中国の大盗賊・完全版 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061497467

感想・レビュー・書評

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  • 易姓革命などソレらしいことをいうが、言ったもん勝ちの後付の説明みたいなもんで、実際は、権謀術数と疑心暗鬼と大虐殺が満載の大盗賊たちの権力闘争。人間らしいっちゃぁ、実に人間らしい。

    筆者は、史上最強の大盗賊は毛沢東だとして、こんなふうにバッサリと片付ける。
    「つまり毛沢東の伝記の面白さは、共産党が人民を解放したの民衆が立ちあがったのというヨタを聞くのがおもしろいのではさらさらなくて、こいつの前では朱元璋も李自成もケチなコソ泥ぐらいに見えてくるという大盗賊が、中国をムチャクチャに引っかきまわすという、一般中国人にとっては迷惑千万の歴史が面白いのである。」(p259)

    常にひどい目に合わされる庶民はたまったもんじゃないが、その分、中国人民がしたたかでアナーキーになるのも当然のことだろうと思った。

  • これ、すごく面白い本です。

    タイトルにある「大盗賊」とは単なる泥棒のことではなく、もう大物中の大物で、皇帝にまで成り上がった人、あと少しで皇帝だったけど惜しくも戦いに敗れた人、革命を成功させた人という、そういうレベルの「大盗賊」です。

    こんな中国史のヒーローをしれっと盗賊呼ばわりしてしまう、そんなドライなでユニークな視点が本書の面白さです。ちなみに本当に彼らはもともと盗賊だったので(史実です)、侮辱や中傷が目的の本ではありません。

    一介の盗賊が成り上がって支配者になり、そして没するまでのエピソードが、一歩引いた視点からわかりやすく語られていて、歴史に詳しくない人でも十分に楽しめます。

  • [ 内容 ]
    昔、中国に「盗賊」というものがいた。
    いつでもいたし、どこにでもいた。
    日本のどろぼうとはちょっとちがう。
    中国の「盗賊」はかならず集団である。
    これが力をたのんで村や町を襲い、食料や金や女を奪う。
    へんぴな田舎のほうでコソコソやっているようなのは、めんどうだから当局もほうっておく。
    ところがそのうちに大きくなって、都市を一つ占拠して居坐ったりすると、なかなか手がつけられなくなる。
    さらに大きくなって、一地方、日本のいくつかの県をあわせたくらいの地域を支配したなんてのは史上いくらでも例がある。
    しまいには国都を狙い、天下を狙う。
    実際に天下を取ってしまったというのも、また例にとぼしくないのである。
    幻の原稿150枚を完全復元。
    共産党の中国とは盗賊王朝である。
    劉邦から毛沢東まで伝説の完全版がよみがえる。

    [ 目次 ]
    序章 「盗賊」とはどういうものか
    第1章 元祖盗賊皇帝―陳勝・劉邦
    第2章 玉座に登った乞食坊主―朱元璋
    第3章 人気は抜群われらの闖王―李自成
    第4章 十字架かついだ落第書生―洪秀全
    第5章 これぞキワメツケ最後の盗賊皇帝―毛沢東

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 中国という国がどういう権力争いで今まで続き、そしてそれぞれの時代の王となったかを分かりやすく、史実を調べて書かれており、中国という国を理解するのには実に有用な本だと思った。

    これを読めば、日本と本当に考え方や行動の仕方が違うのがこの国だからこそああなるんだという事に気がつく。

    ヒョッとしたらまだまだ中国は新しい王朝が現れて今と違う国がまた出来るのではないだろうかと思ってしまう(^_^;)

  •  毛沢東及び中国共産党は我々が持つ一般的な近現代の国家観ではなく、中国の歴史という文脈、とりわけ「盗賊」の系譜の中で理解せよという筆者の見識はしっくりくるし、多分正しいのだと思う。
     キューバのカストロ政権やチリのアジェンデ政権と比べてみるのもおもしろい。

  • 毛沢東と現代中国の姿がくっきり見えた。やっとわかった!という感じ。なんで中国が共産党なのかずっと不思議でありました。

  • 昔、中国には「盗賊」なるものがいたらしい。かならず集団で、鬼平犯科帳に出てくるようなこそこそしたのではなく、ほとんど公然と蟠踞する。都市一つ占拠するほどの大勢力になったり、時には天下を取ってしまったりする。そんな盗賊とはどんなものか、なぜ生じるのかを解説したあと、歴史上代表的な盗賊を紹介します。

    まずは秦帝国を揺るがす叛乱を起こし王を称した陳勝、その後、秦を滅ぼし漢を建てた劉邦。この人が最初の、天下を取ってしまった盗賊です。乞食坊主から身を起こし、明を建国した朱元璋。建国後の粛清がすさまじい。明代末、一時は帝位に登るも、清に追われ、あえない最後を遂げた李自成。その後異民族の清に長く支配されたこともあって、人気抜群とのこと。19世紀なかば、新興宗教国家、太平天国を建てた洪秀全。思想も国家体制も、ぶっとんでます。敵役の曾国藩の奮戦ぶりが、腐敗した清の状況と対照的で嘆息を誘います。

    そして、現在に至る中華人民共和国を建てた毛沢東。この章が、以前の版と完全に異なる原稿らしい。天下を取ったということについてはこれまでの農民革命と異なるところはないが、共産主義革命としての何か新しいところがあったかと言えば、「人民」を幸福にするような事跡はなかった、という評価です。確かに盗賊の系譜の中に位置づけられて然るべきかも知れない。

    この本なにしろテンポが良くて、読み出したら止まらない勢いがあります。

  • 未読

  • 中国史に名を残す大盗賊の系列で、毛沢東を論じている。中国史に通じた著者がとても簡潔に主題を説明しようとする様は、文筆家の格闘記録としての意味合いも読み取ることができ、興味深い。高島ワールドに入っていく上でも格好の書といえよう。

  • 劉邦や朱元璋ら盗賊から身を起こした人物を高島氏らしい切り口で面白く紹介されてます。
    日本と中国の文化の違いなどにも触れられていて、尚且つ現在の興味対象が重なったのもあって非常に楽しめた。

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著者プロフィール

高島 俊男(たかしま・としお):1937年生れ、兵庫県相生市出身。東京大学大学院修了。中国文学専攻。『本が好き、悪口言うのはもっと好き』で第11回講談社エッセイ賞受賞。長年にわたり「週刊文春」で「お言葉ですが…」を連載。主な著書に『中国の大盗賊・完全版』『漢字雑談』『漢字と日本語』(講談社現代新書)、『お言葉ですが…』シリーズ(文春文庫、連合出版)、『水滸伝の世界』『三国志きらめく群像』『漱石の夏やすみ』『水滸伝と日本人』『しくじった皇帝たち』(ちくま文庫)等がある。2021年、没。

「2023年 『「最後の」お言葉ですが・・・』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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