時間は実在するか (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061496385

作品紹介・あらすじ

飛ぶ矢のパラドックスに始まり、マクタガートの非実在性の証明を検証し、新しい形而上学を構想する。

感想・レビュー・書評

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  • 物理学側からの時間論を読んでから本書を読み始めたせいか、議論がとても人間的に感じられる。時間が主観と密接に関わっていることは確か。人間がいなければ、時間は単なる「変化」でしかないのだけれど、なまじっか人間が記憶力を備えているせいで、過去や未来が生じる。

    ーーー
    マクダガートは論理に拘泥して、ときに詭弁を弄しているようにしか思えないところがある。きっと彼には、時間は実在しないという直感がまずあったのだろう。マクダガートには、アインシュタインが宇宙定数にこだわったと同等の、論理に対する不潔癖さがあるように思えてならない。しかしそれには好意が持てる。
    ーーー
    とはいえ、読み進めるにつれて、マクダガートの議論と反マグタガートの議論がどうでもよく思えてきた。けっきょく、パラノイア的に両者が自説の正当化を行っているからだ。
    本書から学んだことは、「時間とは、否定的にしか語れない」ということだった。

  • 時間について、物理・科学側からではなく、哲学側から考察した本。
    未来はまだ存在しない。過去はもう存在しない。今、この現在しかないとしても、では未来はどこから来るのか?時間については、誰しも一度は疑問に思い、考えを巡らせたのではないでしょうか。

    物理の世界でも、「Time-Space」であり時間と空間は切り離せないものだったり、相対性理論で実証されたように時間は可変だったり、湯川博士は時間も原子のように最小単位があると提唱してたり、ホーキング博士はこの宇宙が始まる前は虚数の時間が流れていたと論じたり、その正体を掴めていません。

    前半は、哲学的に時間の「実在」について考察した古典の紹介。この辺りは議論され尽しているからか、とても分かりやすかったです。ここでの結論は「時間は実在しない」。

    後半は、前半の論考に対する著者の考えが展開されるのですが、これがまだまだ揉んでいく必要がある段階に感じられ、分かり辛いし、厳密性にも欠いているように感じられました。
    (ここでの結論は、読んでのお楽しみ、なのかな?^^;)

    時間と言うテーマを使った、哲学的考察の講義の本、というのが実態かもしれません。

  • マクタガートをだしに入不二ワールドが展開される。結論としては,時間は実在するかという問い自体が失効する,ということですね。正直マクタガートの議論は消化不良ですが。

  • マクタガードというイギリスの哲学者が論じた「時間は実在しない」という説について、その証明までの道程をたどり、その証明が成功したのかどうかを検証。そしてマクタガード説にの上に、著者の自説「第四の形而上学的な時間」を展開する本。
    正直いって、よくわからない事だらけ。読み進めるのに時間がかかったが、その「時間とは何か」という極めて哲学的なテーマについて自分なりに考えることができた。特に「現在」とはいったい何なのかという考察は深遠に感じるし脳みそがちょっと興奮した。小学生の頃だったか、恩師が言っていた「今、今と、今という間に今は過ぎゆく、今という間に今はなし」という諺(唄)を思い出す。
    「時間」とは?「現在」とは?「未来」とは?「過去」とは?「実在」とは?・・・哲学者という人たちが、どんな思考をするのかが垣間見れたことが収穫。失礼ながら、何の役にも立たないような気がするし、非常に重要な事のような気もするし、屁理屈ごっこを愉しんでいるだけのような気もしたが、著者自身があとがきに似たような感想を漏らしているので安心した。

  • 時間に関する形而上学的考察。結論としての『「時間は実在するか」という問いは、失効する』はちょっと拍子抜け。

  • 信州大学の所蔵はこちらです☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA59922960

  • 時間論では避けて通れないマクタガート論文の紹介と検証、そして著者の自論展開という構成というか章立てがスッキリしていて、全体的にはわかりやすくなっている。当然個々の部分はある程度の理解力がないと難しい所もあるが。特に読み応えがあるのは4章の検証部分でここは力作だと思う。この部分だけでも英訳して世界に発信してみてもいいのではと思うが、既にやっているのかもしれない。5章についてはチャレンジな部分もあり賛否はあるだろうが、印象としてはマクタガートから離脱すると言いつつもAB系列の呪縛からは逃れられず、やはりマクタガートの磁力の強さが感じられた。

  • 「時間の非実在性」はどう考えられてきたか◆「時間の非実在性」の証明◆照明は成功したのか◆もう一つ別の時間論-第四の形而上学的な立場

  • 「時間」に関心がある人は、ぜひお読みください。
    (2015年09月15日)

  • マグナダカートの時間の非存在という主張を、入不二が徹底的に検証しながら、新しい形而上学的な時間論を構築してゆく。

    飛んでいる矢は静止している、という古代ギリシアからつたわるパラドクスへの鮮やかなテーゼはスマートで面白い。

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著者プロフィール

入不二基義(いりふじ・もとよし):1958年生まれ。東京大学文学部哲学科卒業、同大学院博士課程単位取得。専攻は哲学。山口大学助教授をへて、現在、青山学院大学教育人間科学部教授。主な著書に『現実性の問題』(筑摩書房)、『哲学の誤読――入試現代文で哲学する!』(ちくま新書)、『相対主義の極北』(ちくま学芸文庫)、『時間は実在するか』(講談社現代新書)、『時間と絶対と相対と――運命論から何を読み取るべきか』(勁草書房)、『足の裏に影はあるか? ないか?――哲学随想』(朝日出版社)、『あるようにあり、なるようになる――運命論の運命』(講談社)など。共著に『運命論を哲学する』(明石書店)、『〈私〉の哲学 を哲学する』『〈私〉の哲学 をアップデートする』(春秋社)などがある。

「2023年 『問いを問う 哲学入門講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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