悪女入門 ファム・ファタル恋愛論 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061496675

作品紹介・あらすじ

男を破滅させずにはおかない運命の女femme fatale-魔性の魅力の秘密は何か。宿命の恋の条件とは。フランス文学から読み解く恋愛の本質、小説の悦楽。

感想・レビュー・書評

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  • 最終章はバタイユの「マダム・エドワルダ」。かなりエロな内容なのであるが、鹿島先生の解説が見事でウムウムと唸りながら読ませる。
    おかげで、映画「ビフォア・サンライズ」ではデルピーが冒頭から「実は私はファム・ファタルよ」宣言をしているのだと納得。

    この本の各章にあるファム・ファタルタイプが画家ムンクを取り巻く多様な女性像に符合し、以前見たムンク展の理解の助けとなる。「椿姫」の章、20世紀前半まで未婚の女性とは会話すらNGだったから、人妻と付き合うのは当然の成行だったと、こんな知識も盛り沢山。

    「このアンビヴァレンスがくせ者です。恋愛においては、羞恥心を最も効果的に使った女性が最終的に勝利を収めるということを忘れないようにしてください」などとファム・ファタルを目指す方(笑)への指南書となっているのが面白い。実に名著。

    ファム・ファタルという言葉は「宿命の女」と訳されるが、ニュアンスをつかみきれていないとある。ファタルには「宿命的、運命的」という意味もあるが「致命的、命取りの」という意味もあり、ラルースにもある「破滅をまねく女」というのが妥当であると。

  • 抜群の面白さ。
    鹿島先生が、やさしく「ファム・ファタル」の極意を教えてくれます(笑)
    恋愛ハウツー本風に書いてあるところが、また面白い!

    以前、仏文専攻の女の子が「フランス文学はなんで不道徳な恋愛が多いんだ!」と言っていたのを聞いて、不思議に思っていたのですが、この本を読んで謎が解けました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「極意を教えてくれます」
      そんなの覚えちゃダメですよ。翻弄されたくなっちゃうじゃないですか!
      「極意を教えてくれます」
      そんなの覚えちゃダメですよ。翻弄されたくなっちゃうじゃないですか!
      2012/09/01
  • ファムファタルを考える足がかりになる。

  • 開いた頁の章だけ読もうと思っていたのに結局全部読んでしまうのだった(3回目)。フローベールの『サランボー』分析を読んでると、もう可笑しくて突っ伏しちゃう。

  • 前に泉鏡花の高野聖とファムファタルの関係を大学の講義か何かで聞いたけど、どういう意味だか分からないまま「ファム・ファタル」の言葉だけ耳に残っていたので、気になって読んだ本。
    「ファム・ファタル」という言葉をフランス文学の中から読みといていく。しかも元々フランス文学コラムの蓄積を「あなたが悪女になるにはどうしたらいいか」というエッセンスを加えてまとめ直しているので、有名なフランス文学を学ぶ上でも、ファム・ファタルというフランス語の文化素地を知る上でもわかりやすくて参考になりました。特定の男にとって運命の女になる、しかも破滅させるのは、個別要素が大きすぎて参考にはならないけど、、
    ナジャやゾラは、あらすじの時点で難解そうで諦めていたけど、こういう解釈と道筋をつけてもらったので読んでみようかという気になりました。(プルーストは絶対読まない)

  • 過剰なる愛は容易に憎しみに転化する。一人に入りこみすぎるのは病気。
    男は単純、女は複雑。男は権力に固執するが、女側からしたら男の所有物よりもあるがままを愛するみたいな齟齬も面白いです

    さまざまな魅力があって悪女と一括りにできないのが面白い。男側の性質と一対一でマッチするかが重要というのも納得。全員にモテモテなファムファタルは安っぽいもんな。

    男バージョンも読みたい。

  • ひとつひとつの章が短くかなり読みやすい新書だった。フランス文学なるものには触れたことがなかったが、この本を読んで俄然興味が湧いた。

    命取りになるほどの危険な魅力を感じさせる女になる方法が分かる本…。男からすると出会ってしまったが最後、全てを失いマイナス無限大のドン底に堕ちていくらしいのだが…。男次第では何でもない女がファムファタルになってしまうこともあるらしい。ファムファタルにもいくつかのパターンがあるようだ。全体を通して 男を惑わせ堕ちさせるためのテクニック本の体。色々と勉強になった。それでも自分は相手の人生を狂わせてまで心を掴もうとは思わないが…。

    あと、この本とはあまり関係ないが、ナナ の解説を読んで 汝らその総ての悪を を読み返したくなった。自分が好きな物語男女の関係性を再認識した……。

  • フランス文学に見るファム・ファタルの系譜。

     運命の女と訳されることが多いファム・ファタル、実際の意味はちょっと違って、男を破滅させる女のこと。破産じゃなくて破滅。大金持ちが破産して無一文になり、さらに大きな借金を背負うくらいに入れ込んでしまう女。100あった財産を破産させたくらいじゃファム・ファタルの名が廃る。100マイナスにして、なおかつお命頂戴くらいで、見事その称号がいただける。それこそがファム・ファタル。


     フランス文学がご専門の鹿島茂先生の本なので、例題にあがる悪女はみなフランス文学からの借用。
    大学でフランス文学を講義していてもなかなか学生の頭に染みていないな、と感じたことがきっかけで、ファム・ファタルということをひとつのキーワードにしてみたらしい。女子学生には大うけだったようだ。
     
     この本のなかで紹介されていたフランス文学で最初のファム・ファタル小説と言われている「マノン・レスコー」を早速、読んでみた。すごい面白かった。主人公が愛する女性は、悪気がないのに男を破滅させる、まさにナチュラル・ボーン・ファム・ファタル。

     日本で悪女と言えば中島みゆき嬢の「悪女」という歌が有名だけど、あれは悪女のなかでは最低レベルの痛い女、イタ女です。裸足で夜明けの電車で泣くなんて、傍目にも不気味です。あれでは男は振り向きません。

     本物の悪女になって男を手玉にとりたい方に、この本をお勧めします。

  • なんだろう…スピード感がすごい笑
    読んでる間ずっと圧倒されていた笑

    フランス文学におけるファムファタル(男を破滅に導く女)の解説本。
    初っ端から性的エクスタシーとかエロティックと言う単語が出てきてそのテンションのままなので、思わず「すごいな…」と思いましたが色物というわけではなくしっかりおもしろい。

    かの有名なフランス文学作品から具体的な例でファムファタルを科学し、ファムファタルを目指すにはこうしよう!と道を示してくれます笑
    しかしファムファタルになるのは難しいですね。

    ちなみに本書に出てくる作品たちはまだ読んだことがなかったので読んでみようかなと思いました。
    引用元の作品は、何を言ってるのかわからない部分も多そうなのですが、そこをわかりやすく解説されていました(難しい部分もあるのですが。なんというか、哲学的です)

    9章「失われた時間」への嫉妬についての解釈はもう本当にわかり過ぎて。自分の嫉妬心もこれです。

  •  月並みだが、色んな悪女が出てきて面白かった。
     男性というのはどこかしらで、女性に振り回されたい願望があるらしい…。
     自分がどういうのだったらなれそうか/ゼッタイ無理かを考えるのも楽しいかも。

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著者プロフィール

1949(昭和24)年、横浜に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。2008年より明治大学国際日本学部教授。20年、退任。専門は、19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ風俗』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「All REVIEWS」を主宰。22年、神保町に共同書店「PASSAGE」を開店した。

「2022年 『神田神保町書肆街考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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