一神教の誕生-ユダヤ教からキリスト教へ (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061496095

作品紹介・あらすじ

ユダヤ教とキリスト教の神は違うのか?歴史から人と神の関係を新しく問い直す。

感想・レビュー・書評

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  • 一神教における神と人の関係性について。キリスト教はユダヤ教からの分派から生じた世界宗教ではあるけど、決して旧来のユダヤ教から正しい位置にあるわけではない。キリスト教は、イエスが告知した「神の支配」の現実が事実である可能性に賭けている(ユダヤ教はそれを傍観している状態)。イエスが伝えてきた神の支配が「全てのもの」に関わるという性質が、イエスの死後に出来たエルサレム初期共同体によって「一部の」人びとの生活スタイルに改変されることで、「教会」の成立へと向かった。この聖俗を切り分ける「人による人の支配」こそが、世俗の支配者による「支配の仕事」を大幅に減らし、ヘレニズム時代以降の西洋社会を安定させるに至った。

    教会のいう「神の支配」とは、「教会の支配」というべきか、「分け隔てしない」ところの神が自分を受け入れない者について「分け隔て」してしまっているのだ。

  • ここまで突き詰められることで、教会へのもやもやした気持ちが晴れます。
    だからといって、不信仰になるわけでもなく。
    不思議な宗教です。

  • 仏教に続いて、ユダヤ教からキリスト教へとつながる一神教がどのように成立していったのかを解明する一冊を読了。
    私のような無縁の者にはわかりかねますが、唯一の神を信じるはずの一神教が、成立当初は御利益宗教だったという指摘が何とも皮肉に思えます。

  •  2002年刊行。著者は千葉大学文学部教授。

     ユダヤ教→キリスト教の成立史を、前史に遡り、また事実に即して本書は解説する。人による支配の全う、という極めて合目的的理由に基づいてこれら一神教が成立していったという点は納得のところ。
     ただ、西洋近代的思考、科学的探究思考が生まれた土壌としてのキリスト教は、ほとんど解説していないので、個人的な興味とは外れた点もある。

  • [1から]大部の日本人にとってはなかなかピンと来ない一神教の考え方。その中でもユダヤ教とキリスト教に焦点を当てながら、一神教がどのように生まれてきたのか、そしてその一神教という考え方そのものがどのように変容してきたのかを考察する作品です。著者は、ストラスブール大学で博士課程を修められている教授、加藤隆。


    歴史的な流れに沿いながら、一神教の考え方の変遷を丁寧に追っているため、読みながら「あ、なるほど」と思わせてくれることがしばしば。その字面的にもどこか「確固とした」ものを思い浮かべていたのですが、一神教それ故に神との関係・在り方が多様に考えられるところが非常に興味深かったです。「神学は難解では......」と思われている方にもオススメできるわかりやすさも高ポイント。


    ユダヤ教やキリスト教に関する基礎的な知識を本書で身につけることができるのも良い点かと。冒頭、そして本のタイトルと内容そのものに少し齟齬があるようにも感じましたが、大枠で「一神教とは何ぞや?」ということを知りたい人には十二分に有意義な一冊だと思います。

    〜キリスト教は、イエスが告知した「神の支配」の現実が事実である可能性に賭けている流れである。これに対して、ユダヤ教は契約という唯一の関係によってヤーヴェとの繋がりを確保しながら、キリスト教の賭けが成功にいたるかどうかを見守っている流れである。〜

    (語弊があるかもしれませんが)神学は本当に頭の体操になります☆5つ

  • 民族宗教だったユダヤ教からどのようにして世界宗教であるキリスト教が生まれたのか。その過程は想像以上にある意味で打算的で、差別的ですらあり、絶対的な「神」がそこに存在してとは到底思えない、恐ろしく人間的なものだった。
    この本の論理が全てではないとは思うけれど、冷静かつ客観的に捉えられた、ユダヤ教とキリスト教の関係は興味深い。
    そしていまは「科学」が宗教的人のあり方を担っている部分がある
    消化不良なのは、ユダヤ教の神である「ヤーヴェ」がキリスト教にどのように取り込まれていったのかが触れられはしたものの語り切られていないところ。

  • ユダヤ教からキリスト教が発生した背景、3つの一神教の神は同じなのか、違うのか?などを考察する。私としては古代イスラエル宗教の成立についての無神論的立場からの記載、イエス・キリストの復活について「神格化」としてわずか触れられず、しかも復活が大きな意味がないように書かれていることについて正しいキリスト教理解とは思えないとストレスが残る。残念ながらこれが一般的な聖書の読み方なのだろう。通常は民族の滅亡とともに、民族の神も存在理由を喪うが、北イスラエル王国の滅亡と南ユダ王国がその後も150年ほど続いたことが、神を義とする古代イスラエル宗教の誕生につながったとの理解は面白く感じたが・・・。

  • 実はタイトルに若干問題があるのだが、「一神教」というものの副題にあるように扱っているのはユダヤ教とキリスト教である。
    そこを含んでしまえば、ストラスブール大で神学博士をとったという著者の記述は入門者向けに分かりやすく好ましいものである。 聖書に触れる際の参考になる一冊。

  • 03035

  • 著者は神学者だから、という言い方が適切かどうかわからないが、宗教の前提となる部分は文字通り前提として捉えていて、あえて踏みこまない。
    ところで論理とは、もともとはロゴスであって、ロゴスとは神の言葉であり、世界を構成する論理とイエス・キリストの言葉そのもの。だから論理とは「神との論争の理」なのだよね。しかるに内容は極めて論理的といえるのだ。
    もし細かいところに興味が湧けば、神学者ではなく橋爪大三郎のような社会学者による宗教解説本を読めばいいということです。
    この本からは宗教史とりわけキリスト教会史について学ぶところが多かった。63点。

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著者プロフィール

加藤 隆(かとう・たかし)
1957年生まれ。ストラスブール大学プロテスタント神学部博士課程修了。神学博士。千葉大学文学部教授。著書に、『旧約聖書の誕生』(ちくま学芸文庫)、『新約聖書はなぜギリシア語で書かれたか』(大修館書店)、『『新約聖書』の誕生』(講談社学術文庫)など。

「2021年 『キリスト教の幼年期』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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