- Amazon.co.jp ・本 (596ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061493667
作品紹介・あらすじ
人類誕生から混沌の現代へ、壮大なスケールで描く民族と文明の興亡。新たなアフリカ像を提示し、世界史の読み直しを迫る必読の歴史書。
感想・レビュー・書評
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かなり読み応えがありました
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原始時代から現代までのアフリカ史。かなり読みごたえあり。興味あるところからゆっくり読んでもよかったかなと思います。
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ヨーロッパからの視点をなるべく排除しようとしたアフリカ通史書だと思うが、いまいち全体的な流れがつかみにくい。巻末に索引がないので、後から情報を探すことが出来ない。
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アフリカ諸国の歴史を概観する教科書的な本。新書ながら約600頁と分厚く、六部17章で構成されている。
【詳細目次】
http://d.hatena.ne.jp/Mandarine/20131009
【簡易目次】
はじめに アフリカから学ぶ
第Ⅰ部 アフリカと歴史
第一章 アフリカ史の舞台
1 人と自然
2 地形形勢と外世界交渉
第二章 アフリカ文明の曙
1 人類を育てたアフリカ大陸
2 後期石器時代の環境変遷
第Ⅱ部 川世界の歴史形成
第三章 ザイール川世界
熱帯雨林下に刻まれた歴史
サバンナの王国社会
キャッサバとイスラームの道、奴隷の道
キサンガニ森林世界の原理
第四章 ザンベジ・リンポポ川世界
鉄器農業社会の形成と発展の
大国家の時代
小国家の時代
第五章 ニジェール川世界
サヘルにおける定住の開始
西スーダンの王国形成
森林地帯の都市と国家
第六章 ナイル川世界
ヌビアの諸王国
上ナイルの地域形成
大湖水地方のニョロ王国
第Ⅲ部 外世界交渉のダイナミズム
第七章 トランス・サハラ交渉史
イスラーム以前のサハラ
中世イスラーム国家の繁栄
サハラ交易の矛盾とブラック・アフリカの覚醒
第八章 インド洋交渉史
インド洋を渡る大交易路
サンジバルの盛衰
スワヒリ世界の形成
第九章 大西洋交渉史
ポルトガルとアフリカ
奴隷貿易の衝撃
近代世界システムの成立
第Ⅳ部 ヨーロッパ近代とアフリカ
第一〇章 ヨーロッパの来襲
植民地支配の始まり
部六征服の時代
リベリアトエチオピア
第一一章 植民地支配の方程式
サバンナのコロニー<イギリス領東アフリカ>
間接統治のモデル<イギリス領西アフリカ>
同化と直接統治<フランス領西アフリカ>
「善意」の帰結<ベルギー領コンゴ>
遅れた開放<ポルトガル領南部アフリカ>
第一二章 南アフリカの経験
オランダ東インド会社の時代
イギリス領ケープ植民地の誕生
アパルトヘイトへの戦い
第Ⅴ部 抵抗と独立
第一三章 アフリカ人の主体性と抵抗
抵抗の選択肢
伝統の反乱
イスラーム神権国家の戦い
王国の抵抗<アシャンティとマダガスカル>
マウマウ戦争の構図
第一四章 パン・アフリカニズムとナショナリズム
パン・アフリカ主義の誕生
ナショナリズムの芽生え
独立とアフリカ合衆国の夢
第一五章 独立の光と影
自立経済への道
アフリカ社会主義の実験
ネイション・ビルディングの虚構
ビアフラ戦争の悲劇
第Ⅵ部 現代史を生きる
第一六章 アフリカの苦悩
民主化の時代
「低開発」と構造調整政策
近代化の矛盾
第一七章 21世紀のアフリカ
多元的社会への可能性
逆説の文化戦略 言語の未来図から
【抜き書き】
・281-282頁〔松田素二〕
“自由と平等を求めるヨーロッパの市民社会は、不自由で不平等なアフリカ人奴隷を必要としていた。この一見、相矛盾する現実を解決するために、アフリカ人を文明から徹底的に遠ざける言説が作り出された。アフリカ人は自分たちと同じ人間ではない、とすれば支配も差別も正当化できるというわけだ。アフリカ=野蛮の言説は、このとき発明されたと言ってよい。
一七世紀から一八世紀にかけてアフリカに滞在したヨーロッパ人の残した書物は、この人種差別の言説を繰り返し反復することによって、常識として育て上げるのに成功した。著者はたいてい奴隷商人か奴隷船護衛の海軍将校であった。〔……〕
こうしたアフリカ滞在者のレポートは、さらに哲学者や生物学者の手によって学問的に仕立てられ、人種主義が似非科学として成立する。近代植物学の先駆者カルル・リンネは、一七三五年の『自然の体系』の中で、人類をホモ・サピエンス(知恵をもつヒト)とホモ・モンストロスス(怪異なヒト)の二種に区分し、アフリカ人ら「原始的な人間」を後者に分類した。この成果を受けて、モンテスキューやヒュームといった啓蒙時代の一級の知識人たちが、アフリカ=野蛮観に哲学的な仕上げをほどこした。たとえばモンテスキューは「きわめて英明なる存在である神が、こんなにも真黒な肉体のうちに、魂を、それも善良なる魂を宿らせた、という考えに同調することはできない」(『法の精神』一七四七年)と述べた。これが啓蒙精神の本音だったのである。”
・344-345頁 〔峯 陽一〕
“ポルトガルの政治的・経済的な停滞が決定的になったのは、20世紀のサラザール独裁時代であった。貧農出身のアントニオ・デ・オリベイラ・サラザールは、権力への階段を昇りつめ、1932年にポルトガル首相となり、ドイツやイタリアと同類のファシズム体制を築いていった。ところが、イギリスとの絆が強かったポルトガルはドイツと同盟を結 ……344 ばなかったため、この地のファシズム体制は責任を問われることなく、第二次世界大戦後も生き延びた。サラザール個人は、68年の引退まで、政権に居座り続けることになる。
ポルトガル・ファシズムの基盤は地主と軍隊、それにカトリック教会であった。サラザール独裁の時代、ポルトガルの農村の貧困はきわめて深刻であり、反体制運動は厳しい取り締まりを受け、秘密警察による密告が制度化されていた。”
・352頁 〔峯 陽一〕
“エチオピアやソマリア、スーダン、ルワンダの悲劇が世界のマスコミの注目を集め、アフリカの「飢餓と貧困」のイメージが定着した80年代から90年代にかけて、独立後のアフリカ諸国の苦難は、ますますアフリカ人内部の「内輪もめ」や「失政」の結果と捉えられるようになり、西側世界は「善意の傍観者」として振る舞うようになった。ところが、西側世界の前哨部隊を自任していた南ア白人政権の80年代の振る舞いは、「傍観者」どころではなかった。南アは欧米諸国の強力な支援を受けて、独立したばかりのアンゴラとモザンビークを、実力で崩壊の崖っぷちにまで追いつめていたのである。” -
アフリカの文明の歴史が地域ごとに分かる貴重な本。ただ、発売日が古いので、最近の事項(中国によるODAなど)を取り入れた改訂版が早く読みたい。
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人類発祥の地、そんな暁光とは裏腹に、停滞と閉鎖的な、暗黒の印象つきまとうアフリカ。特に、永く世界史から捨て置かれたサハラ以南はそうだ。しかし、これまでの欧米中心な進歩史観が見直されるとき、そのサハラ以南にも、有史以前より幾多の文化文明が明滅し、多彩な民族、王国が栄枯盛衰する。サハラは、文明と未開とを分つ砂漠ではなく、むしろ文化が交流し、対流する砂の海であった。そう、かつてのアフリカを覆った強靭で広範な商業ネットワークは、欧州中東アジアと対等以上に渡り合っていたのである。そして、そんなアフリカが、欧州の近代化を前にして、次第にその自律性を失っていく。それは、(必ずしも一方的なものではないにせよ)アフリカの分断に他ならなかった。今日、「トライブ(部族)」と呼ばれている集団は、実は植民地化の下で、政府が小集団を集めて作り上げたものであったり、他集団との競争で「トライブ」としてのアイデンティティが芽生えた集団であって、紛れもない(想像の共同体としての)近代化の産物である。そもそも、今に伝わるアフリカの際立った身体的、言語的多様性は、個々の孤立によるものではなく、きわめて活発な接触と交流、不断の混血と移住によるところが大きい。はたして、そのダイナミズムを失い疲弊していくアフリカに、人類の英知は何をもたらすことができるのか。アフリカは停滞遅れているというよりは、もっとも先んじて、近代化と民主主義の矛盾に葛藤しているともいえるのかも知れない。最良の手引書の一。
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アフリカ全体についての通史
人類の誕生から21世紀直前までを対象に政治史・交易史を中心にアフリカの歴史を概観する。
本書ではあまり一般には知られていないアフリカの古代から中世についても光を当てている。
口頭伝承や考古資料といった非文字史料や交易のあった外世界の文献を用いて、徐々に明らかになっている古代・中世アフリカを紹介している。
そこには「暗黒大陸」としてのアフリカのイメージとは異なる、ダイナミックな人々の営みが描き出されている。
一方で大航海時代以降、大陸が徐々に植民地化されていく様子や欧州支配からの独立といった近代から現代への歴史についても綿密に描写されている。
この本で描かれている歴史はあくまでも「アフリカにとっての歴史」である。特に近代以降の歴史叙述についてこのことを感じることができた。
アフリカの歴史は近代世界システム論の一部としてや民族主義の勃興といった全世界的なトピックのもとに語られる事が多かった。
しかし、本書ではこのようなトピックの中で起こったアフリカの変化を描き出している。
奴隷貿易の中で発生していたアフリカ内部での「狩るもの」と「狩られるもの」の関係、そして奴隷貿易がアフリカの政治経済に影響を与えたのか。
また奴隷貿易禁止後に構築された植民地支配体制に対して展開された抵抗運動の様々な展開。
アフリカの「民族運動」がより下位の「民族運動」を抑圧して行く様子。
こういったアフリカ内での諸問題は連なった一つの歴史の流れの中に位置づけられる。
以上のようなアフリカを問題の中心に据えた歴史分析は、私たちのアフリカに対する「近代世界システムの犠牲者」や「第三世界」といったステレオタイプな視線からの脱却を促し、「歴史の大きな物語」に覆い隠された現代アフリカの真の問題点を炙りだしてくれる。
「新書アフリカ史」のもう一つの読みどころは中南部アフリカの古代史・中世史であろう。
口頭伝承で編まれた歴史は独特の時空感覚を持っている印象を受ける。
それはすべての事象を関連付け整合性をもたせる文献による歴史とは異なる。
時間の流れや長い距離を飛躍するもっと大きな歴史が見えてくる。
そして環境が人間生活にどのような制約を加えていたのか、人類は自然の大いなる力にどのように適応していったのか。
「銃・病原菌・鉄」では地理と文化の関係が考察されていたが、アフリカにおいても同様の分析が成り立つことが本書を読むと理解できるのである。
細かなトピックとして現代アフリカを考える上で役に立つであろうことはサハラ砂漠をめぐる歴史の叙述である。
サハラで展開される歴史がいかに「国境」という概念を踏み越えているかを認識することはアフリカ北部・西部で発生する政情不安(たとえばマリなど)を理解する上で大きな助けとなる。
少々気になった点としては、本書では地理が大きなファクターとなるがアフリカについて本当に初学者であった私には地図なしで読むには少々辛かった。
もっと頻繁に地図が出てくるか、巻頭または巻末にまとまった地図があると理解が進んだように思える。
また残念なことであるが本書の記述は20世紀末で終了している。21世紀に入るとアフリカの経済発展は軌道に乗り始める事例も出てきている。
南アフリカは注目新興国の一角に数えられるようになったし、ナイロビの都市化は益々進む。
湖水地方の正常も徐々に安定化に向かっている。こうした新しいアフリカの動きの背景についても知りたかったがそれはまた別の書に譲ることとなっている。