インタビュー術! (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 67
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061496279

作品紹介・あらすじ

危うくも楽しい活字ライブの舞台裏とは-いかに話を引き出し、書くか、豊富な現場体験と名インタビュアーの技に学び、その方法論と味わい方を伝授。

感想・レビュー・書評

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  • 職業柄、ライター入門のたぐいをたくさん読んできた。その多くが、取材ないしインタビューの方法論についてある程度の紙数を割いている。
    たとえば、立花隆の『「知」のソフトウェア』、山根一眞の『情報の仕事術』、本多勝一の『ルポルタージュの方法』などに盛りこまれた取材のノウハウは、どれもそれなりに役に立った。

    しかし、取材のみに的を絞った入門書は、ありそうでなかった。宮部修というライターが1997年に『インタビュー取材の実践』(晩聲社)という本を出しているが、それくらいだろうか(※)。

    ※新聞記者の故・黒田清もその手の本を出していたが、「参考にならなかった」という印象しか残っていない。また、沢木耕太郎さんが『インタビュー』という本を岩波新書から出すと噂されていたのだが、これは企画自体が流れてしまったらしい。

    『インタビュー取材の実践』もよい本ではあったが、それをはるかに凌駕する“インタビュー入門の決定版”が本書だ。ベテランにして売れっ子のライターが、豊富な経験をふまえてインタビューのノウハウを伝授してくれる1冊である。

    この本の美点の第一は、ヘンな精神論を振りかざすいやらしさがなく、徹底して実用的であるところ。

    とにかくアドバイスが細かい。
    たとえば、取材の際に使う筆記用具について、“ペンよりもシャープペンシルがよい”と永江は言う。なぜなら、小売店を取材するときなどに、万一ペンを落として商品を汚してしまってはいけないからだと……。

    また、小説家が短編集を出した際の著者インタビューについて、次のように言う。

    《まんべんなく聞こうとすると、それぞれの短編についてつまみ食いしただけの、広くて浅いインタビューになりがちだ。そこで、十編のうちの二つか三つに話を絞る。このとき気を使うのは、「それじゃあ、なにかい? この十編のうちおもしろかったのはこの三つだけで、あとはダメってわけかい?」などとインタビュイーに感じさせないこと》

    こんなふうに、インタビューのAtoZが微に入り細を穿って語られていく。
    ここまで実践的なアドバイスは、高い金を払ってライターズ・スクールに行っても聞けないのではないか。

    美点の第二は、読み物としても面白いところ。
    随所にちりばめられた失敗談や苦労話は、同業者として身につまされるが、同時に笑いも誘う。たとえば――。

    《会話が途切れて沈黙の時間が流れる。インタビュアーにとってこれほど恐ろしいことはない》

    《用意していった質問項目が次々とクリアされてしまい、「ああ、もう聞くことがなくなる」とドキドキしていた》

    わかるわかる。ライターなら誰もが経験するあの焦燥感。

    《私はインタビュー中、できるだけよく笑う。たいていの人は、ちょっとした冗談や滑稽なエピソードを話の中に挟む。心から笑える面白いものならいいのだけれど、そうではないことのほうが多い。それでも、声をあげて笑う。幇間的ないやらしさのように聞こえるかもしれないが、これもまた気持ちよく話してもらうための演出だ》

    これもあるある。無理に笑いすぎて、インタビューが終わるとドッと疲れたりするのだ。

    また、業界裏話のたぐいもふんだんに盛りこまれていて、ライターならずとも面白く読めると思う。
    逆に言えば、永江はベテラン・ライターとしての技術とサービス精神を駆使して、読み物としても楽しめる書き方をしているのだ。

    私がライターになった当時、こんないい入門書があればなあ。あんな失敗、こんな失敗をしないで済んだかもしれない。ま、失敗を通じてしか学べないこともあるから、いいのだけれど……。

    ただ、首肯できない記述もある。
    「『徹子の部屋』はインタビューのお手本である」って、そうかあ? 私はむしろ、筑紫哲也が『ニュース23』でときどきやる文化人インタビュー(海外の映画監督とか)こそ、インタビューのお手本だと思う。

    ついでに言えば、インタビュアーとして最低だと思うのは久米宏(笑)。「こんな大物を番組に呼んでおいて、よくまあくだらないことばかり聞きやがるなあ」と、いつも思う。「能弁であること」と「インタビューがうまいこと」はけっしてイコールではないのだ。

    ともあれ、ライターおよびその卵は必読の1冊である。

  • インタビューは聞くことであると思っていたが、発信することでもあるようだ。インタビューをもとにして、作られた記事、本の読み方、インタビューでのテクニックなども示されている。個々のインタビューアー特徴なども示されており楽しい。

    インタビューの準備
    下調べ、質問項目、道具
    話の聞き方、まとめ方

    小さなとき、どんな子だった。

  • 切り込んでいく田原総一郎、引き出す黒柳徹子
    という章に、なるほどーと思った。

    それにしてもインタビューって同時通訳者と同じくらいに、絶対に、大変な職業だと思うのよ、録音していたと思っていたテープレコーダーを再生してみたら、録音されていなかったとか、電池が切れていたとか、怖すぎ。震えた。無理、絶対無理って思った。
    頭の回転が速くて、臨機応変で人柄がよく、教養が深い人じゃないと出来ないと思う。

    参加者一人一人の気持ちをおもんばかるホスト、ホステスの才能が必要とされる。
    インタビューでも対談、鼎談でも司会者が必要とされる。この司会の進行次第でインタビューした内容、良し悪しも決まっていくだろうから、人たらしで機智に富んでいないとやっていけないんじゃないかなぁ、と読んでいて思った。

    メモ
    対談…参加者2人。鼎談…参加者3人。それ(4人)以上は座談会。


  • ビジネスの場でも活かせないか?と思い読んでみましたが、インタビュアーなどの「取材」に重きを置く方向けの本です。
    筆者自身の過去の取材における経験やそこから気づいたポイント(コツ)が載っていていますが、大事な部分というのは限られています。
    例えば、教養。
    これは本書だけでなく様々な本で語られていますが、インタビューというシチュエーションにおいても大変有効だということが理解できました。

  • 文字に起こすインタビューをする人にはおすすめ

  • インタビューに臨む際の、超基本的なマインドセットがわかる本。

  • 2002/10/20 , 2004/12/29 read up

  • writing
    ビジネス

  • インタビューの準備と書き方について豊富に実例とともに載っています。
    アポイントの取り方や、当日の流れについては薄いので他の本を参考にした方がいいかも。
    インタビューすることがあるならさらりと読んでおくと安心できそうな本でした。

  • インタビュー術といえば、この一冊から。

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著者プロフィール

1958年生まれ。ライター。書籍輸入販売会社のニューアート西武(アールヴィヴァン)を経て、フリーの編集者兼ライターに。90~93年、「宝島」「別冊宝島」編集部に在籍。その後はライター専業。「アサヒ芸能」「週刊朝日」「週刊エコノミスト」などで連載をもつ。ラジオ「ナルミッツ!!! 永江朗ニューブックワールド」(HBC)、「ラジオ深夜便 やっぱり本が好き」(NHK第一)に出演。
おもな著書に『インタビュー術!』(講談社現代新書)、『本を読むということ』(河出文庫)、『筑摩書房 それからの40年』(筑摩選書)、『「本が売れない」というけれど』(ポプラ新書)、『小さな出版社のつくり方』(猿江商会)など。

「2019年 『私は本屋が好きでした』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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