スピノザの世界―神あるいは自然 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061497832

作品紹介・あらすじ

スピノザの思想史的評価については多くのことが言われてきた。デカルト主義との関係、ユダヤ的伝統との関係。国家論におけるホッブズとの関係。初期啓蒙主義におけるスピノザの位置。ドイツ観念論とスピノザ。現代では、アルチュセール、ドゥルーズ、ネグリ、レヴィナスといった名前がスピノザの名とともに語られる。スピノザはいたるところにいる。が、すべては微妙だ。たしかにスピノザについてはたくさん言うべきことがある。そのためにはスピノザの知的背景と時代背景、後代への影響、現代のスピノザ受容の状況を勉強する必要がある。けれども、まずはスピノザ自身の言っていることを知らなければどうしようもない。そのためには、スピノザがどこまで行ったのか、彼の世界を果てまで歩いてみるほかない。彼が望んだようにミニマリズムに与し、彼の理解したように事物の愛を学ぶほかないのである。

感想・レビュー・書評

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  • わかりやすいけど、やっぱり難しい。

    ・「最高の幸福」があるとして、それをどうやって手に入れるか。
    ・全てのものは神の一部で、人間も神の一部。自由意志は存在しない。
    ・目的とは衝動のこと。欲望とは意識を伴った衝動。

  • 読みやすい!わかりやすい!
    といって自分が理解し切れているとは全く思えないのだけど、でも面白かった。
    とても明晰で、あっけらかんとした明るさのある哲学だなぁ。
    なかなか気持ちいい。
    本家にも挑戦したいけど、あと何冊かわかりやすいものを読んでからかな…。

  • 汎神論を徹底すると唯物論になってしまうというところがとても気になるスピノザであるが、「エチカ」はあまりにも難解というか、すごく読みにくいので、なかなか近づけなかった。

    ということで、とりあえず、新書で手っ取り早くと思って、本書を読んだが、「エチカ」を中心に丁寧に説明しつつ、読者が抱くであろう疑問を先回りしつつ親切に解説してくれる、なかなかに分かりやすいスピノザ入門本であった。

    基本的には、他の思想家との関係やさまざまな解釈はおいといて、スピノザのテクストに沿って議論は進むのであるが、それでもニーチェとの関連については触れてある。スピノザは、それほどまでにニーチェの「善悪の彼岸」や「道徳の系譜」を思い起こさずにはいられない哲学者なのであった。

  •  本書も「エチカ」読了後の頭の整理のため購入。著者はスピノザの他ホッブスなどの西洋哲学を中心に、ドゥルーズ、ラカンなどの現代思想家をも専門とする哲学者だが、本書で引き合いに出されるのは定番のデカルトが中心(少しだけニーチェも登場するが)。
     
     新書で分量も少なく、文章もかなり平易であり、非哲学専攻の門外漢向けスピノザの入門書としてはかなりおすすめ。ただ、やはり「エチカ」の前よりは後に読んだほうがいいと思う。あの本は語彙や文章の言い回しが独特でもちろん難解だが、使われる語彙や言い回しには一定の法則があり、一度その法則が掴めてしまえば通読すること自体はさほど困難ではない。ただ、極めて抽象的な概念が相当に込み入った形で連続して提示されているため、やはり読んだ後は相当に混乱する。その混乱を整理するため、本書のような図式を使った簡単な概説書を読むのが正解だと思う。初めから本書のような優れた解説書を読んでしまうと、どうしても先入観に引き摺られながら読むことになり、あの「エチカ」をその都度の定理ごとに読む楽しさが損なわれてしまう。
     
     例えば、「エチカ」第二部定理47を、僕は単に「凡ゆる事物は神の変状であるので、人間精神の妥当な認識は神の本質を基礎に生ずる」とストレートに読んだだけだったが、著者によれば、ここにはデカルトのように神を詐誷者と措定せずとも事物の必然性は観念可能なのだという、方法的懐疑への批判が暗に込められているのだという。また僕は、スピノザが同二部定理49備考その他の箇所でいう「観念は無言の絵画ではない」の意味が掴みかねていたのだが、本書を読んで、これを「真偽の照合は事実との一致(外的指標)ではなく、事物の生起する規範即ち「必然性(内的指標)」をもって行うべき」というように理解すると、この箇所だけではなく「エチカ」全体が明晰なる光の下に照らされることを知った。このような考え方は「エチカ」内では直接触れられておらず、スピノザの他の著作「知性改善論」や同時代哲学者との比較を要するものなので、やはり専門家の力を借りるほうが手っ取り早い。
     
     人間の精神が非妥当な観念を含む理由として、精神が観念する対象である人間身体が近接原因より生ずる機序、即ち「スーパービーン(supervene, 併発…創発?)」を精神が観念せず、結果のみを認識するからだ、とする点はおそらく著者の独創性のなせるわざだと思うが、なるほどと思わせる。確かに我々の脳は、微視的で複雑な相互作用の詳細を承知せぬまま、巨視的な結果だけを把握しているように思えるからだ。
     
     とにかく、本書を読むと、神即自然…必然性…永遠、というスピノザ「エチカ」の中核をなす重要概念の理解が相当に進む。僕のような初学者には本当に有難い。

  • 事前のスピノザの印象は冷ややかな決定論かと思っていたが、実はとても肯定的な人生への取り組み。
    何をどういう言葉で表現するかという問題はあるのだが、今あるすべてのことが神の在り方を部分的に見ている。
    そうは書いてはいないが、私たち自身が実は神なのであるとも読み取れる。
    絶え間ない欲求は本当に欲しているものではない、すべてを犠牲にしても進もう、達成しようとするものが本当の真実。
    神の否定ではない、人間は神に隷属しているのではないというだけ。その通り。

  • スピノザの哲学は、かつてエチカをチラッと開いて絶望して依頼、中公クラシックの迫力とあわせて敬遠していたが、この本でかなりイメージが変わった

    こんなに透き通った人はいないのではないか
    憧れる

    デカルトが、合理的、機械的といいつつも、とても人間的、実際的であったのに対して、スピノザは超越しちゃってる
    全てが原子だとして、大事なのは心の平穏、アタラクシアとしたエピクロスと、どこかで通じるものを感じてしまっている

  • 新鮮な思考がある。
    目的と衝動。目的をはっきりすれば禁欲するまでもない。愛でも全知全能でもない神。自由意志の否定。幾何学的証明。政治と国家。

  • 2017/3/21読了。アマゾンのおすすめにずっと出てたから購入してしまった。

    基本的に本の解説書みたいなのは読まず、原著を読む方だったのだが、これに関しては読んで正解。『エチカ』がどのような形で進んでいくのか、なぜそのような書き方をしたのかが書かれている。
    『エチカ』を何度も読んでみようと思っては、冒頭だけ読んで挫折し購入しなかった私へのいい導入になった。

  • めちゃくちゃ感動した。
    最後は第三種の認識まで到達して一気に理解。
    理解できるのはもともと知っているからで、スピノザの言うように最初から真なる観念が与えられているからなんだろう。

  • 「エチカ」の復習に。これ単独で読むとむずかしいだろうが、ひととおり読んでからだととてもわかりやすい。「エチカ」原著(翻訳だけど)で今ひとつ理解できないところが、かなり明確になる。
    古典なんて時代背景も文脈も今とは違うのだから、それを補完し案内してくれるこういう入門書があると大変助かる。

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著者プロフィール

1951年生まれ。大阪大学大学院文学研究科教授。
著書
『スピノザの世界―神あるいは自然』(講談社、2005年)
『デカルト、ホッブズ、スピノザ―哲学する十七世紀』(講談社学術文庫、2011年)
『哲学者たちのワンダーランド―様相の十七世紀』(講談社、2013年)
『スピノザ『神学政治論』を読む』(ちくま学芸文庫、2014年)などがある。

「2017年 『主体の論理・概念の倫理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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