まんが パレスチナ問題 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061497696

作品紹介・あらすじ

いつも「複雑な」と言われる「パレスチナ問題」。宗教や民族という日本人にはなじみにくい概念が問題のベースになっているし、昨日までの味方同士が突然戦争を始めたりして、たしかに、わかりにくいのはたしかです。だからこそ、本書では少しでもわかりやすいように、ユダヤの少年ニッシムとパレスチナの少年アリ、そしてエルサレムのねこ、2人と1匹が、旧約聖書の時代から21世紀のいままでの「パレスチナ問題」をガイドします。日本から少し距離のある国のお話ですが、すべてがつながっている現代では、けっして遠い世界のお話ではないのです。

感想・レビュー・書評

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  • 良書。再読中に、連日パレスチナ・イスラエル情勢の報道あり。
    私みたいな無知な者でも、本書は分かりやすく勉強になる。何度も読み返したくなり、購入したくらい。この機会にいかがでしょうか。

    漫画というより親しみやすいイラストや風刺画、また図や地図もある。
    二人の少年(ユダヤ人とパレスチナ人)と猫が、旧約聖書の時代から現代までの中東の歴史や宗教などを丁寧に説明してくれる。
    またその時代に関わりのある人物、参考映画や美術など、芸術の紹介がちょこっとあるのも良い。

    本書は旧約聖書時代~2001同時多発テロ、2003イラク戦争、2004アラファト死去まで。
    続編もある。2005ガザ返還~2015イスラム国の支配まで。
    これで終わらず、山井先生にはもっと書いていただきたいです。

    • なおなおさん
      ほん3さん、コメントをありがとうございます。
      タイムリーな本でした。
      この辺りのことは、紀元前の歴史から絡んでいるじゃないですか…関心はある...
      ほん3さん、コメントをありがとうございます。
      タイムリーな本でした。
      この辺りのことは、紀元前の歴史から絡んでいるじゃないですか…関心はあるものの堅苦しい本ではなかなか頭に入らず。
      でもこの本は良いのですよ。絵も可愛いのです。
      山井先生、さらに書いてくれるかなぁ…(。>人<。)
      2023/10/12
    • 川野隆昭さん
      なおなおさん、いつも僕の投稿へのいいね!をありがとうございます。

      僕も最近の国際情勢に関する報道に胸を痛めている一人です。

      新聞で、とあ...
      なおなおさん、いつも僕の投稿へのいいね!をありがとうございます。

      僕も最近の国際情勢に関する報道に胸を痛めている一人です。

      新聞で、とある当問題を研究する大学教授が、「この問題が解決するには、あと300年~400年かかる」

      と、語っていて、衝撃を受けたことがあります。

      こういうときこそ、草の根の我々は、「知は力」と、いきたいものですね。
      2023/10/17
    • なおなおさん
      川野さん、コメントをありがとうございます。
      この本を読んで中東の民族、宗教や歴史が少し理解できました。それでも我々日本人には理解しがたい宗教...
      川野さん、コメントをありがとうございます。
      この本を読んで中東の民族、宗教や歴史が少し理解できました。それでも我々日本人には理解しがたい宗教観、世界観。手元において繰り返し読もうと思っておりました。
      紀元前から抱えている問題の解決は難しそうですね。
      関心は持ち続けたいと思っております。
      2023/10/17
  • 4日間の戦闘休止…
    そんなさなか、ようやくちゃんと学ぼうとしている。
    あるワイドショーで「ガザでの戦闘について自分には何ができると思うか」というアンケートをとったところ、48%が「歴史を学ぶ」と回答したという。過去に読んできた本でイスラエル・パレスチナ問題に触れたものはあったが、正直説明できる自信がない。
    歴史すらしっかり学べていなかったことになる。

    タイトルの「まんが」はコマで分けられたものではなく、各ページイラストを使って解説していくスタイル。
    ユダヤ人のニッシムとパレスチナ人のアリ少年、エルサレムに住むネコがタイムトラベルをしながら解説役にまわり、時にはその時代の代表者も話に加わったりする。

    この2人と1匹がとにかく優秀!
    解説は簡潔明瞭でありながらきめ細やかであるため、出来事が順番にインプットされていく!「日本一わかりやすい」と帯に書いてあったけど、自分も忘れた時にはまた本書を読み返せば良いと思っている。
    アリ君はちょっぴり激情型だけど、美辞麗句でごまかすよりもあれくらい赤裸々な方が逆に信用できる。「これが彼らの本音なのかな」って。

    古代エジプト王朝が各地の部族を征服・統合してもファラオは彼らの部族神を抹殺しなかった。
    しかしユダヤ人は自分たちの神(ヤハベ)以外を認めず、遂にはモーゼと共にエジプトを脱出した。ニッシム少年曰く、ユダヤ教には選民意識がありユダヤ人でなければヤハベの恩恵は受けられないとのこと。

    上記を知るまでユダヤ人を悲劇的な民族の代表格みたいに思っていたけど、パレスチナ人も相当理不尽な目に遭っている。
    第一次大戦が終わりイギリスがユダヤ人を無制限でパレスチナに移民させて以降、パレスチナ人はヨルダン川西岸やガザ地区で難民生活を強いられている。挙句の果てにはイスラエル入植地を守るという名目で、パレスチナ側に大きな壁まで造られてしまった。(流れがアメリカ先住民と入植者みたいで、どこでも似たようなことが起こるんだな…)
    隣国同士の少年を解説役にあてた理由が、この辺でよく分かった。

    「テロリストを作るのは貧困じゃないんだよ。絶望なんだ」
    「(民族的憎しみが)まるで歴史的事実で、人の力ではどうにもならないもののように思われてる。だから、世界のどこかで民族紛争が起きると、[中略]民族を引き離すことしか考えない」

    平和への鍵は各民族が共存できる世の中。
    エジプトの多神教社会も他の神を受け入れ、中には習合させたりもした。スペインのイスラム王国である後ウマイヤ朝でも国民の60%は異教徒だったという。
    風通しをよくすることで人も国も豊かになるというのに、何故わざわざ絶望させる方を選ぶのか。

    鍵の形は分かっているのに誰も先へ進もうとはしない。
    歴史はある程度学べたが、何故足踏みするのか疑問が後を引いている。ここは<続>に託そう。

  • 少しだけアカデミックに現在進行形の時事問題の背景を理解したくなり、この本を購入しました。合わせて続編も手に入れ一気に読了。(「まんが」で手短に理解しようとしたのは大きな間違いでした。やはり難しい。)

    中東の問題といえば、宗教絡み、石油絡み、そして第二次対戦後米国主導で国連決議の下に建国されたイスラエルという国が大きく絡んでいます。

    今、テレビニュース等で報道されているガザのハマスとイスラエルとの争い。今のニュースだけを切り取ってみると、ガザのハマスがイスラエルの一般市民にロケット弾を撃ち込み、イスラエルが反撃し市民を巻き添えに!というもの。しかし、国連で、「とりあえず停戦しろ」といっているが、米国は拒否権を発動。イスラエルはハマスを根絶やしにすると息巻いている。一方、道徳的な観点から、、、、

    このイスラエルvsハマスの対戦は今に始まったことではなく、十年以上前から同じような攻防戦が何度も何度も定期的に繰り返されているのですね。ガザの極貧生活もイスラエルの閉じ込めによりすでに何年も続いています。イスラエルもハマスからのロケット弾攻撃を何度も被っている。イスラム過激派の名前は色々と出てきて複雑ですね。ハマスの前にはPLOのアラファトが有名でした。他の地域ではタリバン、アルカイーダ、今勢力を伸ばしているのはイスラム国(IS)でしょうか。

    根本的には何が問題なのか?今もニュース解説等で説明されていますが、もう一つ腹落ちしない。そこで、この本を読めば何らかの知識を得る事ができるかもしれない、と思い手にしました。(本屋さんには見当たらず、ブックオフにもなく、ネットで正規購入。しかし2週間ほどかかりました。なかなか手に入らないのですね。需要が多いのかもしれません。)

    しかし、この本を読んで全ては理解できませんでした。あまりにも多くの争いが出てきて、その前後関係や背景を理解しようとしても歴史のスパンが長く、関係する地域が広い。そして宗教が絡んできます。完全には理解し難い。多くの国々の関係性がその時代時代によって変わってきます。

    解明しようとしても、ほとんど人類の歴史そのものになってしまう。ナイル文明、チグリスユーフラテス川のメソポタミア文明の頃から理解しないといけない。そして宗教的な背景が入ってきます。(十字軍から石油ショック、湾岸戦争、ニューヨークの9.11を全て根本から説明するのは難しいでしょう。)

    元々、一神教であるユダヤ教、キリスト教、イスラム教。これらの宗教が崇めている「神」は同一なんですね。「元々ユダヤ教徒であったイエス・キリストはパレスチナ人」なのだということからも良くわかります。全て紀元前の話。イスラム教は紀元後6世紀ごろ出来上がります。そもそも同じ地域の人々。ノアの方舟のことは昔々どの宗教の皆さんにも共通の宗教的背景があったことのようです。モーゼの「十戒」あたりはユダヤ教になりますが。「三大宗教」の「聖地」が「エルサレム」にあるということも皆さんの出自が同じだということを象徴的に物語ります。

    アレキサンダー大王、ギリシャ、エジプト、ローマ、オスマントルコ。それぞれの時代の移り変わりとともに宗教の広がり方や内容、他宗教との関係性も変わってきます。部族・民族の多様性も複雑。そして、欧米の列強が石油の利権を求めて様々な国々、民族をぐちゃぐちゃにして憎悪だけを残して去っていった。(未だに裏では操っていますが)

    2000年に渡って争いの歴史がある。理解しようとしても一筋縄では行きません。

    なので、いま現在の状況においてどちらが悪いとは軽はずみには言えません。難しい。まさしく人類の歴史そのもの。

    ただ、現時点において言えることは(極めて個人的な見解ですが)、
    ・長期にわたる独裁国家(独裁者)は国民に真の情報を開示せず、他国へ侵略することにより政権の存続を求めがちである。(現時点ではプーチン、習、金、ルカシェンコのように)
    ・宗教を根拠として出来上がった国家・集団は他宗教への攻撃を政治の目標としがちである。
    ・傀儡政権による民主国家らしきものは中枢から腐敗し多くの弱者が生まれて、国民は絶望してしまう。
    ・軍部を力の根源とする政権は力で国民をねじ伏せる。
    ・極貧、絶望の中から難民やテロが生まれてくる。
    ということぐらいでしょうか。

    幸い私は比較的平和な時代の日本で生きてきました。この私の感覚が世界規模で見るとかなりズレているのかもしれませんが。

    第2次大戦後、日本も様々な浮き沈みを経験してきましたが、かろうじて戦争に直接巻き込まれておりません。今の所は。

    何とか日本を含め全世界の人々が安心して生きている世の中になってほしいと願うばかりです。

  • 十字軍物語を読んでいたり、昨今のパレスチナ情勢の背景を知りたかったので手にとりました。

    ひとつひとつの事件や出来事(歴史ではバビロン捕囚や十字軍、近年ではナチスのホロコースト、イライラ戦争や湾岸戦争などなど)などは目や耳にする機会はあっても、一つの流れとして把握できてなかったのでとても勉強になりました。

    ユダヤ人という考え方が民族(人種的なもの)ではなく、宗教的なものだったというのは新鮮でした。また著者も語ってますが、民族という単位で括るのは危険な考え方な気がしました。本来、ヒトの心を救うはずの宗教が争いの原因になってしまうのは悲しいことだと思いました。


  • 現在でも尾を引くパレスチナ、イスラエルの諸問題の歴史を大変分かりやすく勉強できました。

  • 中東の歴史や宗教についてわかりやすく、読みやすく、まとめられています。
    なんとなく、ボンヤリとニュースで聞いていた内容が輪郭を持って浮かびあがる話しとなってきます。
    宗教や土地の為に戦争をするなんて、と思いますが、そうせざるを得ない事情や感情、あるいは政治的思惑があるのだと改めて思い知らされた。

  • まったく知識がない自分が読んでも非常にわかりやすかった。
    日本人にはあまり馴染みがない(?)宗教問題。
    まさか始まりが紀元前とは…

    この本から始めて、もう少しパレスチナ問題を学んでいこうと思った。

  • 複雑な中東問題を歴史からわかりやすく、簡潔に解説した書。小学校高学年くらいから読めるだろう。私が中学生の頃から既に中東問題は地理の授業でもわかりにくいものだった。当時の先生が「中東戦争を理解しようと思えば、発端までさかのぼらないとわからない。『今』だけ見ていても理解できないよ」とおっしゃっていた。確かにそうだ。当時この本があればもう少し中東問題も理解しやすかったかも。
    未だ、中東では世界各国の利害や思惑も加わり、戦火が絶えない。当事国以上に関連列国の思惑に振り回され、そこで生活する市井の人々は常に貧困と生命の危機を感じながら過ごしているのだろう。一朝一夕にはいかないのだろうが、利害を超えてなんとかならないものなのか。

  • 世界史を習ったことがない、何も知らない27歳です。今世界で起こっている現状を少しでも知っていきたいと思い、この本を手に取りました。

    非常にわかりやすいですが、なにせ何の知識もないので、まずは宗教というもの自体を学ぶところから今は始めています。『教養としての宗教入門』や『はじめての聖書物語』、『ホロコースト』、『物語 フランス革命』、『物語 エルサレムの歴史』、『世界史の中のパレスチナ問題』を同時に読み進めながらですが、まだまだ最初の方の章で止まっています。

    十字軍やインディアンの歴史、ローマ帝国についてもさらに知りたくなりました。始まりは全て同じ宗教であったはずなのに、なぜこうも歪んでしまったのか。絵が可愛くて読みやすいですが、この裏にある沢山の残酷な歴史を思うと、これくらい可愛くないと心が潰れてしまいそうです。

  • Twitterでたまたま見かけて気になったので読んでみたが、本当にわかりやすい。

    パレスチナ地方を巡る争いの大元は旧約聖書の時代まで遡り、やがて列強による利権争いが絡んでくる。もとは同じ神を信じた人たちがなぜこんなことになってしまうのか。しっかりとその歴史を知って考えたい。そして、私たちの周りでも人種や民族、宗教の違いなどから諍いが起こらないように学んでいきたい。

    それにしても、いつの時代もどこの国でも「神」と「金」というのは使い方によっては厄介なものにもなるんだなあ。

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