神の証明: なぜ宗教は成り立つか (講談社現代新書 1392)

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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061493926

作品紹介・あらすじ

人が神に成る、神が人に成る。宗教の大前提はいかにして可能か。東方キリスト教を手がかりに、全宗教を貫く普遍理論を提唱。

感想・レビュー・書評

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  • 《神》の証明 落合仁司 講談社 160312

    この世を超越した無限なる神の一部なりとも
    数学的に集合論を使って証明しようという試みである

    なぜ宗教は成り立つか
    人が神に成る
    神が人に成る
    東方キリスト教を手掛かりに
    全宗教を貫く不変理論を提唱する

    この世の他者であり無限であるあの世がこの世に内在し
    有限であるこの世界の自己がこの摩擦界を超越すること
    無限を論理の対象としたのは
    19世紀末のカントールによる集合論である

    こうして神の一部を客観的に見れるならば
    宗教間の対立の多くを議論の積み重ねによって
    解決できる可能性が開けるだろう

    神が無限であるならばいとであると同時に多でなければならない
    一人ひとりに内在する多なる神は
    この有限世界を超越する一成る無限という存在なのである

    この世の人間がこの世を超越してどこまで無限なる神に近づけるのか
    人間は究極的に無限を悟れるのか悟れないのか
    集合論から答えを導けば例え人間が神と出会えたとしても
    神は悟った自己自身をも超越することになる
    集合論による無限とは自らをも超越する程に絶対的なのである
    このことは信仰とは別の問題でもある

  • 信州大学の所蔵はこちらです☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA34743338

  • カントールによって創始された集合論の発想を借りることで、神と人間の関係を解明しようとする試みです。

    本書の前半では、主として東方正教会の歴史を振り返りつつ、三位一体や神との合一といった、神と人との矛盾的な関係について、どのような考察がなされてきたのかということが解説されています。ここで著者は、父なる神と子なる神は「ウーシア」(本質)において同一であるが「ヒュポスタシス」(位格)において区別されるという三位一体の定式をとりあげ、「ヒュポスタシス」を「実存」と解釈する見方を示しています。

    後半に入って集合論への言及がなされますが、著者の考えは「神の本質としての無限集合が神の実存としてのその部分集合と同一になること」に尽きており、それ以上に汲み取るべき内容があるとは認めがたいように思います。もっとも、西洋の思想的伝統のなかで神の存在を数学的に証明しようとする試みがおこなわれてきたことも事実です。これが西洋思想史における重要なテーマであることはまちがいないのでしょうが、本書ではそうした伝統への参照もなされておらず、著者自身の思いつきの域を出ていないように感じられました。

  • 宗教学者が一神教のいくつかの宗教がなぜ成立しうるのか? 数学の無限という概念が全体と部分で矛盾がないのと同じということで、カントールやゲーデルなどの数学者を持ち出して議論するのは、真面目なのでしょうが、私からすると真面目とは思えないように思いました。著者自身が最後に「宗教とは信じるもの」と言っているのであり、このような議論はためにする議論に思われます。東方正教の神概念が三一神であるが、聖霊が実質的には多神教を容認する基盤になっているという話もかなりユニークな考えだと思いました。

  • 宗教、という問題を考えようとすると、どうしても胡散臭さや集団の狂気が浮んできてしまう。

    信仰、と言いかえても、やはり腑に落ちないまま「洗脳=マインドコントロール」へ疑いの目を向けてしまう。

    そもそも目にみえないものを信じることなど現実逃避であり、そのようなよくわからない存在など頼りがいがなく、それによってどうして救われようか、なんとも不合理なことよ、と考えていた。
    しかし同時に、この「よくわからない」という不明の大部分は、キリスト教でも仏教でもいわゆる宗教と縁遠く暮らしてきたがゆえに、私自身がたんに「知らない」という状況によるものではないか、とも考えていたのだった。

    そんな折、キリストの三一論などをはじめ、無限である神と有限である人間とのあいだに生じる矛盾を、きわめて合理的に考えている人物として落合仁司氏を知った。

    本書の途中、集合論の話が出てくるが、話が佳境に入ってくると正直最早ついていけなかった。
    しかしながらその部分を抜きにしても、本書が宗教や神という問題を考える上で大変有意義な一冊たり得ていることは間違いない。

    この世の他者であり、必然的無限な存在である神。
    その神の存在は論理的に真であり、宗教そして神学はきわめて合理的なものであった。

    落合氏は、神の有無は合理的な問題であり、ここに信仰は不要であると考える。
    そして、合理的に神と人間の矛盾を考えた果てに、必然的無限である神とわれわれ人間が一致するためには、人間を「可能的無限」な存在と考える必要があることがわかってくる。

    まさに、ここにおいてなのである。
    信仰が問題となるのは、この「可能性」を信じるか否かにおいてなのである。
    落合氏は言う。
    宗教とは人間の自己超越の可能性を信じることである、と。

  • 読了日不明。"この無限集合を神の活動、そのベキ集合を神の本質と解釈することが許されるならば、神の本質はその活動を超越する""宗教とは語るものではなく、まず何よりも信じるものなのである" この辺りの文章をどう評価するかで、本書の価値は大きく変じてくる。

  • [ 内容 ]
    人が神に成る、神が人に成る。
    宗教の大前提はいかにして可能か。
    東方キリスト教を手がかりに、全宗教を貫く普遍理論を提唱。

    [ 目次 ]
    1 世界と神
    2 神の受肉
    3 人間の神化
    4 神における同一と差異
    5 無限の数理
    6 神の集合論
    7 ユーラシア正教

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  • 集合論に詳しい人は感動できるんだろうなぁ。

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著者プロフィール

2020年1月現在
同志社大学経済学部教授

「2020年 『構造主義の数理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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