ヒトはなぜことばを使えるか―脳と心のふしぎ 講談社現代新書

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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061494275

作品紹介・あらすじ

心がことばをつくり出し、ことばは心を統御する。失語症研究の第一人者が脳・心・ことばのメカニズムに迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 「今年の抱負は○○です」
     と、目標や目的を言葉で明確にして、自分にスイッチを入れている人は多いのではないでしょうか?
     発した言葉は宙に放り出されたままではなくて、自らに返ってくる! 良い意味でのブーメランが来るイメージが視える書籍を見つけました★(もちろん、質の低い言葉を放てば、よろしくない意味でのブーメランも来るのでしょう……)

     また、誰かの言葉に励まされる、癒されるといった経験をする人も少なくないと思います。自分でも、家族や友人の気分を上げる声かけができたら嬉しいもの。
     言葉は、ヒトの脳や心の動きと切っても切れない関係にあるのです☆

    『ヒトはなぜことばを使えるのか』は、脳科学や神経心理学(失語症研究の権威でもあるとか★)を専門とする著者が、人間の思考と言葉の連携プレーについて述べた一冊。言葉が自身の内部にも影響を及ぼすメカニズムを解き明かしています。
     脳が心を作り、そして心の模様を言い表す目的で生まれてきた人間の「ことば」は、今度はそれそのものが心を支える柱となって、その人の信念や思想を貫く作業をサポートしてくれることが分かる本☆
     また、わたしたち人間は、言葉を創ってシェアしながら、社会を構築してきた面も指摘しています。

    「こうありたい」「こうしたい」と思い描くイメージを、言葉で出力する手間をかけたいという気持ちが、私は強いほう。その意識確認的な作業をしながら読書を進められて、どっさり収穫あり♪
     かなり興味をそそられて読み、もっとしっかり感想を述べようか……とも考えたけれど、脳科学の話で素人が長々と書くのも変なので、ここらで放棄……★

     完全に余談ですが、脳の仕組みを知りたいかはともかく、言葉の働きかけについて関心を持つ人は、読書の好みとして、アーシュラ・ル=グウィンのファンタジー(エッセイや評論、講演内容を含む)も合ってるのではないかと思います☆

  • やや古い本で著者の癖もあるが、内容はとても興味深い。「脳があって心が生成し心があってことばが生成する。生成したことばは逆に心を制御し、制御された心はまた脳を制御する。」

  • 著者は生成文法にちょっと疑いをもっているらしい。その点では同じく新書の『言語の脳科学』とは真逆だけど、そのことに関してはとくに深く触れることはない。失語症関係の症例が比較的多く説明されているのが興味深かった。原著は1998年だから、やや古くなっていることもあるかもしれない。その点でも『言語の脳科学』よりはちょっと不利かもしれない。

  • 失語症の説明から始まって、言葉と脳の関係を科学的に説明し、さらには心と脳の関係について明解にわかりやすく書かれている。

    心は意識→情→知→意という構造になっているらしい。
    「感情は心という器を満たしている液体のようなものである。この感情の海に、ことばのような記号性の心像や、物体の形状のような知覚性の心像や、それらの複雑な集合体である概念や思念のような「かたち」あるものが漂っている」という筆者の抱く心のイメージは衝撃的だった。

    前半は専門用語っぽいものも出てきて、ん~んめんどくさいなぁ…と思うところもあったが、最後はなんとも言えないほっこりとした余韻が残るとてもいい本だった。

    Mahalo

  • ヒトはなぜことばを使えるか の答えにはあまりなってないんじゃないでしょうか(笑)。

    臨床症状を例に、言語機能を解説してますが、
    一般の人にはちょっとイメージが湧きにくいんじゃなかろうか。
    平易な文章で書いてあるので、言語臨床の入門には良さそうです。

    知・情・意~脳と心の関係が書いてある、
    本の後半が面白いですよ。

  • 右脳、左脳というのは、それぞれ別の機能を持っているのだと思っていたら、そうではなくどちらかが優位性をもってリードしていると言うことであって、また、その優位性にしても機能によって優位性が強い場合と割と左右均等な場合とがあり、それが言語障害の治癒の容易度にも関わってくるそうだ。
    脳と言語のはなし。まだまだ研究の余地のある分野のようで面白い。

  •  筆者は神経心理学を専門とする医学博士で高次機能障害の研究を中心にしている。本書は脳を医学的な立場から分析し、心という極めて曖昧な対象を科学的に分析しようとする学問的立場を分かりやすく述べたものである。
     脳の研究にはさまざまな立場があるが、不幸にして機能障害に陥った人の研究から逆に脳の機能を分析的に考えることが可能になることがある。脳の一部の機能を失ったことによってどのような障害が発生するかを観察することによって、脳の部位とその機能の関連が分かるというものだ。言語機能は数々ある脳の機能の中でもかなり高度なものであり、人間だけにことばがあるのもその脳の機能の複雑さがもたらすものである。だからこそ、さまざまな段階の障害も発生することになる。いわゆる失語症については、私も近年身近に接することがあって深い関心を持っている。一見すると健常者と全く変わらないのに、言葉を発するとその行動の異常さに驚いてしまうのが、高次機能障害である。
     脳の研究はいまだ発展途上である。分析的に研究すればするほど不明な点が出てくるようだ。どの分野でも聞かれる話ではあるが、分析的な研究が進めば進むほど全体像をつかむことはかえって難しくなっていくらしい。脳を使って脳を考えるという挑戦はこれからもさまざまな展開がある事を予想させられた。

  • [ 内容 ]
    心がことばをつくり出し、ことばは心を統御する。
    失語症研究の第一人者が脳・心・ことばのメカニズムに迫る。

    [ 目次 ]
    第1章 ことばとはなんだろう(ことばの音韻形式;意味されるものの構造 ほか)
    第2章 ことばを失うということ(「話すこと」と「聞くこと」― 言語行動の基本;音韻と意味の解離―記号構造の分解)
    第3章 ことばを織り出す脳(大脳の仕組み;脳はどのように音韻にかかわるのか ほか)
    第4章 脳・心・ことば(ことばを失った心;心の成り立ち―知・情・意 ほか)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 脳みそとことばのつながりが書いてある。
    たぶん、私が読みたいのはもっと心象の動きを解説してくれるような本だったんです。

  • 先ず、ことば、というものの性質と成分を分けて、
    健常人がどのように言葉を使っているかを解説した上で
    具体的な失語症の症例を分類し、その損傷脳部位を併せ見て脳と心と言葉の関係を紐解く一冊。

    深く突っ込まなければとりあえずは全くの素人でも読めるました。
    初めの「言葉の音」の定義や、脳部位の名前などは見慣れない単語が並んで戸惑いましたが、
    著者が一般読者に伝えたいものは概要だと思うので、
    脳、こころ、ことば、の関係がどのように絡み合っているかのイメージをつかめたらそれでヨシ。

    失語症という病に興味のある人、言葉というものが、本来他人と共有されるはずのない心という現象を外界へ表出する、ということに面白みを感じる人にはお勧めです。

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著者プロフィール

現在、神戸学院大学人文学部教授。
1939年兵庫県生まれ。神戸大学大学院医学研究科修了。医学博士。ボストン大学神経内科、神戸大学医学部神経科助教授、東北大学医学系教授を歴任。専門は神経心理学。失語症、記憶障害など高次機能障害を研究。
著書:『脳からみた心』(NHKブックス)『神経心理学入門』(医学書院)『ヒトはなぜことばを使えるか』(講談社現代新書)『「わかる」とはどういうことか』(ちくま新書)『記憶の神経心理学』(医学書院)

「2008年 『知・情・意の神経心理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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