を持っている人のことではない。それでは、コンピューターと変わらない。

    社会における自分の立場を理解し、社会に対して自分が何をできるのかを理解している、もしくはそれを知ろうと学ぶ姿勢を持っている人が、真に教養のある人といえる。

    教養は個人で身につくものではない。世間(個人と対比される形で本書のなかでは使用されている)を通して、教養のある人間は形成されてくる。

  • 教養といういかにもな翻訳語を西欧の歴史的観点を踏まえて解説した本である。

    筆者は結論として、教養のある人を、「世間」における立ち位置を把握し、その中で何ができるか知っている、あるいは知ろうとしている状態と定義している。

    日本では明治以降に生まれたとされる、"個としての自分"に向き合うこと、そこから"どう生きるか"を考えるようになる。

    そして時に排他的な集団にもなり得る"世間"で何ができるか?どうすれば良くなるか?を考え、知ることこそ教養であるとしている。

    令和ではインターネットが当たり前となり、情報やコミュニティがほぼ民主化されている。

    そんな今日において大小問わず開かれた"世間"は、多くの選択肢を与えてくれるからこそ、選択の自由に苦しめられないよう、自分自身で決断することもある種の教養ではないかと思いました。

  • 『「世間」とは何か』(1995年、講談社現代新書)の続編です。

    本書では、西洋史における「教養」の形成過程が比較的ていねいにたどられ、そこでは個人の完成が目標とされていたことが明らかにされています。ここで著者は、「教養」とは「自分が社会の中でどのような位置にあり、社会のためになにができるかを知っている状態、あるいはそれを知ろうと努力している状況」だと定義し、「世間」との対峙のありかたによって「教養」を理解しています。その一方で、フンボルトに代表される「リベラル・アーツ」の理念が国家による統制に絡めとられてしまう可能性があることを指摘します。ここには、日本の「大正教養主義」に代表される教養が、もっぱら「世間」と対峙することをそのうちに組み込んでいないことに対する著者の批判的な見方を読み取ることができるように思われます。

    後半は『アイルランド・サガ』の物語が紹介され、そこに見られる「名誉」のとらえかたについての考察を通して、社会のなかで自己を位置づけつつも社会と対峙する、もうひとつのありかたが見られることが論じられます。そのうえで著者は、こうしたヨーロッパの伝統的な「世間」のありようと、日本における「世間」のありようを対照的に見ようとしています。

    ここで著者は「人間関係の古層」といういいかたをしており、あるいは丸山眞男の議論が念頭にあったのかもしれません。そして丸山のばあいと同様、本書においても著者の問題意識の深さに感銘をおぼえる一方で、問題に対する明瞭な処方箋が示されていないことに苛立ちをおぼえる読者もいるかもしれません。しかしながら、手っ取り早い解決策を性急に求めるよりも、本書の提出している問題をみずから考え掘り下げることのほうがよほど重要ではないかと考えます。

  • 「世間」の続編なので半分弱は世間の話。ただし、前著に関して英独からの照会があったため、ハーバーマスの公共性の視点を導入したのは注目に値する。日本的「世間」と欧米的「共同体」はその歴史性において全く異なるものであり、欧米思想の導入および適用の難しさを指摘したのは、歴史学者としての哲学者・思想家への警告と言えるだろう。

  • 教養とは、自分の立ち位置・立場を理解していること。

  • 教養といいつつも、「世間」の研究の続編。
    昔のアイルランドのことが書かれた書物の内容は、日本の世間と同じように思える。人と人とのかかわりがあって世間が作られるというのは、結局同じなのかもしれない。

  • 本書は前著『「世間」とは何か』の続編である。筆者もあとがきで述べているように、前著は不十分であったようで、本書は前著を補う形で書かれている。しかしながら、私は前著を読んでいない。読んではいないけれど、十分楽しめた。特に後半のアイスランドサガの記述に至っては、国家がない場所で、「世間」が果たす役割は非常に大きいことに驚いた。アイスランドと日本では島国という点で似ており、学ぶところが多いと思った。

  • 教養があるということを「自分が社会の中でどのような位置にあり、社会のためになにができるかを知っている状況、あるいはそれを素人努力している状況」と定義。高校、大学の時にはまったく中身がわからなかったが、多少わかるところが増えてきたといったところか。

  • 教養を扱った本を読むのは久しぶり。

    しかし予想に反し、教養についての記述は全体の半分ほど。
    多くは日本が持つ特殊な「世間」という社会構造について。

    西洋の「近代的個人」や中世アイスランドの「世間」によく似た特徴などを紹介している。
    結局、教養って何だったんだろ。

    しかし、色々なことが載ってて面白かった。
    難易度は、内田樹の難しい本くらい。
    なんとか読める程度。

    有名な本らしいし、そこまで重くないので、とりあえず読んでみることオススメ。
    1日あれば読める。

  • 教養かんけーねーだろーよ。自分の書きたいこと書きましたって感じ。馬鹿にすんなよ。

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著者プロフィール

1935年生まれ。共立女子大学学長。専攻は西洋中世史。著書に『阿部謹也著作集』(筑摩書房)、『学問と「世間」』『ヨーロッパを見る視角』(ともに岩波書店)、『「世間」とは何か』『「教養」とは何か』(講談社)。

「2002年 『世間学への招待』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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