悪の恋愛術 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061495630

作品紹介・あらすじ

「もてる」技術と戦略!
恋愛とは支配と影響のパワーゲームである

自分がエゴイストであることを認め、「いい人」であることを捨てなければ真実の恋愛は生まれない――。プレゼント術から嫉妬の有効活用法まで、芳醇な果実を得るための方法論を満載。

感想・レビュー・書評

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  • 105円購入2011-11-09

  • 2017.1.8
    思えば、恋愛というものを真面目に考えてこなかった気がするが、これほど深い人間関係というものもないわけで。恋愛に対して持つ清らかな善人的関わり方を著者は批判する。恋愛とはエゴのぶつかり合いである。だからこそ、自分のエゴを通すためにこそ、利己的であるためにこそ徹底的に意識的に利他的であるべし、という本。悪も突き詰めると善になる。逆に言えば善も突き詰めると悪になるだろう。私は関係において意識的であればあるほど、つまり自己意識が肥大化すればするほど、他者は見えなくなり、そして関係が深くなればなるほど、そのような自己意識は肥大化し、他者をないがしろにしてしまう、と思っていた。それを私は、距離が近すぎると他者を傷つける、と思っていた。しかし思えば、関係に対し自覚的であることは、そのまま距離を遠ざけることになるだろうか。関係に自覚的であるいうことは関係に没頭しないということであり、それは他者とも、そして私とも距離を取るということだろう。そうしてこそ、関係における自由の幅は増えるし、それでもなお自由に振る舞えないことは多いわけだが、少なくとも何故そうなのかはわかる、反省できる。無意識的に関係を傷つけて、それに気づきもしない、善良なる悪人が最もたちが悪い。が、しかし、恋愛という関係のうちには、どこかで自分を相手に没入したいという欲求もあるのではないだろうか。そういうところをどう考えれば良いのだろうか。
    悪の、という表題は、善的であることの批判として、キャッチーさとして書かれているだけで、本来は善も悪もない。関係における理想は双方の快である。そうでなければ長続きはしない。善とは相手の快の優先であり、自分が抜けている。悪とは逆に私の快の優先であり、他者が抜けている。私も快であなたも快、それを目指すべきだからこそ、善は否定されるべきだし、また同様に悪も否定されるべきではないだろうか。善悪の両義性が関係の目標ではないだろうか。しかしこれは簡単なことではない。それは他者が、私の支配の外側にいる主体だからである。だからこそ少なくとも、どこまでも関係に、自己に、他者に、自覚的であらねばならない。
    あと、恋愛関係を作るためのところについて考えたが、我々は普通、告白してから関係がスタートすると考えている。しかし好きな人と共に過ごす中で、そこには言葉にならない告白がたくさんあるのではないだろうか。それは時に気遣いであり、時に眼差しではないか。告白されて意識するようになったという話は聞くが、このような言葉なき告白も同様ではないかと思った。また恋とは、二人の共有した関係に対しての思い出に対してのものではないか、すなわち我々は共有した過去によって恋をするのではないかとも思った。二人で過ごした時間の共有、その時間での楽しさ、快の共有、彼と彼女といたら楽しかったな、という時間の、過去の集積が、恋になるのではないか。平野啓一郎さんの「私とは何か」において、私とは関係の束であり、そして私は他者との関係における心地よい自己に恋をすると書いていたが、そういうことなのかもしれない。
    著者の『悪の対話術』も読みたいと思う。

  • 評論家・福田和也の恋愛指南書です。

    「崇高な愛」といった欺瞞を退け、恋愛の独善性を正面から認めた上で、みずからの独善と相手の独善との間を架け渡すようなストーリーを自覚的に構築することが、著者の説く恋愛術だとまとめることができるように思います。

    ここで説かれているような恋愛は、それこそ文学作品の中にしか存在しないのではないか、と考えてしまうのですが、単に私には無縁だというだけで、世の中にはこんな恋の駆け引きを楽しんでいるカップルもいるんでしょうか。

  • 分かり合えない人間同士がそれでも近づこうとするのが恋愛、だそうだ。
    結構捻くれた文だと思うので、好みが分かれる所。
    そして作者自身の話が多い。
    比較的読みやすいと思うので、恋愛上手になりたいお方には気軽にお勧め出来ますよ!

  • 思っていたよりも、文章も内容も硬派で残念だった。
    しかし、その中でも欧米各国の恋愛物語の社会的背景から見た構造の考察は面白いと思った。

    恋愛はエゴイズムのぶつかり合いと言うことからもう少し心理学的なアプローチだと思いハードルを上げ過ぎて読んでしまいましたが、普通の読み物としては面白いと思います。

  • 「自然体」「天然」が流行ってた時期がありましたね。
    「小悪魔」「お嬢様系」は現在進行形ですか。
    どれも、そんなものまったく持ってない人種がそれを無理やり具現化して、さも「前から」そうであるかのようにふるまう作戦ですよね。

    恋愛は自己中。
    恋愛で感じる視線は実は自分の自分を見る視線。
    この辺はとっても共感できる。
    後者は精神分析的な視点に立ってる。

    この人の悪シリーズ(前の「悪の対話術」)は、「素朴を脱し、洗練を手に入れる」ためのちょっとの悪、といった考えが基盤。
    ていうのを知ってるとそこまで得るものもなく、またか、って思っちゃうけど、
    なんといっても文章が巧いんだ。
    新書の鑑のような読みやすさ。
    まるめこまれてしまう。
    本の中で紹介している名著を、読まなきゃ!って感じにさせるところなどさすが。

    しかしうよであるらしい。うーん

  • とにかく安っぽく、ぺらっぺら。特に新しい面白さはなかった。ただ読みやすくはあるので、ジャンクフードのように消化できる本。

  • 人生には戦略が必要という著者の考えを、恋愛という範疇から語る作品。人生をゲームやストラテジーと主張しているのではなく、人と語り合うのに、パフォーマンス(演技・表現)が不可欠だということ。なぜか? 人間は孤独であり、理解し尽くし合えない存在だから。納得。

  • [ 内容 ]
    自分がエゴイストであることを認め、「いい人」であることを捨てなければ真実の恋愛は生まれない-。
    プレゼント術から嫉妬の有効活用法まで、芳醇な果実を得るための方法論を満載。

    [ 目次 ]
    プロローグ 恋愛とエゴイズム
    第1章 独善力
    第2章 贈与力
    第3章 倦怠力
    エピローグ 恋愛は、厄介で愉しい贅沢品

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

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    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 福田 和也さんの悪の三部作最終シリーズ読み終わりました。人間の心底突いていて 面白く怖い・・・ これを習得すれば生きていくことが楽しく、大変かもしれません。目指せ 悪女。

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著者プロフィール

1960年、東京都生まれ。批評家。慶應義塾大学名誉教授。『日本の家郷』で三島賞、『甘美な人生』で平林たい子賞、『地ひらく――石原莞爾と昭和の夢』で山本七平賞、『悪女の美食術』で講談社エッセイ賞を受賞。

「2023年 『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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